選んだ答え
「おーい三刃!で、その横の嬢ちゃん、早く起きろよー」
聞き覚えのない声が、三刃の耳に聞こえた。三刃はこの声を聞き、目が覚めた。丁度、横で眠っていた姫乃も、目が覚めたようだ。
「誰なの?三刃君の事を知ってるようだけど……」
「いや、僕も分からん」
三刃は辺りを見回し、姫乃にこう答えた。声の主の姿はなく、花畑があるだけだった。
「というか、どこだここ?」
「あの世とこの世の境目だ」
すると、二人の目の前に三刃に似た男性が現れた。二人はいきなり現れた男にびっくりし、後ろに下がった。
「おいおい、びっくりすんじゃねーよ。やーっと会えたってのに」
「やっと会えたって……」
「あんたねぇ、ちゃんと説明しなさいよ‼」
と、後ろから女性が現れて男性に叱った。
「悪い悪い。三刃に会えるから舞い上がってたよ。じゃ、改めて……」
男性は咳ばらいをし、女性を横に来るように促した。そして、三刃の顔を見てこう言った。
「俺は護天相場。で、嫁の護天美晴……お前の父ちゃんと母ちゃんだ」
相場の説明を聞き、三刃と姫乃の顔は一気に青ざめた。
「父さんと母さん……じゃあ……」
「私達、死んだのね」
「親と再会する喜びよりも、死んだショックの方が大きかったかー……ちょっとむなしいな」
相場はため息を吐き、ショックを受けている二人に近付いた。
「いいか?お前らはまだ生きてる。だが、半分死んでる状態だ。こっからは生きるか死ぬかはお前達が決めれる」
「え?じゃあ戻ります」
姫乃がこう言ったが、美晴が少し待つように合図した。
「よく聞いて、確かに二人は元に戻れるけど……体のダメージが大きいのよ。戻ったとしても、この先辛い人生になるわ」
「お前らが頭のねじがぶっ飛んだ科学者とドンパチやったのは把握してる。その結果、お前達の体はボロッボロになったんだよ」
相場の足元に、映像が映った。そこには、包帯まみれとなった三刃と姫乃の体、そして泣いている翡翠と凛子と凛音、うつむいたままの輝海達がいた。
「この先、どうするかはお前達の判断にゆだねる」
「私達はそのことを伝えに来たの」
相場と美晴から話を聞き、三刃と姫乃は少し考え始めた。
「決めた」
「私達は……」
三刃と姫乃の手術が始まって数時間が経過した。
「体の損傷が激しいから、時間がかかりますね……」
「ああ……」
三刃と姫乃は何とか生きていた。しかし、体の損傷はかなり激しかった。二人の体が見つかった際、見つけた結社の魔法使いは悲鳴を上げていた。幸い、脳や臓器にダメージはなかった。
数分後、二人が見つかったと話を聞いた貢一達トランプカードの団員が、走って手術室の前にやって来た。
「見つかったって聞いたけど……」
「見ての通り、やばい状況だ。手術室に入って、半日は経過してる」
輝海の話を聞いた後、貢一はポケットから魔宝石を取り出した。それを見た湯出は、驚いて貢一にこう聞いた。
「それは三刃君と姫乃ちゃんの魔宝石‼二人が持ってなかったらどこかに行ったかと思ったけど……」
「アンブレラの瓦礫の中にあったんだよ。探してたら、見つけたんだ……ただ、少し割れてるけど」
「見つけただけでもありがたい。傷は治せるから問題ない」
「そうか……」
その後、貢一達もソファに座り、手術が終わるのを待った。それから数時間、誰も一言も喋らなかった。
そして、手術中のランプが消えた。その瞬間、誰もが立ち上がって扉が開くのを待った。扉から出てきたのは、手術を終えた三刃と姫乃が運ばれてきた。
「二人の様子は!?」
輝海が医師にこう聞くと、医師は息を吐いて答えた。
「命は取り留めました。二人は助かりました」
医師の答えを聞き、輝海達は歓喜の声を上げた。その瞬間、医師からうるさいと言われた。
あの世とこの世の境目、二人っきりになった相場と美晴はこう話していた。
「戻ったわね、あの二人」
「まだやる事があるんだろ。モンスター退治とか、子作りとか」
「一言多いわよあんたは‼」
美晴は馬鹿な事を言った相場に対し、ヘッドロックを仕掛けた。
「いてててててて‼もう言いませんから、技を解除して‼」
「今度変な事言ったらお仕置きするからね」
「はいはい」
相場は痛めた頭を回しながら、こう答えた。
数日後、三刃と姫乃は息苦しさを感じ、目を覚ました。それに気付いた翡翠が、三刃の顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃん……目を覚ましたの?」
「ひ……すい……」
「ここ……は……」
翡翠は二人の声を聞き、大きな声で泣き始めた。その後、翡翠の鳴き声を聞いた輝海達が一斉に病室に入って来た。そして、二人が目を覚ましたことに気付いた。
それから落ち着いた後、三刃と姫乃は輝海から自分達が寝ている時のことを話した。
トランプカードの団員が結社に入ることになったこと。
マルコが死体で見つかったこと。
アンブレラの攻撃で消滅した東京が、人工都市として生まれ変わること。
そして、自分達がもう二度と戦える状態ではないこと。
「起きた時に気付いてると思うけど、その体じゃあもう二度と戦えないだろう……」
三刃は自分の右腕と左足を見た。簡易ながらも、義手と義足が付いている。姫乃も左腕に簡易の義手が付いていた。だが、こうなることは二人とも察していた。
「いいんです。もう二度と戦えないだろうなって思ってましたので」
「私と三刃君は、できることをやります」
「なんかいい声での返事だな。腕や足を失ってショック受けたと思ったけど」
「父さんと母さんが教えてくれました」
「父さんと母さんって……相場と美晴さんが!?」
輝海は三刃の言葉を聞き、驚いて後ろに倒れた。
「じゃ……じゃあ一回死んだの?」
「死んだというか、あの世とこの世の境目に来ました」
「うーん……なんかオカルトチックな話だけど……」
「ま、そんなことがあったんですよ」
と、三刃は笑いながらこう言った。輝海は苦笑しながら、軽い挨拶をして部屋から出て行った。
二人っきりになった時、姫乃は三刃にこう聞いてきた。
「今後どうするか決めた?」
「いや全然。こんな状態で何ができるかまだ分からない」
「誰かを鍛えること。それなら、出来るんじゃないかな」
姫乃の言葉を聞き、三刃は感心した。
「そうだな。魔法使いの学校を作って、新しい魔法使いを育てることは出来るな」
「さーて、目標は決まったし、さっさと傷を治すために寝ましょ」
と、姫乃は三刃の腕を抱き、横になった。三刃も姫乃の頬を触りながら、ベッドの上に横になった。
数年後、世界初の魔法使い養成学校が日本に誕生した。そこから新たなる魔法使い達が育ち、成長していった。その学校を作ったのは、元魔法使いと言われる夫婦だという。