赤目石盗難!
赤目石が強奪された!
朝日が随分昇った頃に入った報告は軍をどん底に落とした!
郊外にある製鉄所の倉庫から赤目石が盗難にあった。
その量30トン!
赤目石は軽金属の原材料となる石だが、魔王討伐のために軍がかなり独占していた。軽金属はいろんな用途があるので、独占されることに恨みを持つ業者も多かった。おかげで軽金属の値段は高騰していた。だが、魔王討伐は何よりも優先。そんな事は誰でも知っている。でも欲に駆られる者は居る。
緊急捜査本部で長官は重い口を開いた。それを聞くのは各捜査部部長と軍の隊長達。
「生き残りの話では犯人の冒険者は我桜花の人間だ。奴等のしゃべりでその可能性が高い、いや、間違いないらしい。だが、何処に逃走したかはわからない。全力で捜査中だが難航している。冒険者のアジトやギルドの有りそうな所を当たっているが、既に手遅れだろう。盗難されたのは原石だ。地面に埋められでもしたらなかなか見つからないかも知れない。数年寝かせる気かもしれん」
夜、製鉄所に押し入った冒険者は作業員40名のうち37人を殺害。隠れて難を逃れた作業員の証言で自国桜花の冒険者だと推測。
逃げようとしても命乞いしても構わず殺される。正に地獄だったと言う。冒険者達は殺し尽くしたあと悠々と赤目石を積み込み、夜が明ける前に去っていった。軍用トラックは盗まれなかったが、普通車型トラックは盗まれた。
冒険者が去っても生き残った者は恐ろしくて暫く出れなかった。
警備も殺された。まさか人類の存亡をかけた仕事をする工場を私利私欲の為に襲うヤツが居るとは。
ロケットが出来なければ自分達も魔王に殺されると言うのに。
冒険者とはそういうものだ。
そしてそれはもうひとつの苦難を産み出した。
製鉄所のノウハウが消え去ったのだ。壊されたり盗まれたものもあるが設備は半分は生きている。赤目石はまだ20トン残っていた。
だが、熟練工がごっそり殺されたのだ。目撃者を残さない為に殺された。確実に息の根を止める。寮に休憩室にトイレに箱の中まで開けられて殺された。
殺し尽くして邪魔者が居なくなった後、大量の鉱石をじっくり積み込み運ぶ。
3人生きていたのは奇跡かもしれない。
製鉄所は必要な量の鋼材を造りきってなどいない。
ロケットの製造は大幅に遅れる。いや、大きさも縮小されるかもしれない。それも打ち上げ失敗すれば次はない。もう一機分調達出来るのは何年先になるか。
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雨だ。
空が泣いている。
墓地公園。
俺は今葬儀に出ている。
クラスメイトのコリンズ君のお父さんが製鉄所で死んだ。
軍の為に、いや、家族の為に一生懸命働いていたコリンズ君のお父さん。あの夜冒険者に斬られた。
クラスメイトであり、同じ町内に住む俺は葬式に立った。クララ先生も居る。
いつも甘えん坊で喋りまくるコリンズ君は枯れていた。
最後に棺を埋めるときにコリンズ君は大声で泣いた。
もう何度も泣いてしばらく声も出なかったのに大声で泣いた!
膝を落として泣きながらコリンズ君を抱き締めるお母さん。
お母さんがコリンズ君を抱き締めている。
いや、コリンズ君に抱きついていなければ自分も崩れてしまうのだ。彼女はもう立てない・・
その日、その墓地には14組の葬式があった。別の葬式の参列者に博士もいた。また別の葬式にカナも居た。
皆、同じ場所で死んだ同僚だ。
雨は止まなかった。
そして。
次の朝、カナが消えた。
1号2号3号も一緒に消えた。




