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クラークスさんの元奥さんのお話

「冒険者!」



 カナが大声を出す!

 軍人の奥さんが冒険者と一緒に? 信じられない事だ。

 冒険者といえば軍の敵。

 いや、国の敵だ。


「冒険者は妻の幼馴染らしいです。まんまと寝取られました」


「それはどういう・・」


 カナも絶句している。

 寝取られとは穏やかじゃない。

 クラークスさんは半年前の出来事を教えてくれた。

 お隣さんだが全く知らなかった修羅場を。



「もともと私と妻は見合いで結婚したんです。妻は川西地区の出身でね、幼馴染も同じだそうです。

 ある頃から妻が夜を断るようになったんです。疲れてるとか気が乗らないとか。思えばその頃から浮気してたんですね。昼間はいつもの良くできた妻でした。ただ、私とは寝なくなったんです。一度無理にしようとしたら凄く怒られました。初めてあんな顔をされました。それ以来寝室は別となりました。

 既婚の同僚に聞くと、『お前んとこも遂にレス生活かあ』なんて言われて、そうかとも思いました。でも、1人の同僚が言ったんです。『奥さん浮気してるかもよ?』って。

 その時はまさかと思ってました。

 でも、ある時気付いたんです。匂いに」


「匂いですか」


「後になって思えば男の匂いです。二階からです」


「・・・・」


「二階は私の寝室と妻の寝室。妻の寝室に私は入れません。違和感を感じながらも平静を保ちました。妻を怒らせたくありませんから。でも、何日かしてまた違和感を感じたんです。私はその日仕事に行き、上司に適当な理由を言って午後からこっそり家に帰って来ました。まさかと思っていたけれど確かめてみたかったんです」


「それで・・」


「昼から家に戻ると嫌な予感は的中しました。

 家に静かに入ると二階から声や音が聞こえるんです。聞きなれた妻の声。それもアノ最中の声です。それと知らない男の楽しそうな声。間違いない!今アノ最中だと!

 あの時の絶望感は忘れません。だって妻の声は生き生きしてるんだから。私とは絶対寝ないのに、他所の男と楽しそうにしてるんです。それもこの家で!

 私は頭に血がのぼって妻の寝室のドアを開けて押し入りました。居ましたよ二人で裸で抱き合ってましたよ。私しか知らないと思ってた妻の身体を自由にしてる男。いけすかない顔の男」


「その、それで・・」


「失敗でした。短気が失敗の元でした。手ぶらだったんですよ、その時。

 男を殴ろうとしたところで妻が男を庇ったんです!殴れません、躊躇しました。その隙に男に蹴り飛ばされて、何かで殴られてやられっぱなしになりました。妻が男を『セミン』と呼んだのは覚えてます。その後は気を失ってしまいました」


「それで、奥さんは」


「はい。

 意識が戻るともう夜で妻も男も居ませんでした。慌てて立ってあちこち調べると、妻の日用品や服が消えていて、お金も失くなってて、私の寝室の机の上に妻の結婚指環が置かれてました。金目の物があれこれ失くなってるのに指環だけは置いていくんです。

 悲しかった。悔しかった。寂しかった。殺してやりたいと思いました。でも、もうどこに居るかもわからないんです」


「お辛いですね。それから手掛かりとかはあったんですか?」


「妻の実家に行ってみました。妻は居ませんでした。ただ『セミン』は妻の幼馴染の元彼氏だと判りました。元々恋人だったけれどセミンが冒険者になって行方をくらませたので妻は取り残されたと。家族としても冒険者なんかと結婚させるわけにはいかず、私と結婚させたそうです。当時の妻はセミンに置いていかれたと思ってたので諦めて私と結婚したようです。でも、この街の何処かで再会したのでしょう。そして私を捨てたんです。私は妻を大事にしたし、愛していた。結婚した時は嬉しかったし妻を一生幸せにしようと誓いました。なにより妻を愛してました。

 でも妻はセミンの方が好きだったんでしょう。冒険者と一緒なら犯罪者扱いされる。それでもセミンを選んだんです。犯罪者に負けたんですよ私は。セミンを庇った妻の姿を今でも忘れません」



「そうですか・・」


 辛いな。


 まさか夫より犯罪者を選ぶとは。冒険者といえば裏社会活動と犯罪をしながら町や国を旅する者達。アシがつく前に移動を繰り返す犯罪者。以前クララ先生を誘拐したのも冒険者だ。

 そんなものに奥さん寝取られたのか。


「今思えば、あの匂い。妻の部屋に匿われてたのかもしれない。私の寝てる部屋の隣で私を笑いながら二人で盛っていたのかと思うと・・」


 もうクラークスさんはボロボロだ。顔をあげられない。きっと泣いてる。


「届けは出しましたか?」


 一応は聞く。


「ええ、冒険者がうちに入り込んでいたと。妻を寝取られたと。でも、見つかるわけがありません」


「そうですか」


「私、軍を辞めるかも知れません。妻か冒険者と一緒にいるなんて、申し訳なくて皆さんに顔向けが出来ません。コウさん、暫く待ってて下さい。この家空きますから。私にとってこの家は辛い思い出しかありません」



「いや、そんな・・」


 クラークスさんは悪くないのに軍を辞めるかも知れない。この居住区の一軒家借りれるということはクラークスさんは優秀で一生懸命働いたんだろう。そう、このエリアに住むことが出来るのは信用ある職員。


 愛する妻が出ていった。

 憎き冒険者と一緒に。

 そしてクラークスさんはもう折れてしまったのだ。







「クラークスさん!」


 声に向けば修羅の表情のカナ。

 相当怒ってらっしゃる・・




「そいつらぶん殴っていいかしら?」




触れば爆発しそうなカナが居た。






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