ビーチフラッグス初代女王!
「ヒメちゃーん!」
ぱたぱたぱた!
「お!クロちゃんきたー!」
にーにーにーにー
にーにーにーにー
我が家のホールで子猫と遊ぶ『初代ビーチフラッグス女王』
「頑張れーヒメちゃん!クロちゃんにとられちゃうよー」
小さいボールにヒモをつけて子猫トローリング。
ボールを追う子猫達。毎日成長する子猫。
代わりに幼児退行する大人達。初代女王楽しそう。
「あー楽しかった。私も子猫ほしー!じゃっ!」
そう言ってクララ先生は帰っていった。
「帰ったね」
「帰ったな」
「家庭訪問じゃなかったっけ?」
「訪問したしな」
「夕飯の支度しよ。コウさん、クロとヒメみててね」
そう言ってシュリは厨房に。
今日は先生が家庭訪問する日だったんだが、クララ先生は猫と遊んでるだけだった。カナはまだ仕事で帰って来てないし、お義母様には知らせていない。
正直、ホッとしたわ。
成績悪いから。
クララ先生は来るなりホールにいた子猫に夢中になり、俺は放置されっぱなし。まあ、俺以外はシュリとバトラーしか居ないし、家庭訪問の意味は無いかも。
クララ先生といえば、この間あった【夏の女のビーチフラッグス大会】の初代優勝者となった。
いや、勝つでしょ。
クララ先生鍛えてるもん。勇者の加護を受けてる者は出場しなかった。大会ぶち壊しになるし、勇者の加護を見せたく無かったし。
当日の決勝戦は盛り上がった。2勝先取ルールで3回目で漸く決着した。かなり僅差で!
ゴール後の旗を天高く掲げるクララ先生は格好よかったわ!
クララ先生は時の人になった!
一週間程度だけど。
正直、クララ先生にシュリのような魅惑の力がないので熱狂的ファンは居ない。いや、ちっとはいるの? 美人ではあるし。
まあ、あんまりビーチフラッグスばかりやると飽きるので、次回は来年と言うことになった。リン社長は来年はビーチバレーとビーチフラッグスの二本立てで行くみたいなことを言ってた。ところで『バレー』って、なに?
「ただいまー」
カナが帰って来た。
「おかえり」
「コー、この子が玄関前にいたんだけど?」
カナが男の子を家に引き入れる。あ、コリンズ君だ。
コリンズ君は俺の同級生で、俺と同じく軍人の居住区に住んでいる。お父さんの仕事の都合だ。
「コリンズ君、どうしたの?」
「勇者、あのね。先生がまだ来ないから見に来たの。先生はまだ?」
!!
クララ先生は今日俺んちとコリンズ君家とピート君家に行くはず!
カナと顔を見合わせる。
不味い!
クララ先生に何かあったか! 危ない事か? その可能性が高い、ビーチフラッグスで有名になったからか!
「バトラー!」
「どうなさいました?」
「直ぐ警備課に!クララ先生が居なくなったんだ!事件かもしれない!」
走り出すバトラー!
「俺はコリンズ君の家に行きながら、クララ先生探す!」
コリンズ君をおんぶする。この方が速い!
「私も探す!」
カナが出ようとする。
「駄目だ、危険だ!」
「大丈夫よ!」
そう言ってカナは走り去った。なんてこと・・
もう、見えない。
「シュリ、戸締りして待っててくれ」
シュリを一人にするのも心配だが、仕方ない! 子猫と同じ家に居ればチビ神様の加護があるだろう!
俺はコリンズ君を背負ったまま走り出した。
コリンズ君を家に送り届けた。やはりクララ先生は来ていなかった。マズい。ピート君家にも行ったが来ていないと。何処だクララ先生!
町中を走り回る!
時折、警備課の人に遭遇して話すけれど、まだ見つからないと!
また走る!
無事でいてくれ!
カナも無茶しないで!
「やーーーー!」
聞こえた!
勇者の聴力に届いたのはカナの声!絶対聞き間違えない声!
声の方向に走る!
とある民家に大穴が開いている!ただ事じゃない!
中に入ろう!
そう思った瞬間、ガシャンと頭上で何かが破壊される音!
次の瞬間、路上に男が降って来た!
なんだ?
男は気を失ってる。生きてるみたいだ。
慌てて中に!
一階は何もない。
二階に!
そこには、
カナの胸でわんわん泣くクララ先生と、
フルボッコにされ、動かない男が三人転がっていた。
まじか・・・・・・
ーーーーーーーーー
男達はギルドに雇われていた。この国にはギルドと言うものがある。ギルドはいわば闇世界の職安だ。ゴロツキやアシがつかない外国人を雇い、違法な仕事をさせる。雇われるゴロツキは身を隠したり、ほとぼりがさめるまで外国に行ったりする。仕事を受けながら国から国へと渡り歩く者も。
彼等は隠語で『冒険者』と呼ばれた。
クララ先生は闇世界で懸賞金が掛けられていた。ビーチフラッグスで有名人になったからか。金持ちの男に売られる予定だった。
今、捕らえた冒険者の尋問が始まっている。一番知りたいことは、依頼者が誰かということと、ギルドの所在地だ。ギルドの所在地は謎だ。彼等は表には出ない。交渉はエージェントが行うことが多い。
シュリも懸賞金がかかっていそうだが、シュリに手を出すと、軍を敵に回す、しかも勇者まで敵に回す。
依頼者が居ても受ける冒険者が居ないのが実情だろう。だが、用心にこしたことはない。
「どうやってクララ先生の場所を突き止めたんだ?」
「道にクロとヒメの匂いがしたの。不自然だなって。そうしたらあの家の二階にクララ先生の気配がするじゃない。変な男の気配も二階からするし。クララ先生、彼氏居ない筈だし、男の気配がなんかムカつく気配だったからやっちまえ!って」
絶句した。
子猫の匂い?
クララ先生の気配?
男の気配?しかもムカつく?
俺にはそこまでの感覚は無いぞ!
頑張っても猫の匂いまでだ・・・・
声がすれば分かるが、クララ先生は口を塞がれてたし、静かにしろと黙らされてた。
「凄いな。それでその・・・・よく突入する決断が出来たな」
「間違ってたらコーのせいにすればいいやって」
・・・・・・
・・・・・・
「一応、男どもには鶴亀波は見せてないからね」
冒険者は足技で全て倒したと。カナの蹴りは怖いからな・・・・
「ケガは無かったか?」
「大丈夫よ。足にバリアー分厚く着けてたし」
カナさん、何者?
でも、無事でよかった。
俺はカナを抱き締めた。
「もー、コーったら心配性!」
「心配したんだよ」
「大丈夫よ。アタシはコーの子を産むまでは死なないんだから」
アクション映画で好きなのは「チョコレートファイター」です。
あれは凄かった!




