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飼育日3日 北山千晴

 酪農協会の役員及び、若き選挙戦を出馬したエリートの三十間近の職員、北山(きたやま)千晴(ちはる)は28歳。

 久々に実家に帰省した千晴。

 帰省といっても最寄り駅周辺を周回してるだけだ。家出当然に推薦大学に行ったのだから、顔出しが恥ずかしかった。


「この町、ホント変わったな。だが、雰囲気は昔のままだ。何もかも懐かしい」

「一人言? 恐いわ、このヒト」


 耳元で恐れた女子は北山(きたやま)法子(ほうこ)だ。

 もう受験勉強中の高校三年である。


「変わったのはこの辺にいる学生だなぁ」

「それ、嫌味? あなた最低ね」

「そういやこの辺りの野菜農場店で、事情があって養女を持った老夫婦は知らないかな?」

「それ、ホーコの家よ。養女はホーコの事よ」

「一人称を名前で言う子ね。北山ホーコが君の名前だね。俺はそこの嫡男で千晴っていうんだ」

「うわぁ。運命の出逢いってガラにもない胡散(うさん)臭いお兄さん?」

「胡散臭いだなんて、初対面で失敬な‼」


 二人は同時に北山家に帰ってきた。


「ホーコちゃんおかえ……チー坊、あんたよくも帰ってこれたなぁ、さっさっ、突っ立ってないでお入り‼」

「母さんも相変わらずだなぁ。老けてしまってさ」

「そりゃ人間、誰でも年は取るもんさ」


 廊下の向こうから声がした。トイレから出た北山家主人だ。


「何騒々しい……チーじゃねか? 随分と紳士になったな」

「出馬が決まったんで挨拶しに戻りました」

「酪農協会から代表選挙戦か? 大したものだ。何はともあれ、よくぞ無事に帰省してくれた。お前は家出したからな」

「あなたァ、昔は詮索しない事よ」

「そうだな。母さんや、すぐにご馳走だぞ」

「そうね、母さん腕ふるってご馳走用意するよ」


 焦る北山夫婦を制止する千晴。


「まだ、選挙に当選されてないって。早とちりだなぁ」


 リビングの食卓に豪勢なご馳走が並んでいる。その七割は出前で取ったものだ。

 食卓を囲む北山家の人々たち。


「あー、あー……北山家嫡男のチハルさんの出馬を記念にここにそのご挨拶の一言をおひとつよろしくお願いします」


 MCで音頭をとった法子の計らいに北山夫婦は笑顔で喝采した。


「よせよ、こっ恥ずかしいな。照れるだろ‼」

「あー、チハルさん何か一言を‼」

「君は煩いぞ、馬の骨だか知らないがな」

「養女だと馬の骨なの? 最低、胡散臭いお兄さん」

「胡散臭い言うな‼」


 食卓は宴会場のように賑わっていった。

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