カナ怒る!
「そいつらぶん殴っていいかしら?」
突然のカナの怒りの発言。
クラークスさんが呆然とする。
「いや、その・・」
クラークスさん歯切れが悪い。カナの指したそいつらには妻も含まれる。
多分クラークスさんはまだ未練と愛情が残ってるのかもしれない。クラークスさんは仕事では適切な行動と判断が出来るのだろう。でも、色恋では・・裏切られたのにまだ奥さんを何処かで想っている。
「クラークスさん、別れるにしてもこんな別れ方じゃあんまりじゃない?文句のひとつも言ってやって!
夫裏切ってのうのうとしてるなんて許さないわ!クラークスさんが何もしないならアタシが代わりにぶん殴るから!」
いや、カナが普通の人間ぶん殴ったら頭ぽーんだってば!
「いや、私はもう・・・それにきっと会うこともありませんし」
奥さんは冒険者と一緒に居るとしたら、見つからないだろう。冒険者は姿を隠すもの。奥さんもそうだろう。
「会えるとしたら?奥さん見つけたらどうする?」
「・・・・」
「頬のひとつもぶっ叩いてやりな!」
カナ怖い。
「クラークスさん、寝室見せて、両方!」
「は、はい・・」
カナの気迫に押されて従うクラークスさん。
だが、クラークスさんに怒りの表情も希望の表情も無い。
半年経った。
感情が枯れた?
いや、諦めたのだろう。時間が経ちすぎている。見つかるわけが無い。ここで寝室見せても半年も経ったから手掛かりなんて無い。
静かに寝室のドアを開けるクラークスさん。
「ここが妻の部屋です」
恐らくは当時のまま。
きっと、クラークスさんは奥さんを心の底から切り捨てられてはいない。
衣類は結構有る。持ち出したといっても半分以上は残っている。姿をくらますなら同じ服は着ない。
化粧用具に大きめの日用品がまだそのまま。
ただ、ベッドのシーツは無い。冒険者の体液のついたシーツなどクラークスさんは見たくない。処分したのだろう。
カナは寝室を歩き、収納をひとつひとつ開け、いろいろ探っている。
もう半年経ってる。
なにか掴めるのだろうか?
「じゃあ、クラークスさんの寝室も」
「こちらです」
それは隣の部屋。
今も使っている部屋。
使うことが無くなったのに日用品が二人分有るのが悲しい。
同じように何かを探るカナ。
そして、寝室のほかの場所も探る。なにか分かるんだろうか?
そしてホールに戻ってきた。
ごん!ごん!
玄関のドアが叩かれる。
カナがドアを開けると、そこに居たのは魔王トリオだった。
「お呼びでしょうか、マスター」
驚くクラークスさん。
玄関にツノ生えたゴツい男二人現れたらびっくりするわ。あ、魔王ちゃんは小柄で陰にいると目立たない。クラークスさん魔王見るのは初めてだろうか。しかも、ずっとここに居たはずのカナに向かって『お呼びでしょうか』と言った! てか、いつの間に呼んだの? どうやって呼んだの?
そして、
「1号2号は私についてきて。3号はクラークスさん連れてウチに行って待ってて」
「「「イエス、マスター」」」
へ?
1号2号?そんな風に呼んでたんだ。もっとマトモな名前つけようよカナ。
3号?
魔王ちゃんのことだろなあ。
と、魔王ちゃんがクラークスさんの手を取る。因みに魔王ちゃんはシュリのメイド服を借りて着ている。スタイル一緒だし。ツノが有るとはいえ、可愛い魔王ちゃん手を握られたクラークスさんは「えっ?えっ?」な感じ。
魔王ちゃん、美人かどうかと言えばまあまあ。でも、見た目が女児。子供っぽさの可愛らしさ。シュリは合法ロリだが、魔王ちゃんはガチロリだな。ゼロ歳児で巨乳というレアキャラだ。
「コー」
「なんだカナ。俺も行くぞ」
「いえ、コーは捜査課のおじさん、クララ先生のときのおじさんに連絡つけて。逮捕者が何人か出るかもよ。なんかの組織潰すかもだから」
「おい!」
「大丈夫よ。じゃ始めるわ!」
カナと1号2号が表に出る。
つられて他の者も表に出る。
庭の真ん中に立つカナ。
「みんな、場所開けてじっとしてて」
なにすんだ?
!!
カナの背中辺りからモヤのような何かが出てきた。
それは上に伸びる。更に伸びて屋根より高くなる!
しかも2本だ!
なんじゃこりゃ!
そしてその2本の長い霧の羽のような物体はすこし開く。
「行くよ!」
「「イエス、マスター!」」
1号2号が少し離れて立ち向かい合って掌を構える。半分カナの方を向いて少し腰を落とす。たたっと、三歩走ってその1号2号の掌に飛び乗るカナ!
直後、カナの身体が1号2号に空中に打ち上げられる!
屋根の何倍の高さに舞う!
そして、空中のカナは翼のような長い霧を拡げる!
はあっ?
なにしてんの?カナ!
てか、1号2号と会話してないのになんで意思の疎通が出来るの?その霧の翼はなに?
そして、翼に見えたものは翼ではないらしく、カナは地面に落ちて来た。
で、ヒール履いたままヒーロー着地!
かっけえ!
そして立ち上がりこう言った。
「南区の奥ね。一気にカタつけるわよ!」
「「イエス、マスター」」
「まじか・・」
ヤバい!
クラークスさんに見せていいもんじゃない!
慌ててクラークスさんを見ると、クラークスさんの両目を魔王ちゃんがお手てで覆っていた・・
これも喋らず指示したの?
うそ~ん!
主人公は誰よ!