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さあ!勇気を出して告白!

「好きです!」






 ぎゃあぎゃあBGM以外の音が聞こえたと思ったら、来客だった。


 バトラーに付き添われて来た青年、いや少年。

 知り合いじゃないし、何しに来たんだよと思ったら、シュリに向かって花束差し出し告白した。


 いやな、ここは俺の住居。そして当のシュリにとっては職場だよ。で、仕事中のシュリに告白。なにやってんだか、この少年は。


 家主(生きてる間は)としては社会の常識を説くべきなんだろうが、俺は異世界人だし常識人とは限らない。ついでに、暇人だからこの告白劇を肴に食後のお茶だ。


 シュリが困ってこっちを見た。


「あー続けて続けて」


 もっと見ていたいから。

 どうなるか楽しみだ。

『君たちちょっと出掛けてきなさい』とは言わない。ここで見れたら面白いから。俺どうせ今日も暇だろうし。


「お茶のおかわりです」


 頼んでもないのにお茶を追加するカナ。お前まで出てきたか、野次馬が起きてきやがった!

 しかも少年の後ろにはバトラー。

『俺の◯◯に何をする!』とかいう感じじゃなくて、こいつも野次馬だ。



「前から好きでした!シュリさんは僕の理想のひとです、天使です」


 あー、そのまま立ってれば天使かもね。中身酷いけど。君の後ろにセフレ居るけど。


「輝く清らかなシュリさんは僕の女神です」


 本当の事、教えてやりてえ。この子まだ15か16歳かな。シュリは20代。

 まあ、シュリも顔は割りと良い。ちょっとアゴの下がぷよってるけど。あとは胸な。シュリの胸は『男のロマン』だよな。君が夢見るのは分かるよ。

 流石に少年相手だと平常心で向き合うシュリ。年下相手にデレたりキレたりはしないな、良かった良かった。


「カナ、この子にもお茶を」


 よし、もう少し引き留めて楽しもう。


「はい、お待ち下さい。お掛けになって」


 席に案内するカナ。少しニヤけている。あわあわと静かにしながらも動揺しているシュリ。告白を受けるにしても流すにしても皆の目の前でというのは嫌だろう。バトラーまで居座ってるし。


「シュリは良い娘だよ。料理も上手いし、優しいし。胸も大きいしな、あっはっは!」

 さあシュリ、キレろ!


「おほほ、嫌ですわコウ様。普通ですわよ、おほほほ」


「ええー、それで普通なら私が悲しくなりますわー、うふふふふ」

 カナが追撃をかける。

 うん、倍ぐらい違うね。俺はカナ派だけど。


 お?少年居るとキレないなシュリ。よしよし。

 で、一瞬シュリの胸を見た少年が真っ赤になる。もうね、マンガみたいに真っ赤っか。お茶を飲もうとカップを持つ手が震度7。



「さて、もう行かなければ。君、ゆっくり話していきたまえ」


 ふふふ。どうなるかな?

 あえて席を外そう。本当に出掛けはしない。


「お供致します」

 カナまで俺について家を出る。こやつめ。


「さて、私も仕事が残ってます」

 バトラーまで外に。



 家の中にはシュリと少年の二人きり。

 俺達三人は物置の向こうまで離れる。最初は距離を置こう。後ですぐドアの外まで近づくつもり。


 沈黙を破ったのはバトラー。


「あの子はバズ大佐の長男です。バズ大佐は出世頭ですし、家柄もまずまず。バス大佐の奥さんは元舞台女優でファンが多く町や大物に顔が利きます。シュリは気付いて無いでしょうが、超優良物件ですぞ」


「おお、すげえな。バトラー、あんたいいのか?シュリ取られちゃうぞ」


「そもそも付き合うなってば!」

 カナがバトラーを蹴る。何かあるとカナは蹴りを入れるよな。パンチはしないらしい。


「つまりあの少年は良いトコのご子息と」


「そういうことです。この軍関係の居住区を自由に歩けるのもそのせいです。あの夫婦の子ですから将来も有望かもしれません。顔もいい」


「おお!」



「でも、シュリの中身がバレたら大変よ?」


「「「ううーむ」」」


 恋多き女、堕ち易い女、そして普段はポンコツ。

 純情な少年にシュリはいかがなモノだろう。

 全てを知って全てを受け入れてもらうか、隠し通すか、何も言えないほど惚れさせるか。

 あ、そもそも少年はシュリの好みなのか?



「あ、もう出てきた!早すぎない?」


「いや、流石に少年相手にヤらないだろうからこんなもんだろう?」


「聞いてみますかな」



 玄関でシュリに見送られて去る少年。

 中に戻るシュリ。



 通りを歩く少年を俺とバトラーで追う。シュリの方にはカナが向かった!


 少し落ち込んでいる少年。

 追い付いてバトラーが声を掛ける。俺は背景になっていよう。


「どうでした?」


「あ、どうもです。

 フラれました」


「そうですか、何と言われました?」


「シュリさん、自分は君が思ってるほど綺麗な存在じゃないよ、処女じゃないし彼氏も何度も居たんだからって。もっと素敵な娘が居る筈だって」


「そうですか。実際シュリの言うとおりです」


 いやあ、そうだよな。

 シュリのお相手の一人が言うのだから間違いない。


「でも、それでも君がいいというなら諦めなくてよいのでは?まだ一度目です。それに君はシュリの好みの顔だし、希望は有りますよ」


 多分顔の話はデタラメだな。あいつ言葉だけで簡単におちるし。


「それに・・・

 ()()()()()()()()のですが、シュリの身体は物凄いですよ。諦めて良いのですか?」


 おお!

 少年が動揺してる!

 俺はカナ派だが、宇宙に行く前にシュリには顔を埋めてみたいと思う位だ。


「さあ、花まで買ったんです。もう一度だけ行ってみませんか?」


 少年は固まった。

 諦めていたが目の前の紳士に焚き付けられた!

 どうする?どうする?


「さあ!」


 バトラーが少年の背中をばんっ!と、叩く。

 走り出す少年!



「大丈夫?あれ」


「大丈夫です。向こうはカナが上手くやってるでしょう。あの子もこういう()()は大好きです」


 ひでえ!

 やっぱ親子か。

 シュリにはカナがけしかけてるのか。やだやだ。


「それにー」


 まだなんかあるの?


「あの少年はシュリを口説き落とせるでしょうが、当分ヤれませんな。これは私の勘ですが、家では厳しく躾けられている筈です。すぐに肉体関係などしないでしょう。彼氏が出来たのに禁欲生活になるシュリを見るのは今から楽しみですな」


 うわあ、このおっさん性格悪い!


「あんた、酷い人だわ」



 そしてバトラーと俺が家に戻ると、玄関前でカナがぐっと親指を立てて居た、中に2人居るらしい。カナが悪い笑顔をする。



 あーあ。


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