狙われた東京
数時間後、三刃達は生き残ったトランプカードの人達ともに結社に帰ってきた。
「ここが結社か……」
「地味な所だが、隠すにはうってつけの場所だな」
キングとジャックが結社を見てこう言った。
「ほら行くぞ、中はもっとスゲーから」
輝海は二人にこう言い、翡翠達が待つ部屋へ向かった。
「ただいまー」
「今戻ったわ」
三刃と姫乃がこう言った直後、凛子と凛音が三刃を踏み台にし、姫乃に抱き着いた。
「お帰りなさいお姉ちゃん‼」
「怪我はなくてよかった」
「僕は怪我まみれだけどな」
ジョーカーとの戦いで、深い傷を負った三刃は二人にこう言った。
「ぴんぴんしてるじゃない」
「それにちゃんと喋れてる。治療したんじゃないの?」
「軽く治療しただけだよ。まだ全身が痛い」
立ち上がろうとしたのだが、全身が痛み出したせいで、うまく体が動けなかった。
「うう……」
「手を貸そう」
と、キングが三刃の肩を担ぎ、三刃を立ち上がらせた。
「ありがとうございます」
「この人誰?」
「キング……キングじゃないですか‼」
後ろから、お茶を持って来た貢一が驚いてこう言った。
「貢一か。お前も無事でよかった」
「ええ……でも……話は聞きましたよ……」
この言葉を聞き、キングはジョーカーが死んだことが伝えられたのだと察した。
「話は聞いてます」
「一番悪い奴が現れたね」
「まぁ、そんなところだ」
三刃は周りを見回すと、凛子にこう聞いた。
「翡翠はどうした?」
「奥の部屋。ユアセルと一緒」
「ユアセル?誰だ?」
「あの子よ三刃君、私達が宿泊訓練で留守にしている間、こっちに来ていたイギリスの子」
「あー。翡翠が仲良くなったって言ってたな」
あの時の事をよーく知っている凛子と凛音は、あっと言いたそうな顔をして、互いの顔を見合わせた。
「あの事……知らないんだね」
「知らない方がいいよ」
「だね」
「何だ、ユアセルが来ているのか」
この時、海人達が部屋に戻ってきた。
「お疲れさま。あれ、服部さんは?」
「他のトランプカードの人達に部屋の案内をしている。後で来るだろう。それより、ユアセルが来ているとは驚きだな」
「へー、あの子の事皆知ってるんだ」
事情を知らない夕が、海人にこう聞いた。後ろにいた光賀もこの話に興味を持ち、海人に聞いた。
「どんな奴なんだ?」
「後で話す。それより今は、休みたい」
海人の言葉を聞き、三刃も痛そうな顔をしてこう言った。
「そうだな。僕も今は傷を癒したい」
「ああ。今は休もう。それからの事を考えるのは明日だ」
と言うわけで、三刃達は一旦休むことになった。
自身が作った要塞型兵器に乗っているマルコは、モニターで地図を確認していた。
「うんうん。この力があれば何でもできる。まず最初に……」
マルコはモニターを操作し、とある場所に目を付けた。
「東京を壊滅させちゃいましょうか」
東京をモニターに表示させた後、マルコは陽気な鼻歌を歌いながら、部屋の奥へ向かった。そこには無数のカプセルがあり、その中にマルコが作ったモンスター達が眠っていた。
「頼んだわよ、私の可愛い可愛い子供達」
マルコはモニターにキスをし、部屋から去って行った。
翌日、輝海は上司に戦いの事を話していた。姫乃や服部、海人と光賀は戦いの疲れからか、まだ眠っている。三刃は傷が深く、まだ結社の病室にいた。
「……体が痛く眠れない……」
寝返りを打つたび、体の中から痛みが走る。そのせいで、三刃は眠りにつく事が出来なかった。
「おはようお兄ちゃん……どうしたの?目が真っ赤だよ」
「眠れないんだよ。寝返りすると痛みが走るから」
そう返事を返すと、三刃は大きな欠伸をした。その時、翡翠の後ろにいたユアセルに気付いた。
「えーっと、君がユアセル君か?」
「え?あっ……はい」
ユアセルの言葉を聞き、三刃はこう言った。
「日本語は喋れるんだね。意思疎通ができなかったらやばいって思ってたよ」
「大丈夫です。勉強しましたので」
「僕達がいない間、翡翠達が世話になったね」
「いえ、そんな事……僕は何もできませんでしたよ」
ユアセルは返事を返している中、あの時の事を思い出した。
「何か、嫌なことを思い出したの?」
「そんなことありません。だけど……それがあったから僕は強くなりました」
「……そうか」
三刃がこう言った直後、湯出と貢一が慌てて廊下を走っている姿を見かけた。
「どうかしたの?」
「大変だよ翡翠ちゃん‼」
「丁度良かった、テレビを映してくれ‼」
貢一に急かされ、三刃は部屋のテレビを映した。テレビに映ったのは、東京の真上に円盤のような物が浮いている映像だった。
「何ですかこれ?UFOですか?」
「これはマルコの奴が作った兵器、アンブレラ‼こいつにはどえらい魔力が詰められていて、中にある武器のエネルギーになるんだよ‼」
この話を聞き、ユアセルが静かにこう言った。
「僕がここに来たのも……あいつがいるって聞いたからだ」
「マルコの事か……」
「ここではマルコって言われてるんだ。偽名を使ってたんだな」
ユアセルの言葉を聞き、貢一は驚いた。
「偽名?こいつに本名なんてあるのか」
「ああ。こいつの本名はチェル・エニシェル。イギリスにいた科学者だけど、危険な実験を行った罪でイギリス支社が追っていたんだ。まさか……日本にいたなんて……」
ユアセルの説明の直後、室内にサイレン音が響き渡った。
『緊急指令緊急指令‼今動ける魔法使いは皆、東京へ向かうように‼』
この話を聞いた三刃は、ベッドから起き上がろうとした。それを見た湯出は、三刃が立たないように抑えた。
「何するんですか湯出さん!?」
「今の君が行っても力になれない‼大きなけがをしてるんだろう‼」
「だけど‼」
「今は治す事だけを考えるんだ」
「……はい」
三刃は話を聞き、大人しくベッドの上で横になった。その後、翡翠とユアセルは湯出にこう言った。
「私達が行きます‼」
「僕も行かないと」
「そう来ると思った。話は通してあるから大丈夫」
湯出の言葉を聞いた後、翡翠は三刃にこう言った。
「私がお兄ちゃんの代わりに戦ってくるから」
「ああ。無茶するなよ」
三刃の声を聞いた後、翡翠達は部屋を出て行った。だが、貢一は三刃の部屋に残っていた。
「あんたは行かないのか?」
「俺は魔法使いじゃない。前線で戦うようなタイプじゃねーんでな……だけど、ジョーカーを殺されて、何もしないわけにはいかない」
貢一は背負っていたリュックを床に置き、中から通信機具を取り出した。
「それは?」
「トランプカード特製の通信機具だ。トランプカードの連中が身に着けてる通信機具をこれ一つで受信する。それで映像を見ながら、俺が周りの状況を皆に伝える」
そう説明すると、貢一はヘッドホンを付けて機械を操作し始めた。
「準備は出来てるみたいだな。よし、このまま結社の魔法使いと共に東京へ行くんだ。さぁ、ジョーカーの仇を皆で討つぞ‼」