エピローグ
「――そちら、片付けましょうか?」
使用人が言っているのは、フレイオージュの部屋のテーブルにあるビンのことだ。
ついさっき、主をなくした妖精の家だ。
おっさんはもう帰ってこない。
中に置いた宿り木の上で横になりフレイオージュを見てくることはないし、気の中に融合して首だけだしてフレイオージュを見てくることもないし、フレイオージュの私物をいじりながらフレイオージュを見てくることもない。フレイオージュのペーパーナイフを使って遊ぶこともないし、無理して果物やナッツを食べまくることもない。
おっさんはもう、二度と帰ってこないのだ。
きっとフレイオージュの生涯を通しても、また会うことはないだろう。
片付けても問題はないのだろうが――
「……わかりました」
フレイオージュが静かに首を横に振ると、気持ちを察した使用人はそれ以上はなにも言わなかった。
主はいなくなったし、もう戻ってくることはない。
でも、それでも、おっさんがいた証がなくなることを、フレイオージュは望まなかった。
ビンの中に、サルカの花を入れる。
本来ここにいるべきおっさんの代わりに。
気持ちはもう、切り替えた。
これからフレイオージュも忙しくなる。
討伐隊の一員として日々に追われることになり、きっと、おっさんのことを思い出すことも少なくなるだろう。
いずれ。
いずれ、気持ちが落ち着いたら、笑い話にして誰かに話してみよう。
皆の目には美しく輝く妖精に見えたが、自分には完全におっさんにしか見えない妖精がいたことを――
きっと妹くらいは喜んで聞いてくれるはずだ。
「お、お、おねえさま! 大変よお姉さま! 今日学校で妖精護符を配られて! そしたら私の護符からおっさんみたいな妖精が――」
また、新しい一年が始まる。




