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魔王泣く!

「お、おのれ魔王になんという屈辱を!」



 どごおぉん!


 簀巻き(すまき)の魔王がカナに蹴り飛ばされた。

 頭に角生やして一見強そうな魔王がなすすべなくカナの餌食に。因みに見た目の性別は男だ。毛とか肌の違いで人間には全然見えないけど。



「煩い!覗き魔!」


 魔王はなされるがままだ。

 カナこええ!

 さっきの蹴り、爪先から鶴亀波が出てたよ・・人間だったら死んでたな。


「おのれ人間め・・」


 まだ心折れてない魔王。

 その魔王の顔を踏みつけるカナ。


「覗きが偉そうに!」


「我は覗きではない!」


「はあ?見たよね?ばっちり見たよね?窓から見たよね?」


「・・・・」


「あー、そう」


 どごおん!

 どごおん!

 どごおん!


 魔王の頭にカナの鶴亀波が! しかもゼロ距離で三発!


 うわぁ・・




 あ、泣いてる。

 魔王泣いてる。


「・・ごめんなさい」



「聞こえない!」



「ごめんなさあい!謝ります、ごめんなさあい!許してえ!もう痛くしないで!なんでも言うこと聞きます!殺さないで!お願いー!」



「正直に言いな!なんで覗いた」


 どこのヤンキーですかカナ、いやカナさん。


「その、勇者の様子探りに来たらその・・」


「その?」


「隣の美女に見惚れてました」


「本当か?」


「は、はい」







「それで・・どう見えた?」


「それはもう!美しくて美しくて芸術品か宝石のようでした!世界で一番です!最高です!」


 そこは同意。



「次は覗くなよ」


「し、失礼いたしました!」



 カナこええ・・

 なんか魔王に同情するわ。

 でも、カナの裸を見たらしいからな、それは許さん!

 あ、俺の裸も見られたか。




「朝っぱらから騒がしい」


 気がつけばチビ神様が。


「チビ、こいつ私を覗いてたの」


「これは魔王か。しかもノーマル状態か」


「どうしよう?仕事行かないといけないし。コー、これ見張ってられる?」


 まさかの捕縛した魔王放置して仕事に行こうとするカナさん。いや、俺も学校行きたいし。かといってこのままと言うわけには・・・・

 夢でつるぺた女神から『魔王注意!』と言われたと伝えるつもりが既に一匹駆除成功。しかも俺なにもしてないし。

 緊迫感ねー。


「カナよ。魔王のコアを取り出せ」


「え?コア? 赤い玉があるの?」


「いや、赤くはない。胸に手を突っ込め」


「え?」


 と、言いながらも魔王の身ぐるみ剥がすカナ。

 脱がされた魔王はしくしく泣いている。

 すると、魔王の胸のセンターに溝がある。迷いなく溝に手を突っ込むカナ。

 どうして躊躇しないの?

 これかな?とか手を入れて大丈夫かな?とか迷うもんじゃない?


 魔王の胸に手を入れたカナは何かを引き出した。

 すると魔王がびたりと停止した。置物みたい。


 それは小さなカードだった。


「なに?これがコア?」


「そうだ。フチのどこかにボタンがある筈だ。それを押せ。長押しだ」


「あった。これね」


 またしても悩まずに小さなボタンを押すカナ。ほんとカナって悩まないよね。



 すると、魔王のコアカードは何かの文字を表示した。


 読めん・・


 カナとチビ神様はじっと眺めてふんふん言ってる。


「この魔王を寄越した者は何も知らないようだ。買ってそのまま放り込んだな。お陰でまだ初期設定できる。カナよ、言うとおりに操作しろ」


「わかったわ」


「最初の画面、ユーザー設定だ。そこは000000で。神の名前しか書けない。カナの名前は入れられない」


「私の名前いれられたなら私の物になったの?」


「そうだ。だがこの世界に居る者の名前は書けない。空欄の代わりに000000と入れる。

 次の画面だ。そう、そこ。これは空欄。次の画面も空欄で」


「はい、はい。

 次は?」


「その画面はこの魔王の活動目的を記入する欄。今までは空欄になってたから、基本設定通りに人間界の滅亡とか勇者と戦闘するだった。ここに何か書き込めば魔王の目的を設定できる。何と書く?カナよ」


「どうしようかしら」


「さっきこの魔王は何でもすると言っていたのを守らせるのはどうだ?」


「つまり?」


「カナの家来になるというのは?」


「出来るの?」


「ユーザー登録出来ないが、これで同じようなことになる」


「じゃ、書く!」


 またもや悩まず打ち出すカナ。しかも、ようわからん打ち込みを既にマスターしてるし。


「書いたわ」


「では、次の画面だ」


「なにこれ」


「魔王の成長設定だ。この性能のまま固定するか、成長変更を可能にするか。可能なら丸に」


「はい、可能」


 またしても悩まない。

 いいのかなあ。


「最後に終了を押して、胸に戻せ。戻したら二度と変更は出来ない」


「おわり!」


 カナがカードを魔王の胸に挿すと、胸の溝は消え去り、カードは取れなくなった。そして魔王がまた動き出す。


 そして、


「マスター、ご命令を」



 ええええ!

 魔王がカナに!

 うそおおおおおお!



「仕事から帰るまで家でおとなしくしててね」


「イエス、マスター」




 その日一応俺は学校休んで様子見てたけど、ホントに魔王は大人しくしていた。

 因みに食事は要らないようだ。そして、食べないと言うことはトイレにも行かない。すげえな、勇者は食べるしトイレ行くけど。

 成る程、食べ物の無い宇宙に居れる訳だ。


「それは仕様とオプション次第だ」


 と、チビ神様は言っていたけど、よーわからん。






 そして、






「コー、また魔王ひろっちゃった」



 下僕となった魔王をもう一人連れ帰って来たカナさん。魔王の頭には角隠しで変な帽子を被せられている。




 まじ?


カナを怒らせてはいけません。

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