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お義母様ひきつる

 拝啓、勇者です。






 怖いです。






 背後に視線を感じます。


 大勢からすっごい見られてます。



 ピンチです。




 背後に凄いプレッシャーを感じます。

 大勢から見られてますが、そのうちひとりは強烈な視線、いや、威圧をかけてきてます。

 まさかこんなピンチが待っていようとは一年前には思いもしませんでした。

 博士に助けてほしい。カナに助けてほしい。この際だからバトラーでもいい。


 だが、助けは来ない。



 正面には優しい顔をした敵。

 敵が声を発する!






「はい、この問題解けるひと!」





「はい!」「はい!」

「はい!」「はい!」

「はい!」「はい!」

「はい!」「はい!」

「はい!」「はい!」

「はい!」「はい!」




 あああ・・・・



 授業参観。


 出来の悪い子には悪魔の儀式。背後に並ぶ親御さん達。

 子供達の中にひとり大人。目立つのなんの。しかも噂の勇者だし。



 先生からのプリントを家に持って行ったのは失敗だったろうか?


「忙しいだろうから来なくていいよ」



 カナに隠さず見せたが、仕事忙しいから来れないのは判ってるさ。いや、来ないでください。子供達に混じって大人が座ってる姿は情けないし、勉強得意ではないんだ。しかも、桜花の文字マスターしてないし、問題読み間違えてばかり。



 はい、俺はクラスの底辺です。



 なのにさ、なんでお義母様が来てるの!

 確かに「母」とも言えるけど。


 やべえよ。


 後ろ見えないけどこええよ!


 すっごい圧を感じるんだけど!




「じゃ、マサキ君」


「45!」



「正解です!良くできました」


 優しいクララ先生の声が俺の心を抉る。

 クララ先生、応用問題を黒板に書いて出題するのは俺には難易度高いです。

 出来れば読み上げて下さい。ひょっとしてわざと?

 マズい、手すら挙げられなかったよ。このまま人形のようにやり過ごそうか。カナが見に来ることは無い筈だったから、そのつもりだった。

 しかしまさかのお義母様!

 カナが話しちゃったの?

 それともウチに来たの?

 プリントは寝室に置いてあった筈だけど、寝室見たの? 恥ずかしい!



 お義母様。

 何かを期待してるの?

 何かを見たかったの?




 クララ先生が黒板に次の問題を書く。



『17╋8┳9‡』


 数字は読めた。

『╋』は『ひく』

『┳』は『半分にする』

『‡』は『金額表記で1未満切り上げ』

 俺の記憶が正しければこれで合ってる筈。

 17から8引いて9。

 9を半分にすると4.5。

 あれ?

 9が書いてあるのはどうするの?

『┳』の意味間違えて覚えてる?

 あれ?あれ?あれれ?



 俺は能力者。

 人の気配には敏感だ。

 俺に向かってたお義母様のプレッシャーが離れたのを読んだ。

 げ、お義母様のプレッシャーはクララ先生に!


 クララ先生が一瞬狼狽えた!

 クララ先生が俺を見る。瞳が何かを訴えてる! なにこのプレッシャーのリレー。

 やべえよ。俺をさすの?

 ダメダメダメ、分かんない! ささないで!


 後ろから見えないように、先生だけに見えるように胸の前で指でバッテン。お願い先生ささないで!



「はい、コウ君!」




 なんでえー!

 ダメだって合図したじゃない!

 さっきのように『これわかる人!』とかにしてよ!

 なんで今回は指名?




 ーーーーーーーーー



「帰ったよー」



 玄関からカナの声が聞こえる。



「あら?お母さんなにしてんの?」


 机に向かう俺。

 横に立つお義母様。



 ええ、帰ってからお義母様にずっと勉強させられてます。教室で答えた俺は答えを間違えた。

 周りから笑われたわ。ひとりだけ、お義母様だけ笑ってなかったけど・・・・

 クララ先生、なんで俺をさしたの!


 あのときの答えは『1‡』

 ‡の前9は9回払いの意味だそうだ。そんで『┳』は計算の記号でなく、接続詞的なもの。計算式に接続詞ってわけわからん!


 なんだよそれ!

 俺んとこの算数と全然違う!

 たまに学校サボってだもんなあ。お義母様に恥をかかせてしまった。



「コーって、バカだったの?」


「いやその・・」


「お母さん恥かいちゃった。いい大人がこんな簡単な問題間違えるなんて。カナは勉強できる子だったからこんなこと無かったのに」


「すいません」


「あちゃー、1年生の問題でしょ?」


「さあ、コウさん。夕飯までもう2ページやるわよ」



「・・はい」




 てなことで、夕飯まできっちり2ページやらされた。いや、終わるまで夕飯待たされた。

 待たせた皆、申し訳ない。遅い夕飯をお義母様を含めた四人で食べて、お義母様は帰っていった。


 ひどい日だった。

 俺だってバカな訳じゃないよ! 桜花の記号が読めなかっただけで。このくらいの計算、元の世界なら出来たよ。でも成績そんなに良くなかったけど・・・・

 やっぱ、バカなよかなあ俺。



 ーーーーーー



「ふう」




 ふたりで()()()()のあと、天井を見ながら今日をふりかえる。



「クララ先生も酷いよ。出来ないって合図したのに」


「どうやって?」


 俺は教室でやったように胸の前で指バッテンをした。


「・・・・・・」


「これやったらさされたんだよなあ」


「・・・・・・」



「ちゃんと見えるようにやったのに」


「コー」


「なんだ?」




「それって、大人の隠語で『今晩OK』の合図。指一本斜めにすると『今晩どう?』二本クロスさせると『OK』なんだよ・・・・」


「マジ?」


「まじ」





 ふたりは知らなかった。


 コウが勘違いさせてしまったクララ先生。

 どきどきしながら夜来たのにカナや他の人の気配があり家に入れなくて、ずっと窓の外で聞き耳立ててたクララ先生が居たことを。


 はあはあ言いながら聞き耳立てるクララ先生。そのクララ先生を窓から眺めるシュリがぽつり。


「まあ、あれだけ声出せばねえ・・・・」

カナはできる子!


コウは・・・・



『ルフィ』といえば世間ではワンピースのルフィですが、私にとってはガルフォースのルフィ。

鶴ひろみさんに合掌。

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