結社への侵入者
貢一達は結社内に入り、周囲を確認しながら移動を始めていた。貢一は先頭に立ち、周りの状況を後ろの仲間に伝える役目をしていた。足音が聞こえるたび、貢一は周りを見て物陰に隠れる場所を探し、そこへ隠れていた。
移動しているうち、貢一はある場所を見つけた。
「見つけたぜ、動力室」
動力室。ここは結社の電力やガス、水道などを制御する部屋である。貢一は見張りの有無を確認し、一部の仲間にこう伝えた。
「見張りはいない。爆弾係は部屋へ入り、速やかに仕事をして来い」
「分かりました」
爆弾係は部屋へ入り、部屋の中央にある動力部分に爆弾を仕掛けた。この爆弾はスイッチで作動する爆弾であり、貢一が手にしているリモコンのスイッチを押すと、それに対応した爆弾が一斉に爆発することになるのだ。
貢一達の目的は、結社の動力を全て破壊し、魔法使い達の動きを封じること。その後、仲間達に連絡をして一斉に結社を叩くことと、囚われた仲間の救出である。
爆弾を仕掛けた爆弾係が、急いで貢一の元へ戻ってきた。
「設置完了です」
「分かった。すぐに次の場所へ行くぞ」
貢一はそう言うと、次の部屋へ向かって移動していた。あらかじめ貢一達は結社内の地図を違法に手に入れていた。その地図のおかげで、彼らは難なく動力室へ向かい、爆弾を設置していった。だが、途中で貢一は何かに気付いた。
(おかしい。何で魔法使いがいないんだ?)
潜入して時間が経過しているが、あまり結社の魔法使いと遭遇しないのだ。貢一は足を止め、仲間にこう言った。
「何か怪しい。逆に俺達が罠に引っかかった可能性がある」
「どうしてですか?」
「楽に進んでるんですよ、深く考えすぎじゃあ……」
「楽だからだよ。考えてみろ、結社の連中も侵入対策でいろいろとやって来ていると思う。ただ、仕掛けも何もないというのが変だけど……」
「心配性だなぁ」
「じゃ、最後の部屋に爆弾を仕掛けますよーっと」
心配する貢一をよそに、仲間は最後の部屋へ入って行った。その時、部屋から悲鳴が聞こえた。
「悲鳴!?」
「クソ‼やべー予感がしやがる‼」
貢一は部屋に入り、腰に装備してある拳銃を構えて辺りを見回した。すると、そこには翡翠達が立っていたのだ。その近くに、囚われた仲間がいた。
「あー‼あんたは忍者の里であったパンツ野郎‼」
「パンツ野郎って……お前が脱がせたんだろうが‼」
凛子の言葉に対し、貢一はこう叫んだ。そして、心の中で呟いた。最悪な奴らに会ってしまったと。
「あなた、トランプカードの一員だったのね」
「あんたのせいで、白也さんが死んだのよ……」
「本当は服部さんか海人君の役目だけど、私達で仇を取ってやる‼」
やる気満々の翡翠達を見て、貢一は渋々両手を上げた。
「貢一さん……」
「捕まるんですか!?」
仲間がこう声を上げたが、貢一は仲間に向かってこう叫んだ。
「それしかねえだろ‼それに……奴らは見た目は子供だけど……中身はとんでもないバケモンだ」
その直後、一部の仲間が拳銃を持ち、翡翠達に向かって発砲した。
「こんなガキ、俺らでもやれますよ‼」
「くたばっちまいな‼」
「バカよせ‼俺らで敵う相手だって言っただろうが‼」
貢一の言葉の前に、彼らは発砲してしまった。放たれた弾丸は、翡翠に向かって飛んで行った。だが、翡翠に命中する前に弾丸は破裂音と共に消え去った。
「なっ‼」
「何をしたんだ?」
「魔法だよ。あの子達……かなり強くなってやがる……」
貢一は翡翠達のレベルアップを察し、冷や汗を流しながらこう言った。
その後、囚われた貢一は翡翠と共に取調室に移動していた。
「代表で俺が話を受ける。答えられる範囲で答えよう」
溜息と共に、貢一は翡翠にこう言った。翡翠は何かを考えながら、貢一にこう言った。
「あなた達の目的は何?」
「侵入目的か?この結社内の動力を全て壊し、混乱させること」
「それと、トランプカードの目的は何?」
この言葉を聞き、貢一は目をつぶってこう答えた。
「弱き者への救済」
「へ?」
「分かりやすく言うと、弱い立場の人達を救うために行動してたんだ。元はジョーカー一人だったけど、あの人と一緒に活動したいって人が集まってトランプカードが出来た。俺も……あの人に救われた一人だ」
「救済って……じゃあ何でテロみたいなことを起こしたの!?それが救済につながるわけ?人を殺して人を救うなんて、そんなの救済になるわけないじゃない‼」
「黙って聞け‼」
翡翠の怒鳴り声に対し、貢一は大声で叫んだ。貢一の迫力に負け、翡翠は大人しくその場に座った。
「あの騒動を起こしたのは一部の馬鹿共だ。コラルとかその辺の狂った殺人鬼は、一人の女が勝手に連れ込んだだけだ」
「一人の女?」
「マルコって奴だ。本来は奴もここに来る予定だったが……何故か戻りやがった」
「そう……とにかく、今の事はちゃんと上の人に伝えるわ。ね、湯出さん」
翡翠は部屋の外で様子を見ている湯出にこう言った。湯出はその言葉に対し、片手をあげて返事の合図を送った。
「なぁ嬢ちゃん。いろいろと話したいことがあるんだろ」
貢一がこう言うと、翡翠は貢一を睨んで答えを言った。
「ええ。たくさんあるわよ。それに……個人的には忍者の里で起きた事件の事も聞きたいわね」
「ああ……あのバカ女の発明品の事か」
「え……」
翡翠の驚いた顔を見て、貢一は態勢を整えながら、言葉を発した。
「血狐を復活させる機械、あれを作ったのはマルコだ。俺はジョーカーから頼まれて、あの機械の暴走を食い止めるためにあの里へ忍び込んだ。被害を抑えるためにな……だが……結局あんなことに……」
貢一の言葉を聞き、翡翠は黙ってしまった。貢一は小さなため息を吐き、外にいる湯出にこう言った。
「チェンジだ。他に話をできる奴を呼んでくれないか?」
同時刻、ジョーカーの元へ急いでいる三刃と姫乃は、大きな階段の前に出た。
「この上が最上階だな」
「ええ。そして……そこにジョーカーがいる‼」
三刃と姫乃は、拳を強く握った。その時、近くの部屋から扉の開く音が聞こえた。
「ここから先へは」
「行かせないわよ‼」
「私達……」
「「「ダイヤの守護神が相手になるわ‼」」」
言葉の直後、魔法少女のアニメのような恰好をした女性達と、その後ろに女の子が階段の前に現れた。
「うわ……ひでー格好……」
「いい年して子供のアニメのコスプレ?」
女性達の格好を見た三刃と姫乃は、痛々しい視線を彼女らに送った。
「うるさいわね‼」
「趣味でやってるのよ、文句ある!?」
「「いえ、ありません」」
呆れた三刃と姫乃は、同時にこう答えた。その後、三刃はため息を吐きながら彼女らにこう言った。
「俺はあんたらのような痛々しい人と戦う気はないです。痛い目にあいたくなければ、どいてください」
「悪の言う事を聞くもんですか‼」
「ここで塵になりなさい‼」
その直後、彼女らの持つステッキから魔力の波動が放たれた。やばいと思った三刃と姫乃は横に回避し、攻撃をかわした。
「チッ……こいつら、格好の割にかなりやるじゃねーか‼」
三刃は舌打ちをし、こう呟いた。