東京消滅
アンブレラ内にいるマルコは、狂ったように笑いながらモニターの下にあるボタンを操作していた。
「結社の連中め‼トランプカードの連中め‼奴らに目に物を見せてやるわ‼」
マルコはアンブレラ下部に付けられた砲台を操作し、モニターを東京が全体的に入るように映した。
「さぁ、ショーの始まりだよ‼」
そう言うと、マルコはボタンを押した。すると、砲台の先端に紫色の光が集まってきた。それは次第に大きくなっている。
「こいつを使うのは初めてだ。さぁ……どんな光景を見せてくれるんだい?」
その後、紫色の光は東京に向かって放たれた。
一方、東京から離れた場所にいる湯出達は、車を動かしながら後ろを確認していた。
「何か発射しました‼」
「あれは魔力で出来たどデカい玉だ‼あの女、やばい事を企んでるんじゃーねーだろうなぁ‼」
湯出はナビのテレビを見て、状況を確認していた。しばらくし、強烈な破裂音が耳に響いた。
「キャアッ‼」
「何なのこれ!?」
「遠くにいるのに……」
東京から離れた場所でも聞こえるほどの破裂音。それ程あの球体の破壊力は半端ないということが分かった。湯出はナビのテレビを見て、言葉を失っていた。
「嘘だろ……」
ナビの映像には、東京全体が紫色に包まれ、崩壊していく様子が映し出されていた。
三刃の病室。テレビを見ている三刃と貢一は口を開けて、目の前の惨劇を見ていた。
「あの女……とんでもねーものを……」
「これが……人のする事か?」
二人が呆然とする中、姫乃が部屋に入って来た。
「三刃君、貢一さん……テレビは見てますね」
「ああ。何だよこれ、本当に現実の世界か?」
「夢じゃないわよ」
「クソッ……なんてもんを作ったんだあいつは……どうやって立ち向かえばいいんだ?」
貢一は舌打ちをし、項垂れていた。三刃も貢一と同様、あの兵器に対応する策は持っていない。東京全土をあっという間に爆滅してしまう兵器なんて、相手にできるわけがない。
「……二人とも、今後については皆が来た時に話し合いましょう」
「だな。それしかないな」
「ああ」
姫乃の言葉に対し、二人は簡潔にこう返事をした。
数時間後、東京が消滅したことは日本中でニュースになっていた。日本だけではない。このニュースはもう世界中に広がっていた。
戦いから帰って来た翡翠達は、いったん休憩をしていた。
「これからどうなるんだろう?」
結社の休憩室にいた夕は、コーヒーを飲みながらこう言った。後ろに立っている光賀は、返答に困っていた。
「分からん。あんな武器は見たことも戦ったこともない」
「だけど……ほっとくわけにはいかないよね」
「今度はどこが狙われるか分からないしな」
その時、輝海が部屋に入って来た。輝海の疲れ果てた顔を見て、夕は驚いた。
「輝海さん、そんなに疲れ果てた顔をして……」
「疲れるに決まってるだろ……もう何時間も会議をしてるんだ。やっと解放されたと思ったら、また十分後に再開だ」
輝海は大きなため息を吐き、コーヒーを紙コップ並々に淹れた。コーヒーを少し飲んだ後、輝海は二人に話しかけた。
「そうだ。三刃君の様子はどうだ?」
「三刃ですか?あいつは今やっと怪我が治ったみたいですが」
「そうか……三刃君の事だ、無茶しかねないなー」
「そうですね……」
三刃の性格を考え、三人はため息を吐いた。
「三刃君に言っておいてくれ。今回の事は派手に無茶をするなって」
「分かりました」
そう言って、輝海は戻って行った。輝海が去った後、光賀は背伸びをして部屋から出ようとした。
「じゃあ、俺はこの事を三刃に伝えてくる」
「お願いね」
「ああ……まぁ、あいつが言う事を聞くかどうか分からないけど」
「そうだね」
そう言って、光賀は部屋から出て行った。
その頃、三刃は病室内で立ち上がり、魔力を放出していた。
「お兄ちゃん!?何やってるの!?」
この光景を見た翡翠は、三刃に駆け寄ってこう聞いた。
「何って、勘を取り戻してるだけなんだけど」
「怪我が治ったばかりで無茶しないでよ‼全くもう‼」
「ははは、悪かった」
「笑い事じゃないわ‼」
三刃は翡翠に無理やりベッドに横にされた後、天井をずっと見ていた。耳には、アンブレラに関してのニュースが聞こえていた。ニュースを聞いていると、光賀が部屋に入って来た。
「おーす三刃」
「ん?どうかしたか光賀?」
「輝海さんから伝言。今回の事についてあまり無茶するなって」
「ああ。分かった」
三刃の簡単な返事を聞き、光賀は疑いの眼差しを三刃に浴びせた。
「何だよその目は」
「本当に分かったか?」
「……いや。今日の夜に一人でもあいつの所に行こうと思ってる」
「やっぱりな……」
光賀はため息を吐き、出入り口に近付いた。その時、三刃にこう言った。
「三刃、必ず帰って来いよ」
「……ああ」
光賀は三刃の返事を聞いた後、部屋から出て行った。部屋の外には、夕と輝海が立っていた。
「聞いてたんですか?」
「ああ」
「ちょっとだけ気になって……」
「輝海さん。やっぱりあいつ、言う事を聞きませんよ」
「分かってたよ。あいつの息子だから、こういう時に無茶をするって思ってた」
そう言って、輝海は去ろうとした。その時、夕は慌ててこう言った。
「止めなくていいんですか?三刃君、無茶して死ぬかもしれないんですよ‼」
「止めたくても止めれない。三刃君の父、相場の野郎もそうだった。上の言う事を聞かず、いっつも無茶をして、叱られていた。俺達はその尻拭いをいっつもしてた」
輝海は昔の事を思い出しながら、こう言った。しばらく間を開け、ため息とともにこう言った。
「尻拭いをする覚悟を決めておけ」
二人にそう言って、輝海は去って行った。
その日の夜、三刃は戦いやすい恰好に着替え、風丸の魔宝石を手にした。そして、手紙を書いた後、周りを見ながら外を見回した。
今がチャンスだ。
周りに人の気配がいないことを察した三刃は、窓から外に降りた。そして、少し離れた所に移動し、アンブレラを視界に入れた。
「待ってろよ……僕がぶっ飛ばしてやる」
そう言うと、三刃は魔力を開放し、アンブレラに向けて空を飛び始めた。
アンブレラ内。爆睡していたマルコの耳に、アラームの騒音が響き渡った。
「うるさいねぇ‼一体何時だと思ってるんだい!?」
文句を言いながら立ち上がると、モニターに映る三刃の姿を確認した。
「一人で来たんだね……生意気なガキが‼」
三刃を見て、マルコはにやりと笑った。