神にとっても可愛いは正義!
「世界の産みの親?アマンダか!」
「僕はアマンダではない。アマンダは言うなれば育ての親だ」
「コー、どういうこと?世界の親ってなんのこと?」
「カナはまだ知らないのか。カナ、カナは僕に一年前に会ってるんだよ。立派になったね、カナ」
「え?チビはまだ一歳ちょっとだけど・・1年前のチビに?え?」
「僕は外の世界の人間だ。君達に解りやすく言うなら神々の世界の人間。今はチビの体を一時的に借りて喋っている。
以前は占い婆の体にたまに入った。残念だが婆さんは年取って風邪で死んでしまった。
今はチビの体だ。いつもじゃない、たまにだ。チビも戸惑ってるだろう。意思と関係なく体が動く事があるんだからな。占い婆さんは神がたまに自分に乗り移ってたと知ってたよ。まあ、神の真実は知らないままだったけど」
「あの時の占い師!」
「そうだよ」
「おっと、子供達が心配だ、一旦帰ろう」
ーーーーーー
「コウさん!カナ!何処行ってたの! すっごい地震だったけど、なんともない?
あれ、チビも一緒?」
「やあ、シュリ。子供達を見ていてくれて有り難う」
「へ?」
シュリがチビを指差す。
そして俺に向かって口をパクパクしてる。
猫が喋れば動揺するよな。
そりゃそうだ。
俺達はメイド部屋に集まった。
目の前には寝そべって子供達にお乳を飲ませるチビ。
それを囲む俺とカナとシュリ。
「君達の疑問に答えよう。僕が何者かだろう?
僕は神であり人であり魔族であり勇者であり魔王でもある。男にも女にもなった。過去色んな存在になった。今は暇潰ししながら生きてるだけだ。
名前ははっきりと決まってない。千年以上生きてきて何度も名前が変わってるからな。面倒だからチビでいいよ。慣れたし。
まず、神々とは何か? 神の世界とは? それはこことあまり変わりが無いと思って欲しい。ただ、文明は遥かに上だ。どのくらい上かと言えば世界の創造を趣味でやるくらいだ。君達が花を育てるように世界を育てる。
そして、花の苗を作って売るのが僕の仕事で、苗を買って咲かせるのがお客様。そのうちのひとりが女神アマンダだと思ってくれ。アマンダ達はゼロからは作れない。
元は僕が作った世界だ。
僕は秘密の穴を作っておいた。お客には言って無いがいつでも入り込める。
今だってこうしてここに居る。しかも、アマンダには、見えないように細工をしている。
それに、今はアマンダの物だ。僕はこの世界に関与しないことにしてる。世界が滅ぼうが、人が死のうが、勇者が死のうが関係ない。作って売り渡した世界は何百もある。いちいち気にしない。滅んで捨てられた世界もある。狂った世界もある」
「本当なの?コー」
「カナ、本当の事だ。俺は女神アマンダと話をする事がたまにあるが、今の話を聞いて納得したよ。なにより俺が証拠だ。俺はアマンダが所有する別の世界から連れてこられたんだ」
いつの間にか子猫はお乳を吸うのをやめ、眠っていた。チビは半分体を起こしている。
「なんとなくわかったわ。それがなんで今日は私達の世界に関わったの? 今の話なら貴方は町の人が死のうが関わらない筈! 私とコーを呼んだのは何故?」
「それはね」
チビは子猫の頭を舐めた。
親猫の当たり前の仕草。
「この子達の為だよ」
「この子?チビの子?」
「そうだよ。本来なら隕石はもっと町の近くに落ちて爆風でこの子達とシュリは死んでいたんだ。その柱と梁が崩れて死んでいたはずだった。勇者とカナはケガするけど勇者の加護で助かる。そうなる筈だった歴史を僕が変えた」
「私が死んでた・・」
シュリには衝撃な内容だった。
「シュリにも死んで欲しく無かったからね。君はチビと子供達の恩人だ。
本来、助けてはいけないのに助けた。これは僕のえこひいきだよ。僕は君達に感謝してるし、この子達を愛してる。僕はね、最初は人間の女だったんだ。残念ながら子供には恵まれなかったんだがね。まさか気まぐれで選んだ依り代が子供産むとはね。それだけならまあ良くある事だが・・・・」
「よくあることだが?」
「子猫可愛いわ!駄目だ見殺しに出来ない!」
まさかの子猫可愛がり?
神様が子猫の魅力に負けた!
世界が滅んでも心が動じない神様が子猫に腑抜けにされた!
恐るべし子猫パワー!
「勘違いしないで欲しい。僕が大切なのはこの子達だけだ。母ネコのチビも大事だ。だが、君達は僕にとってはどうでもいいんだ。感謝はしている。でも、今日の事で充分礼は出来たと思う。チビと子供達を助けてくれた礼だ。僕もいつもここに居る訳じゃないしね。記録を読んだが、茶色い猫の時は本当にピンチだったんだね。その時僕は居なかったから助かったよ。礼はしたよ。これからは傍観者になる。ヤバくなったらこの子達だけ世界から連れ出す。本当なら生まれ故郷で生きるのが幸せなんだけどね」
「チビって、神様だったんだ・・」
呆けるシュリ。
「ああ、シュリ。天井裏にチビが忍び込めるようにしておいてくれ。ネズミの気配にうずうずしてるんだ。チビは獲りたくてしょうがないらしい」
「へ?天井裏?」
「頼んだよ」
「う、うん」
「そろそろ僕は離れる。また見に来るよ。ここでのことは内緒だよ。あ、勇者とカナが外に出たのはアマンダには見えないようにしておいたから」
「秘密か。あ、アマンダと話す時はどうしたら良いんだ?頭のなか覗かれるんだが」
「あとで意識読み取りのNG機能設定しておくから大丈夫だよ。じゃあね」
そういって暫くすると、チビは頭をあちこち向けて何かの存在を探していた。
どう見ても今はただの黒猫。
神が体から抜けたのか・・・・
まさか町を救ったのが子猫の可愛さだったとは・・
可愛いは正義!
この神は『あの人』です。
私の他の作品にも出てくる『例の魔法使い』です。




