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午後はカナとお出かけ

 王と過ごした後、再び軍の研究室に。

 でも暇だ。博士居ないし、やることないし。

 トレーニングも今更だし。


「帰っていーい?」

「いーよー」


 職員もあっさりしてるわ。

 流石に午後も王様と外を眺めるのは嫌だ。ご免、王様。

 てなことで、まだお昼だけど帰って来た。

 軽くなんか食べたい。シュリに頼もう。



「かえったよー」


 玄関で声を掛けると奥でガタガタと騒がしい。何の音?

 今ならシュリの勤務時間なのに、メイド部屋から部屋着ままのカナが無言で出て来た。不機嫌そう。

 カナ眠そう、お休み中だったか。シュリは?当番のシュリは?


 カナはすたすたと歩き、ゲストルームのドアをがんっ!と蹴った。

 中からがたがたと音がして、あわてて出て来るシュリ。

 機嫌悪そうな、いや、モロ不機嫌なカナがシュリを睨む。


「お、おかえりなさいませ!」


 何故か汗だくのシュリがバツが悪そうに喋る。


「ええと、なんか軽く食べるもの欲しいけどないかな?」


「は、はい、パンで何か作ります!」


「うん、少しでいいよ。それから町に出てみたいんだけどお金ないかな?」


 またカナがさっきと同じドアをがんっ!と蹴る。

 今度はバトラーが出て来た・・・・・

 不機嫌そうに無言で部屋に戻るカナ。勢い良く閉められたドアが可哀想。



「・・・あー、邪魔したね。その、俺のお金って有るのかな?買い物してみたくってさ。あ、ひとりで行くから。2人はゆっくり続きをしていて。シュリ、やっぱり外で食べて来るから」


 にがにが引きつりながら笑うバトラーとシュリ。

 バトラーからお金は受け取った。

 今度早く帰る時はえーっと・・・・いや、俺が遠慮する必要ないでしょ。



「じゃ!」


 俺は家を出る。

 居たたまれないわ。俺の部屋とロビーを使ってないからいいか。

 玄関を出るとカナが追いかけて来た。


「アタシも行く」


「寝てなくていいの?」


「シュリの声が大きくて寝れないのよ」


「あーー」


 察した。


「あの2人はデキてるの?」


「う〜ん、シュリに特定の恋人は居ないんだよね。それで通じるかな」


「あーそうなの・・・・」


「ブルツは?」


「離婚して今はひとり」


「カナは手、出されなかった?」


「ないわよ、アタシの父親だし。あんなんだから母さんに愛想つかされるのよ」


「そうですか・・・」


「娘が夜勤の為に寝てるってのに煩いったらありゃしない。娘の同僚と遊ぶって最低!」


「なんで一緒に働いてるの?」


「あれ、押し掛けバトラーよ。予言の話しをしたら無理矢理来たの。「どんな男か心配だー」ってね。心配してるんなら、娘の寝てる時に同僚と盛らないで欲しいわ」


「その、大変だね・・・」


「先が思いやられるわ。ねえ、何買うの?案内するわよ」


「いや、特に何もないんだけど。午後から暇になってさ」


「じゃ、ウチくる? 母さんのとこ。まだ旦那の可能性が有るんだから母さんに見せとこうと思って」


「ええ、なんか恥ずかしいなあ」


「歩き回ると疲れるからウチでゆっくりしたい。いこ!」



 結局カナに言われるがままにカナの母親の家に向かった。

 途中カナが話しかけて来る。


「今度、強い所見せてよ。勇者らしいとこ見てみたい!」


「いいけど、危ないのはダメだよ。痛いのもイヤだし、相手を痛くするのも嫌だし」


「えー、勇者なのに?」


「勇者でも。平和が一番!」


「つまんな〜い」




 うん、何も無いのが一番だよ。戦いは嫌だから。自分が強すぎると相手を叩きのめすだけの無情な作業になるから。

 辿り着いたカナの実家は周りの家と比べても普通。て、いうかどの家も似たり寄ったりで明日もう一度この家に来ようとしたら迷子になりそうだよ。家だけでなく町も似たような景色だらけだし。

 んで、カナの家には誰もいなかった。


「カナのお母さんは?」


「パートの日じゃないし、たぶんすぐ帰ってくるわよ。はい、おやつ。それとお茶」


「ありがと。ちょっと何か食べたかったんだ」


「お昼だしね。ちょっと寝るわ」


 そう言ってカナはソファーとクッション占領して寝てしまった。男がいるのに警戒してないの?

 う〜ん、なにしよう。字が読めないから本も読めないし、食べるだけ食べて俺も椅子で仮眠することにした。静かだ・・・・



 眠っていたが物音で目が覚める。昼寝だし、簡単に目が覚めた。

 見るとカナの母親らしき人が居た。カナは熟睡。

 カナの母親らしき人はソファーのカナに上着をかけていた。

 カナと同じ黒髪で背はカナよりちょっと低い。

 似てる。


「あ、あの。すいません、お邪魔してます」


「どなた?」


「カナさんの勤め先のコウと言います」


「ええっと、ひょっとして部屋の主?」


「ええ、はい」


「じゃ、勇者のひと?」


「はい」


「じゃあ、カナの旦那様?」


「いやその・・それは分かりません。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれません」


 予言の事を知っているのか。父親が知っているなら母親も知っているのは当然か。

 母親は俺をまじまじと見る。俺はどんな風に見えるんだろう?カナよりは歳上だけどおっさんという程ではないと思う。身体は逞しいが顔は並・・・・かな。この人には言ってないけど向こうの世界では妻も居る。


「でも勇者なのよね?」


「はい。でも、俺は死ぬかもしれません。そしたらまた次の勇者が呼ばれるらしいんです」


「そうなの」


 それを聞いて察したようだった。

 俺が夫とは限らないと。

 俺は死ぬかも知れないと。


「だからあんまり期待しないでください。仲良くなったのに居なくなったら彼女に酷です」


「でも、カナは貴方をここに連れて来たんだから充分懐いてるわよ。少なくとも安心してるわね」


 何も知らずに無防備に寝息をたてるカナ。

 襲われると思わなかったのだろうか?

 襲われてもいいと思ったのだろうか?


「勇者さん、カナの事よろしくね。この娘もいろいろ有って落ち込んでたから」


「あ、はい。でも、カナさんは強いですよ」


「でもね、強いから周りがカナに強く当たっちゃうの。本当は弱いのにね。本当、カナのこと宜しくね」


 何も言えなくなった。

 予言のせいで婚約者と別れたカナ。

 俺が知らない辛い事も有るんだろう。

 カナを支えるのは俺なんだろうか?それだけが気になる。




「ほら、カナ!起きなさい!」


 母親が起こしに掛かる。

 あれから暫く放置されてたが、流石に夕方が近い。

 抵抗して深くかけられてた上着に潜り込むカナ。

 ばしばし背中を叩かれて嫌々起きるカナ。子供だ。


「ねむー」


「起きて!仕事に行くんでしょ。目開けて!」


 二度寝をしようとしたらしいが、俺を見つけて正気に戻った。


「あー、おきるー」


 とは言ったものの、ぜんぜん本調子じゃない。


「コー、おんぶー」


「馬鹿言ってないでしゃんとしなさい!」


「いいですよ、近いですしおんぶしていきます」


「恥ずかしい子ね、もう。すいませんこんなカナで」


「気にしないで」



 それから俺はカナをおんぶしてウチに向かった。

 なんどもカナの母に頭を下げられた。カナ、母親に会ったから幼児退行したかな?

 そのままだと見え過ぎなので、カナの上から大きめのショールをかけてもらった。




 歩く。


「コー」


「なんだ?」


「楽〜」


「そうだな」



「コー」


「なんだ?」


「あったかー」


「そうだな」



「コー」


「なんだ?」


「アタシのおっぱい気持ちいい?」


「いいぞー」


「噓。おっきいシュリの方が良いんでしょ」


「いや、今最高だ」


「最高?」


「最高だ」


「へへへ」





「コー」


「なんだ?」


「ずーっと、このままで居たいねー」








「そうだな」




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