急いでる時に待つエレベーターの遅さは異常
マンションのエントランスを通り、エレベーターの前にたどり着くと、そこには書店の袋を片手に息を切らせ、今か今かとエレベーターを待っている夕悟の姿があった。
浜守夕悟は、白菜と同じ俺の生まれた時からの幼馴染だ。
淡い茶髪をゆるく七三に分けていて、赤色のスクエア型の眼鏡がなぜか様になっている爽やかイケメンだ。
しかし、双子の妹の浜守とは対照的にチャラチャラしたところがあり、重度の2次元オタクでもあるため、浜守のようにモテるということはない。
が、話してみれば気の良い奴で、クラスにも友人は多い。
「夕悟、早いな。もう帰ってきてたのか」
「っああ、待望の新刊だからな!早く読みたくて走ってきた」
肩を大きく上下させ、息を切らせながらも夕悟の表情は期待で満ち溢れている。
近くの書店は、マンションを中心に高校とは真反対の方向にあるので相当急いで走って来たんだろう。
ラノベは、たまに俺も夕悟に貸してもらって読んでいるので新刊となれば興味も湧いてくる。読み終わったら貸してもらおう。
しかし、今日の俺たちには他にやることがある。
「夕悟、今日は何曜日だ?」
期待に胸を膨らませている夕悟に問いを投げる。
「今日か?今日はあのアニメの録画を見る日だから、あっ••••••」
夕悟も今日が何の日であるかを思い出したらしく、明らかにテンションが下がっている。
というか、曜日をその日見るアニメで判断しているところがもう色々と残念だ。
「勉強会か••••••」
もともとはテスト期間中に泣きついてきた夕悟と白菜のために幼馴染全員で始めた勉強会だったが、成績の上がったふたりの両親たっての希望でその後も定期的に行うことになっている。
「うへぇ、忘れてた〜」
「お前もか」
白菜も今思い出した様で苦い顔をしている。
「そこまで落ち込むことないだろ」
「いやっ、帰ったら早速新刊が読めると思ってたからな••••••1話を見て、これは覇権だっ!と思ってたアニメが翌日ネットでボロ叩きされてるのを見た時の様な心情だ」
「そっ、そうか••••••」
夕悟は時々こういう物事の例え方をしてくるが、俺を含め、あまりアニメを見ない人には今一ピンと来ないらしい。
「とにかく、お前らのための勉強会だぞ。もっとシャンとしろ。ふたりももうすぐ帰って来ると思うし、祈梨も多分帰って来てる。ほらっ、さっさと行くぞ」
一階に到着したエレベーターに乗り込み、俺たちが住んでいる9階のボタンを押す。
「は〜い••••••」
「う〜い••••••」
ふたりも渋々といった表情でエレベーターに乗り込んだ。
キャラ情報
浜守夕悟 誕生日1月1日(正月)
掛けている眼鏡はお気に入りのもので、体育の時間などは別の眼鏡に掛け変えている。