魔法少年風の三刃

キングの力‼

「オラァァァァァァァァァァ‼」

　光賀の剣が、キングに向かって勢いよく振り下ろされた。だが、キングは片手でその剣を受け止めてしまった。

「クッ‼」

　光賀はキングの腕を蹴って後ろに下がり、服部の所へ戻った。

「苦戦しているようだな」

「ああ。このおっさん、意外と強いぜ」

「よそ見をするな！」

　ジャックが服部に襲い掛かったのだが、服部は上へ高く飛び上がり、ジャックへ向かって大量の手裏剣やクナイを投げた。

「なっ‼」

　まずいと思ったジャックだったが、怪我の痛みで体が動く事が出来なかった。キングはジャックの方を見て、すぐに彼の元へ移動した。

「ふん！」

　キングは勢いのある声を出し、ジャックの前に仁王立ちした。服部が投げたすべての手裏剣やクナイは、キングの背中に命中した。

「おわ……」

「盾になったのか」

　この様子を見ていた二人は、驚きのあまり体が固まってしまった。すると、キングが大勢を戻し、背中に刺さった手裏剣とクナイを気合で吹き飛ばした。

「ジャック、お前は治療を受けてこい。やはり、手負いのままだと戦いにくいだろ」

「……ああ。すみませんキング。あなたに戦いを押し付けてしまって……」

「構わん。早く戻れ。戦いに巻き込まれるぞ」

「はっ」

　ジャックは返事をして、その場から去って行った。光賀は剣を構え、キングに向かってこう言った。

「２対１だぞ。大丈夫か？」

「敵の心配か。そんなことをする余裕があるのだな」

　キングはライオンの柄が入った剣を装備し、両手で持った。

「行くぞ。手加減はせん」

　この時、剣を持ったキングを見た二人は相当な威圧感を感じた。この男、かなり強い。同じことを二人は思っていた。

「光賀、やばい奴が相手だが……戦えるか？」

「いや。無理だな」

　光賀の返事を聞き、服部は呆れた表情になった。だが、光賀の言葉は終わっていなかった。

「時間稼ぎだ。後から来る輝海さんと海人が来るのを待つんだ」

「そうか……あまり無理するなよ」

「分かってるけど……こいつ相手は無理しないと勝てないようだぜ」

　光賀がこう言うと、キングが剣を振り上げて迫ってきた。

「せいやぁっ‼」

　勢いよく振り下ろされる剣先と共に、光の刃が放たれた。

「んなっ！？おいマジかよ、あいつ光の魔法持ちかよ‼」

　光賀は剣の刃に光を纏わせ、飛んでくる光の刃を消していった。

「坊主も光の魔法使いか……厄介なのがいるな……」

「それはこっちのセリフだッ‼」

　光賀は両手で剣を突き出し、光を溜め始めた。

「こうなりゃー必殺のあれを使うしかねーな……」

　魔力が溜まりだしたのか、刃全体に光の球体が発生した。

「光賀……何をするつもりだ！？」

　とんでもない魔力を感じた服部は、驚きながら光賀にこう聞いた。

「ま……まぁ見てなって‼これ、制御するのが……難しいんだよ」

　と、途切れ途切れに言葉を出しながら光賀は返事をした。

「必殺、ライトレイバースト‼」

　光賀の叫びの直後、光の球体が破裂し、光線がキングに向かって飛んで行った。

「何と……これほどすごい技があるとは……」

　この光景を見た服部は、目を丸くして驚いていた。しかし、キングはこの攻撃を防いでいた。

「何！？」

「ググググググググッ‼これほどの威力の技を持っているとは……しかし‼私の方が上のようだ！」

　キングは光賀の技、ライトレイバーストを弾き飛ばし、同じ構えを取った。

「おいまさか……お前も……」

「光の魔力を球体にし、剣先に集める。そして、力が頂点に達した時に光の魔力を一斉に解き放つ。簡単な技だなぁっ‼」

　キングは光賀と似たような技を出し、二人に攻撃した。

　二人は魔力を使って盾を出そうとしたのだが、魔力が足りないせいか、出てきた盾は小さかった。

「嘘だろ……やばい、魔力切れ……」

「こんな所で……」

　もうダメだ。二人がそう思った時、後ろから風を切る音が聞こえた。それは輝海が持っている盾であった。

「援軍か！？」

「何とか間に合ったようだな」

　二人の後ろから、息を切らせながら輝海が走ってやって来た。その手には、すでに槍を持っていた。

「輝海さん‼」

「どうやらとんでもない奴と戦ってるようだな。俺も援護するぜ」

　輝海は戻ってきた盾をキャッチし、魔法石に戻した。そして、また後ろからクナイがキングに向かって飛んできた。

「茉奈、光賀、無事だったか」

「海人か。ああ。何とかな」

　海人が天井を走りながらやって来た。輝海と海人が来て、状況は４対１になった。だが、キングは不利な状況下でも態度を変えなかった。

「仲間が増えたようだな。しかし、後から来た二人はすでに戦ったせいか、魔力が切れ始めているぞ」

「ありったけをお前にぶつけるつもりさ」

「できるものならやってみるがいい」

　キングは剣を構え、輝海達にこう言った。

　同時刻、結社に向かって移動する数台の車があった。

「急ぎなよ、あと少しで結社に着くんだから」

　と、偉そうにマルコが運転をしている部下にこう命令をした。部下は返事をした後、アクセルを踏み込んだ。その様子を後部座席に座っている一人の男が、呆れて溜息を吐いていた。

「むっ？何か文句でもあるのかい、貢一‼」

　マルコは溜息を出した貢一に向かって、大きな声で怒鳴った。

「いやー。何でもないっす」

　貢一はマルコの事が気に入らなかった。後からトランプカードに入り、危険な物をガンガン作っている。いつかこの女がトランプカードを支配するような発明品をし、組織を乗っ取るんではないかと心配していた。その事はジョーカーも察知しているようで、マルコに何かさせないために信頼できる人間を傍に置かせているのだ。何かあった時、すぐに連絡ができるように。

　車はしばらく走っていたのだが、途中でマルコがトランシーバーでこう怒鳴った。

「全員、この辺で一回止まりな‼」

　車はマルコの指示に従い、道路から少し離れた所に駐車した。

「どうかしましたか？」

　別の車から降りた運転手が、慌てながらマルコに近付いた。

「ここからはあんた達で行ってきな。現地での命令はあんたらに任せる」

「じゃあ、マルコさんは……」

「忘れ物を思い出した。ここから歩いてアジトへ戻る」

「しかし……」

「私に逆らおうってのかい！？」

　マルコの気迫に負け、トランプカードの団員は後ずさりした。その後、マルコの言うとおりに車に乗り込み、結社へ向かって行った。去っていく車を見つめ、マルコはにやりと笑っていた。

「さーて、計画を始めようか……」

　そう言うと、マルコはポケットの中からバイクの様なミニチュアを出した。そして、手元のボタンを押すと、ミニチュアのバイクは変形を繰り返し、他のバイクと同じような大きさになった。マルコはそのバイクに乗り込み、笑いながら走り去って行った。