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切り札を絶つ者

 本気を出したジョーカーは、大地魔法を利用して部屋中のコンクリートを操作し始めた。


「おわっ‼」


 部屋中のコンクリートは、意志を持ったかのように三刃に襲い掛かった。三刃はコンクリートを風で粉砕したり、高く飛んで攻撃をかわしていた。


「まだまだ‼」


 さらにジョーカーはコンクリートの操作を行った。辺りに散らばったコンクリートの破片は、鋭い棘になって三刃に襲い掛かった。


「くっ、そこまでできるのか‼」


 襲ってくる刃を斬り壊しながら、三刃はジョーカーへ向かって走って行った。だが。


「甘いよ」


「えっ」


 この時、ジョーカーがコンクリートで作った鋭利な刃物を手にして三刃に斬りかかった。三刃はジョーカーの攻撃を受け、後ろに下がった。


「グッ……」


 この攻撃で、三刃は右腕を負傷してしまった。右腕からは血が流れているが、それでも三刃は風丸を落とさなかった。


「まだ僕と戦うのか……」


「あんたを倒すのが僕の仕事なんでね……」


 三刃は傷ついた右腕を振り上げ、風丸に魔力を込め始めた。風丸の刃に発生する風の刃を見て、ジョーカーは驚きながらこう言った。


「これ以上強い魔力を込めると、右腕に強い負担がかかるぞ‼」


「そうでもしないと、あんたを倒せない‼」


 三刃はそう言うと、風丸をジョーカーに向けて振り下ろした。強烈な風が音を立てながら、ジョーカーを襲った。三刃の耳には、周囲の壁や天井が削れる音が聞こえていた。この攻撃なら、どんな防御策を練っても無駄だろうと思っていた。


 しばらくし、三刃が放った風は勢いを無くし、消えていた。


「ふぅ……やりすぎたか?」


 少し強くやりすぎたか。そう思いながら、三刃はその場に座り込んだ。その時、三刃の下からコンクリートが動き出し、手足を封じられてしまった。


「なっ!?」


「悪いけど……この攻撃を見切らせてもらったよ」


 目の前の盛り上がってるコンクリートから、ジョーカーの声が聞こえた。三刃は察した。ジョーカーは自分の周りにコンクリートを張り、先ほどの攻撃を防御したと。


「嘘だろ……こんなこともできるのか……」


「土とか植物とかあれば、何でもできるんだ」


 その後、ジョーカーは三刃に近付き、しゃがんで彼の顔を見た。


「これ以上人を傷つけたくない。もう僕達に関わらないでくれ」


「無理だね‼」


 三刃はこう言うと、体中の魔力を放出し、手足を封じているコンクリートを弾き飛ばした。


「まだ戦うのか……」


 ジョーカーは驚いていた。三刃の体は確実に大きなダメージを負っている。骨折、出血はしている。並の人間なら痛みに耐え切れられずに気を失っているレベルだ。だが、それでも三刃は立ち上がって剣を持ち、ジョーカーに迫ってくる。


「何故だ、何で君はボロボロになっても立ち上がってくるんだ!?」


「僕がここで倒れると、守りたいものが守れなくなるから」


 ジョーカーの問いに対し、三刃はこう答えた。その答えを聞き、ジョーカーは三刃を睨みながら返事を返した。


「僕と同じじゃないか。僕にだって守りたいものがある。愛する人、そして仲間だ」


「何だよ、僕と同じかよ」


 その後、二人は魔力を開放しつつ、睨み合いを始めた。


「次で仕留める」


 三刃は風丸の剣先をジョーカーに向け、こう言った。ジョーカーはすぐに両手を地面に当て、大地魔法を発動した。三刃の足元から、無数の棘が伸び始めた。三刃は猛スピードで移動し、棘の攻撃をかわしていった。そして、ジョーカーに接近していった。


「甘いよ」


 ジョーカーは目の前にコンクリートの壁を発生させた。これで三刃は自分に近付けないだろうと思っていた。だが、コンクリートから何かが割れる音が聞こえた。


 まさか。


 ジョーカーは冷や汗をかきながら、最悪な展開を考えた。このコンクリートは頑丈に作ってある。どんな魔法でも簡単に崩すことは出来ないだろうと思っていた。しかし、三刃は強大な風を発生させ、ジョーカーが作ったコンクリートを粉砕した。


「そんな……」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 三刃は雄たけびと共に、風丸をジョーカーに向かって降り下ろした。強烈な一閃が、ジョーカーを襲った。


「がっ……あぁっ……」


 攻撃の衝撃で、ジョーカーは後ろの壁に吹き飛んだ。すぐに動こうとしたのだが、腹の傷がひどく痛み、そのせいで体が言う事を聞かなかった。


「そ……そん……な……」


 荒く呼吸をするジョーカーに近付き、三刃はこう言った。


「あんたを捕まえる」




 三刃は魔法でジョーカーの体を拘束していると、奥の部屋からクイーンが現れた。


「あの人を倒したの?」


「はい。そうだ、あなたも付いてきてもらいます。詳しく話を聞きたいので」


 クイーンにこう話していると、下から音が聞こえた。三刃は窓を覗き、音の主を調べた。


「誰だ!?」


 その直後、銃声と共に三刃の体が吹き飛んだ。クイーンは倒れた三刃に近付き、何があったのかを聞いた。


「どうかしたの?」


「グッ……あの女は一体……」


「あの女?」


 クイーンが窓を見ると、そこには銃を持ったマルコがいた。


「マルコ‼」


「いやー、クイーン。なんかいろいろと大変ですねぇ」


「あなた、何でここへ戻ってきているの!?結社へ忍び込む仕事はどうしたの!?」


「それよりも大事な仕事がありましてねぇ」


 と言うと、マルコは手に持っていた銃を倒れているジョーカーに向けた。


「お前、何をするつもりだ!?」


 三刃は立ち上がろうとしたのだが、ジョーカーとの戦いの傷が響いたのか、三刃は悲鳴を上げた。その姿を見て、マルコは笑い始めた。


「そこで見てるんだね。世界が変わる第一歩を」


「させないわ」


 クイーンがマルコの銃を奪い、後ろへ下がった。この行動を見たマルコは、口笛を吹いてこう言った。


「やりますねぇ。大した力もないあんたがそこまでするとは」


「次何かしたら、この銃で撃つわよ」


「やれるもんならやって見なさい。ま、こんなこともあろうかと……」


 マルコは隠し持っていた銃を取り出し、装備してすぐにジョーカーを打ち抜いた。この光景を見た三刃とクイーンは、目を丸くして驚いていた。


「マ……マルコ……貴様……」


 銃弾を受けたジョーカーはマルコを睨んでいた。マルコはそんなジョーカーを見て、笑いながらこう言った。


「あんたの天下はこれにておしまい!これからは、私の時代だよ‼」


 そう言うと、マルコは隠しエレベーターを使い、この部屋から去って行った。


「クソ‼待て、待ちやがれ‼」


 三刃は立ち上がってマルコの後を追おうとしたのだが、傷のせいでロクに動けず、その場に倒れてしまった。

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