子どもは通学路に遊びを求めがち
日も随分と長くなり、道端に生える葉の緑も濃くなりつつある歩き慣れた通学路を、今は白菜と肩を並べ、特に急ぐでもなくゆっくりとしたペースで歩いていく。
肩を並べてはいるものの、2人の距離は1メートルほど離れている。
というのも、白菜は現在、何ていうのかは知らないが歩道と車道を仕切る高さ、幅共に15センチくらいの出っ張りの上を、平均台よろしく両腕を左右に伸ばしながらバランスをとって歩いていた。
今歩いているのは住宅街の少し狭い道路で、車が通ることはあまりないため危険は無いと思うけど、いかんせん下校している他の生徒や地域の住人達の目があり、隣を歩いている俺が恥ずかしい。
「おいっ、いい加減そこから降りろ」
小声で呼び掛けると、白菜は歩調を緩めずに顔だけをこちらに向けた。
「え〜っ、心配性だなぁ。もう子どもじゃないんだから落ちて怪我したりしないよ?」
「もう子どもじゃないから降りろって言ってるんだ」
顔だけをこちらに向けているくせに少しもふらつかないバランス感覚に不覚にも感心してしまうがそれはそれ、これはこれだ。
「私ならこんな出っ張りダッシュや片足ケンケンで100メートルはいけるね!」
「やめろ恥ずかしい。第一、この出っ張り100メートルも続いてないじゃないか」
白菜ももう高校生なんだからもう少し落ち着きを持ってもらいたいんだけど、人間成長しても変わらないものがあるらしい。
昔とは大違いなところもあるんだけどなぁ••••••胸がとは言わないけど。
「もうっ、叶枝君ったら昔っから全然走り回って遊んだりしないんだから。たまには運動しなよ。そんなのだから、男の子なのに今でも私に力で勝てるか分からないんだよ?」
俺の邪な目線の変化は、正面を向き直した白菜には気付かれていないようだ。
「しょうがないだろ、怪我したくなかったんだから」
「それは小学生の頃の話でしょ?今は違うじゃん」
我ながらなさけない理由だけど、当時は怪我をしないために運動をできるだけ避けていた。今は特に避ける必要もないけど、いきなり運動が好きになるわけでもなく、現在も好んで運動はしていない。
「浜守と霙さんもあまり運動しないだろ」
「霙は特売日にいっつも全力疾走してるじゃん。ひのは••••••女の子は程々でいいの!」
「理不尽な••••••」
そんな益体もない話をだらだらと続けていた最中。
「ねぇねぇ、そういえばさぁ」
「なんだ?」
白菜は、ふと思いついたと言った感じで問い掛けてきた。
「幼馴染でしょ?何で叶枝君はひのと霙のこと浜守〜とか、霙さん〜とかって堅苦しく呼んでるの?」
他のキャラの登場まで少々お待ちください。
ところであの道路の出っ張りは何と言うんでしょうでしょうかね?白菜はあの出っ張りがあるとほぼ確実に平均台みたいに歩き出します。小学生が道路の白線を歩くのと同じノリですね。