放課後は読書の時間(先生つき)
俺は今図書室に居る。
調べ物しに来た。
だが、読めん。
子供向けの本ばかりなのに読めん!
「「「せんせーさよーなら、みなさんさよーなら!」」」
(俺も一緒に言ってるよ)
一年生の放課後は早く来る。だから放課後に学校の図書室で昔話とか歴史の本を読みに来たけど、さっぱり読めん。勉強頑張ってるんだけどなあ。
今日からカナは昼はバイト。あんまり早く帰っても仕方ないし、気になる事を調べる事にしたのだ。
てなことで、今図書室の読書席でクララ先生と一緒だ。翻訳というか読み方指南というか。
俺の真横にぴったりべったり並ぶクララ先生。柔らかい乙女の感触。
「先生、近いです!」
「こうしないと一緒に読めないわ。それともコウ君の膝の間がいいかしら?」
「いえ・・」
先生、授業の後に化粧直してません? 香水もついてますよ!
匂いついたら帰ってからカナにどつかれる!
ひょっとして、俺のモテ期? 死ぬかもしれない時にモテ期来てもなあ。
で、図書室で何をしてるかってーと、この国の歴史。過去の魔王について色々調べてる。
現在の魔王について博士に聞いてもなかなか教えてくれない。『不確定な情報は言わない主義』だそうだ。まあ、魔王の居る場所までたどり着けてないしな。
見たこともない無い魔王の為に呼びつけられた俺って・・
ならば、過去の魔王のことを調べよう。
この世界に魔王は何度も現れている。それを勇者とか英雄が倒している。全勝だ。
大昔の記録は話が盛られてるから真実かどうかは解らないけど、魔王を倒した勇者とか英雄は全員特殊能力者。俺と一緒だ。
しかもかなりの割合で異世界人。俺と同じような召喚が多い。
本(子供向け)によれば、勇者がいつも圧勝してる。魔王と刺し違えたなんていう接戦は無いな。
ただ、魔王の現れる場所は毎回違う。近所から孤島に山岳や広すぎる森、海中も有ったし、地下も。
一番最近だと国の中に隠れてゲリラ戦をしかけて来たらしい。
本には書いてないが、魔王は勇者とタイマンしたら勝てない。だから、戦場、戦略を変えて仕掛けて来てるんだろう。たどり着くまで大変だとか戦い難い場所だとか。最後はゲリラ戦だもんなあ。
よりによって俺の時は宇宙かあ。
確かにこれはいい手だろうな。実際、勇者を三人死なせてる。(倒したとは言ってない)
だが、こちらとしても魔王から遠いから、危機感がないわ。お互い会えないしな。
しかし、魔王はどうやってこっちに攻撃するんだろう?
いつもの暇そうな軍の職員さんに聞いたら、
「上からなんか投げてくるんじゃね?」
と、言ってた。
それは大変だ。
そうなったらこっちは逃げ回るしか出来ないし、いつも上見てなきゃならん。夜だったら分からんわ。
「それ怖いな」
と、言ったが、
「いや、博士の話だとある程度大きさがないと途中で燃え尽きるらしい。石でも燃え尽きるんだそうだ。ほら、流れ星。あれって落ちるとき燃えてる姿がそう見えるんだってさ。
まだ攻撃来ないし、多分魔王もまだ準備中なんだろって言ってたぞ。まあ、こっちも準備で苦労してるんだがな」
うむ、戦えば勝てる。
だがなあ・・
遠いわ。
「ーーーーーーと、いうことで桜花に平和が戻りました」
「先生、その後は?」
「この本はここでおしまいね」
その後のページは何もない。
勇者が魔王を倒して国が平和になってめでたしめでたし。他の話もだいたい一緒。
その後、勇者はどうなった?
桜花でお姫様と幸せに暮らしたのか?
元の世界に帰ったのか?
それとも新たな世界に?
他の本でもそうだったけど、勇者のその後は書いてない。子供向け本だとそういうもんか。
「先生、勇者のその後が書いてあるのはないですか?」
「そうねえ」
そう言ってクララ先生は俺の側に積み上げてた本に身体を伸ばす。言えば取ってあげたのに。
ぐいーっと、斜めに身体を伸ばす先生。何故俺の胴を支えに掴んで胸が俺の正面を擦るフォームで手を伸ばす!
普通に机に手をついてもうひとつの手を本に伸ばせば良いじゃない!
もうね、あからさまな自分の身体アピール!
先生の体型がカナと一緒だから、希望持ってるのかも。あのね、この体型が好きだからカナが好きな訳じゃなくて、カナが好きだからこの体型が好きなのよ。わかる?
先生の胸擦り付け作戦に乗ってはいかんと、身体を後ろに反らしたら、先生はべちゃんと俺の腿の上に落ちた。腿に胸の感触が! あからさまに誘ってやがる。
「おきれなーい」
子供ですか!
ミエミエな嘘はヤメてください。必死すぎます先生。
仕方なく肩を掴んで起こす。
「コウくん優しいのね」
先生めんどくせえ。
誰か先生貰ってやって下さい。でないと俺への攻撃が終わりません!
「で、なんですか?」
本題に戻って!
「この本、海底魔王の話なんだけど、嘘か本当か分からないけど勇者はその後に国王になるの。そして沢山の妃を貰うの。ハーレムよね。流石に子供向け本には書かれないけど。多分その後の勇者って記録に残せない事になってることが多いのかもね」
「ええ・・・・」
「あらアレの話ね?」
不意に女性の声。
見ると他の女性教師が立っている。クララ先生と同世代で2年の担任だったような? 一瞬ひきつるクララ先生。
「あれってなんです?」
「クララ、教えてあげればあ」
ニヤニヤする同僚女教師。
「なんです?どういう話?」
「その勇者は後日談の方が売れてるんです。シリーズは10作以上あるわよね、クララ」
真っ赤に俯くクララ先生。
「確か、メイド編、漁村の娘編、船乗りの妻編、女戦士編、王妃の妹編、宿屋の姉妹編、女盗賊編・・・・今度貸して欲しいわあ」
益々顔が赤くなり縮こまるクララ先生。
あ、エロ小説か!
しかも持ってることバラされた。この同僚先生も鬼畜!
「お話の勇者は皆絶倫でテクニシャンで素晴らしいそうですけど、コウさんもそうなのかしら?」
「あはは、普通ですってば」
しらんがな。
「気になるわあ。今度何処かでお話したいわあ」
「ははは・・」
同僚女教師は去っていった。あの先生もやべえ。要注意だわ。
「あんのクソアマー!」
「は?」
「人の彼氏奪っといてまだ邪魔する気! なんでもかんでも人の物とりやがって!」
「いやその・・」
荒れ狂うクララ先生。
俺、クララ先生の物じゃ無いんだけど。
とりあえず、この二人には挟まれないように気を付けよう。
そして家に帰ると、
「女の匂いがする!」
って、カナにばしばし叩かれた。説明疲れたわ。
カナ「凄いよ」