真面目なようでふざけたやっぱり真面目な話 前編
いつも通り1〜2時間程度の勉強会を終え、祈梨はコンビニに行って来ると言い、先程出て行った。
白菜、浜守、霙さんの3人も帰ったので、現在俺の部屋にいるのは俺と、ラノベの新刊を自分の部屋まで待ちきれずに読んでいる夕悟のふたりだけだ。
「いつまでここで読んでるんだよ。浜守も夕飯作ってるだろうし、きりの良いところまで進んだら帰ったほうがいいんじゃないか?」
「甘いな叶枝。おもしれぇラノベっていうのはきりの良いとこまで読んでも続きが気になるもんだ」
そう熱弁する夕悟の視線は依然文字列に固定されている。と思えば、イラストと交互に見比べ始めた。どうやら話も山場らしい。
「つべこべ言わずに帰って読めよ••••••あんまり遅いとまた浜守が迎えに来るぞ。手間かけさせてやるなよ」
浜守たちの両親は共働きで帰りが遅いことが多く、夕悟と浜守は小さい頃よく秋谷で夕飯を食べていた。
現在は浜守が台所を仕切っているらしく、夕悟曰く、料理のレパートリーは母親を超えているとのことだ。
ラノベの展開もひと段落したのか夕悟はふと時計を見た。
「もうこんな時間か。あいつの料理まずくはねぇんだけど精進料理かっていうくらい薄味だし量も少ねぇんだよな〜。不味くはねぇんだけど。」
出たかっ••••••いつもの夕悟の妹自慢が。
「健康になれて良いことじゃないか」
「なにもほぼ毎日作ることないだろ?ピアノの練習の日だって作り置きしていくし、弁当だってひのでが作るんだぜ。量も同年代の平均摂取カロリーだよって言って増やしてくれねぇしよ」
一見愚痴に聞こえるが、要するに健康にも気づかって毎日料理してくれるうちの妹凄いだろう!と言いたいのだ。
「普通、ピアノ弾く人は指を怪我するようなことはしたがらないんだぞ。聞けば聞くほど恵まれた兄じゃないか」
心底そう思うほか無い。俺が妹に夕飯を作ってもらったのなんて両親不在の際に高熱を出したときくらいだ。ちなみに、後日1週間ほど使いっ走りにされた。
弁当を作ってもらうなどさらに望むべくもない。
「まぁ、実際そうなんだけどよ」
「だろ?質素な味付けも贅沢な悩みってことだ」
「そうだな」
こんな風に、夕悟は度々愚痴を装った妹自慢をしてくるめんどくさいタイプのシスコンだ。
「祈梨だって家事は完璧だぞ」
かくいう俺も自分の妹はどこに出しても恥ずかしくないと思うくらい自慢であり、それなりのシスコンであると自覚している。
「たしか勉強会にたまに出てくるお茶菓子は祈梨が作ってるんだったな」
「ああ、そのほかにも掃除や洗濯とか家事全般をこなせるし、学校での成績も良い。俺への言動以外は完璧な奴だ」
「良いのかよそれは、兄として••••••」
「良いんだよ、兄の扱いが酷いくらいで他がちゃんとしてるなら。むしろ欠点らしい欠点がそれくらいで兄として鼻が高いよ」
「すげぇポジティブな考えだな••••••」
俺たちがふたりでいると大抵はどちらかが妹自慢を始め、もう一方もそれに乗っかるので収集がつかなくなることが多い。妹は勿論、他人には到底聞かせられない会話である。
「そういえば例のお前の初恋の人、いい加減誰だか分かったのか?」
客観的に聴けば、唐突の感は免れない質問だ。しかし、俺と夕悟はこの問答をかれこれ数ヶ月ほど続けている。
この問答のときの夕悟は、ラノベを読んでいたり妹の自慢をしているときの嬉々とした表情とは打って変わり、茶化すような感じは見られない真剣な面持ちとなる。
「いや、まだ分からない。といっても考えて判ることじゃないから、何か確かめる方法でもあればいいんだけど••••••」
もう何度目か分からない夕悟の質問に、遺憾ながら俺もいつもと同じ返答をすることしかできない。
夕悟が真剣になるのも無理はない。それは、これが妹の浜守にも関係していることだからだ。
今更ですが、投稿頻度は結構不定期になります。




