表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/85

東京消滅

 アンブレラ内にいるマルコは、狂ったように笑いながらモニターの下にあるボタンを操作していた。


「結社の連中め‼トランプカードの連中め‼奴らに目に物を見せてやるわ‼」


 マルコはアンブレラ下部に付けられた砲台を操作し、モニターを東京が全体的に入るように映した。


「さぁ、ショーの始まりだよ‼」


 そう言うと、マルコはボタンを押した。すると、砲台の先端に紫色の光が集まってきた。それは次第に大きくなっている。


「こいつを使うのは初めてだ。さぁ……どんな光景を見せてくれるんだい?」


 その後、紫色の光は東京に向かって放たれた。


 一方、東京から離れた場所にいる湯出達は、車を動かしながら後ろを確認していた。


「何か発射しました‼」


「あれは魔力で出来たどデカい玉だ‼あの女、やばい事を企んでるんじゃーねーだろうなぁ‼」


 湯出はナビのテレビを見て、状況を確認していた。しばらくし、強烈な破裂音が耳に響いた。


「キャアッ‼」


「何なのこれ!?」


「遠くにいるのに……」


 東京から離れた場所でも聞こえるほどの破裂音。それ程あの球体の破壊力は半端ないということが分かった。湯出はナビのテレビを見て、言葉を失っていた。


「嘘だろ……」


 ナビの映像には、東京全体が紫色に包まれ、崩壊していく様子が映し出されていた。




 三刃の病室。テレビを見ている三刃と貢一は口を開けて、目の前の惨劇を見ていた。


「あの女……とんでもねーものを……」


「これが……人のする事か?」


 二人が呆然とする中、姫乃が部屋に入って来た。


「三刃君、貢一さん……テレビは見てますね」


「ああ。何だよこれ、本当に現実の世界か?」


「夢じゃないわよ」


「クソッ……なんてもんを作ったんだあいつは……どうやって立ち向かえばいいんだ?」


 貢一は舌打ちをし、項垂れていた。三刃も貢一と同様、あの兵器に対応する策は持っていない。東京全土をあっという間に爆滅してしまう兵器なんて、相手にできるわけがない。


「……二人とも、今後については皆が来た時に話し合いましょう」


「だな。それしかないな」


「ああ」


 姫乃の言葉に対し、二人は簡潔にこう返事をした。




 数時間後、東京が消滅したことは日本中でニュースになっていた。日本だけではない。このニュースはもう世界中に広がっていた。


 戦いから帰って来た翡翠達は、いったん休憩をしていた。


「これからどうなるんだろう?」


 結社の休憩室にいた夕は、コーヒーを飲みながらこう言った。後ろに立っている光賀は、返答に困っていた。


「分からん。あんな武器は見たことも戦ったこともない」


「だけど……ほっとくわけにはいかないよね」


「今度はどこが狙われるか分からないしな」


 その時、輝海が部屋に入って来た。輝海の疲れ果てた顔を見て、夕は驚いた。


「輝海さん、そんなに疲れ果てた顔をして……」


「疲れるに決まってるだろ……もう何時間も会議をしてるんだ。やっと解放されたと思ったら、また十分後に再開だ」


 輝海は大きなため息を吐き、コーヒーを紙コップ並々に淹れた。コーヒーを少し飲んだ後、輝海は二人に話しかけた。


「そうだ。三刃君の様子はどうだ?」


「三刃ですか?あいつは今やっと怪我が治ったみたいですが」


「そうか……三刃君の事だ、無茶しかねないなー」


「そうですね……」


 三刃の性格を考え、三人はため息を吐いた。


「三刃君に言っておいてくれ。今回の事は派手に無茶をするなって」


「分かりました」


 そう言って、輝海は戻って行った。輝海が去った後、光賀は背伸びをして部屋から出ようとした。


「じゃあ、俺はこの事を三刃に伝えてくる」


「お願いね」


「ああ……まぁ、あいつが言う事を聞くかどうか分からないけど」


「そうだね」


 そう言って、光賀は部屋から出て行った。




 その頃、三刃は病室内で立ち上がり、魔力を放出していた。


「お兄ちゃん!?何やってるの!?」


 この光景を見た翡翠は、三刃に駆け寄ってこう聞いた。


「何って、勘を取り戻してるだけなんだけど」


「怪我が治ったばかりで無茶しないでよ‼全くもう‼」


「ははは、悪かった」


「笑い事じゃないわ‼」


 三刃は翡翠に無理やりベッドに横にされた後、天井をずっと見ていた。耳には、アンブレラに関してのニュースが聞こえていた。ニュースを聞いていると、光賀が部屋に入って来た。


「おーす三刃」


「ん?どうかしたか光賀?」


「輝海さんから伝言。今回の事についてあまり無茶するなって」


「ああ。分かった」


 三刃の簡単な返事を聞き、光賀は疑いの眼差しを三刃に浴びせた。


「何だよその目は」


「本当に分かったか?」


「……いや。今日の夜に一人でもあいつの所に行こうと思ってる」


「やっぱりな……」


 光賀はため息を吐き、出入り口に近付いた。その時、三刃にこう言った。


「三刃、必ず帰って来いよ」


「……ああ」


 光賀は三刃の返事を聞いた後、部屋から出て行った。部屋の外には、夕と輝海が立っていた。


「聞いてたんですか?」


「ああ」


「ちょっとだけ気になって……」


「輝海さん。やっぱりあいつ、言う事を聞きませんよ」


「分かってたよ。あいつの息子だから、こういう時に無茶をするって思ってた」


 そう言って、輝海は去ろうとした。その時、夕は慌ててこう言った。


「止めなくていいんですか?三刃君、無茶して死ぬかもしれないんですよ‼」


「止めたくても止めれない。三刃君の父、相場の野郎もそうだった。上の言う事を聞かず、いっつも無茶をして、叱られていた。俺達はその尻拭いをいっつもしてた」


 輝海は昔の事を思い出しながら、こう言った。しばらく間を開け、ため息とともにこう言った。


「尻拭いをする覚悟を決めておけ」


 二人にそう言って、輝海は去って行った。




 その日の夜、三刃は戦いやすい恰好に着替え、風丸の魔宝石を手にした。そして、手紙を書いた後、周りを見ながら外を見回した。


 今がチャンスだ。


 周りに人の気配がいないことを察した三刃は、窓から外に降りた。そして、少し離れた所に移動し、アンブレラを視界に入れた。


「待ってろよ……僕がぶっ飛ばしてやる」


 そう言うと、三刃は魔力を開放し、アンブレラに向けて空を飛び始めた。


 アンブレラ内。爆睡していたマルコの耳に、アラームの騒音が響き渡った。


「うるさいねぇ‼一体何時だと思ってるんだい!?」


 文句を言いながら立ち上がると、モニターに映る三刃の姿を確認した。


「一人で来たんだね……生意気なガキが‼」


 三刃を見て、マルコはにやりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ