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忍びとして

 トランプカードの兵士達は、侵入者が来たと知らせを受け、廊下中を走り回っていた。


「侵入者を探せ!」


「結社の魔法使いだ、殺せ殺せ!」


「報告!クトゥルさんがやられた模様!」


「何!?あの人がやられたのか!?」


「チッ、俺らで対処できるのか!?」


「やるしかないんだ!こうなった以上、玉砕覚悟で戦うしかねーんだよ‼」


 兵士達の慌てる声がする中、一部の兵士が金属音を耳にした。


「何か聞こえなかったか?」


「聞こえねーよ、空耳じゃねーのか?」


「俺も聞こえた」


「ったく、ビビッて身動きできねーのか?俺が先に行く……」


 その兵士が先に行こうとすると、突如何かが飛んでくる音がした。音がした直後、その兵士はピクリとも動こうとはしなかった。


「おい、どうし……」


 別の兵士が肩を叩いて様子を見た。その兵士の首元には、手裏剣が刺さっていた。


「なっ!手裏剣だと!?」


「まずい、この辺りは土語がいるエリアだ!あいつの所に侵入者が入ったんだ。そして、あいつは侵入者と戦っているんだ!」


「ここで突っ立っていると巻き添えを喰らう!逃げろォォォォォォォォォ‼」


 兵士達は戦いの巻き添えにならないよう、その場から逃げ去った。




 海人は懐の手裏剣を3枚取り出し、土語に向けて投げた。


「甘い」


 土語は刃渡り50センチほどの刀を取り出し、手裏剣を叩き落とした。


「こんなもので拙者を倒せるとは思わぬことだな」


「おっさん、そのセリフ……そのまま返すぜ」


「なぬ?」


 海人の言葉の直後、手裏剣から電撃が発した。土語は電撃の音を耳にし、瞬間的にジャンプして電撃をかわした。


「少しは出来るようだが、拙者の方が上だな」


「粋がるんじゃねーよ」


「そのセリフ、そのまま返そう」


 土語は天井の上に立ち、そのまま海人に向かって走って行った。それに対し、海人はクナイを投げて応戦した。


「甘いぞ!そんなもの、拙者には通じぬ!」


 土語は刀を使い、飛んでくるクナイを弾き落とした。そして、土語は海人に接近した。


「お命頂戴」


「……まだ地獄へは行きたくないんでな!」


 海人は土語の腕を掴み、風を発した。


「ぐおおおおおおおおお‼」


 風の刃を喰らい、ズタズタになった土語は後ろに下がった。


「お主……二種類の術を……なかなかやるようだな。拙者も本気を出そう」


 土語は大きく深呼吸をし、両手を地面にくっつけた。


「奥義!火炎津波‼」


 その直後、土語から発した炎が、並のように形を作って海人に襲い掛かって来た。


「こんなもの!」


 海人は風で矢を作り、火炎に向けて放った。だが、風の矢は火炎に飲まれ、消えてしまった。


「威力がなかったか……」


「そんなものでこの波を崩せると思ったか‼飲まれて塵になれ‼」


 火炎の波は、海人に迫ってきた。だが、海人は慌てる身振りを見せず、冷静に考えていた。


 威力がなければ上げればいい。風でも崩せぬなら、雷を使えばいい。そう。あの攻撃を壊すのは簡単なことだ。


「やって見るか……合体忍術!」


 海人は左手に雷、右手に風を発し、それを一つに合わせた。一つになった風と雷は、激しい音を立てながら海人の両手で暴れていた。


「これならいけるかもしれない!」


 海人はもう一度矢を作り、火炎の波に向けて投げた。合わさった風と雷は強力な一本の矢となって放たれ、火炎の波を貫いて崩壊させた。


「何だと!?」


 自分の技が破れたのを目の当たりにし、土語は驚いていた。そのせいで、彼は飛んできた風と雷の矢は、土語を貫いた。




 ――ここは……どこだ……?


 気が付いたどこは、辺りを見回そうとした。だが、首が回らなかった。どうやら雨が降っているらしい。頬に当たる水滴、そして周囲に降り注ぐ水滴の音を聞いてこう判断した。


 ――あの時と……同じだな……。


 土語は思い出した。裏の仕事を彼は行っていたのだが、ある時彼は暗殺を失敗してしまった。それ以来、彼は味方からも暗殺相手のグループからも命を狙われる羽目になってしまった。あの時、彼は逃げていた途中で敵に囲まれてしまった。応戦はしたのだが、敵の数が多く、苦戦していた。その結果、彼は深手を負ってしまった。


――そうだったな、あの時にジョーカー殿に助けられてなかったら……拙者は死んでいた。


 その時に現れたのが、丁度歩いていたジョーカーだった。ジョーカーは死にかけていた土語を助けるために、彼を襲っていた連中を全員始末したのだ。


――そうだ。あの時以来、拙者は誓ったんだ。この身を犠牲にしても、あのお方を助けると。何があっても、あのお方の悲願が達成するまで、朽ち果てぬと‼




「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 攻撃を受けた土語は、魔力を解放させながら雄たけびを上げた。


「おい。あまり騒ぐな。傷が開くぞ」


 と、冷静に海人がこう言ったが、土語にその言葉は通じていなかった。


「……全く、しょうがない奴だな……」


 海人は小刀を構え、襲ってくる土語を見つめた。土語は大声を上げながら、海人に向かって襲ってきた。


「覚悟‼」


 海人は土語の動きを見切り、素早い動きと共に刀を振り払った。そして、土語の背後へ回り、ゆっくりと小刀を鞘に納めた。


「命まではとらない。そこで倒れていろ」


 海人の言葉の直後、土語の脇腹から血が流れた。そして、気を失った土語はその場に倒れた。




 先を急いでいる服部と光賀は、下での戦いが終わったことを察した。


「海人が勝ったようだ」


「よっしゃ!このまま突き進むぞ‼」


「あまり力を入れるな。勝てる戦いも勝てなくなる」


 服部がこう言うと、窓の方を向いた。


「三刃達が来るな」


「……ああ。無茶な移動しやがって。ま、あいつらしいがな」


 その時、三刃と姫乃が窓から姿を現した。


「よっ。何とか無事みたいだな」


「輝海さんと海人君は戦ってるの?」


「ああ。でも勝ったようだし、後から来るだろ」


 光賀は呑気に会話をしていたが、服部は神妙な顔つきでこう言った。


「気を付けろ……強い奴が来る」


「私の気配を察したか」


 二人の目の前に現れたのは、大柄な男性だった。それに、後ろにはジャックがいた。


「キング様、こいつらが結社の魔法使いです。この中に私を倒した奴はいないようですが」


「そうか……だが、こいつらもやるようだな。それに、あの金髪の坊主は光属性の魔法を持っている」


 この言葉を聞き、光賀は魔力を発した。


「三刃、姫乃、茉奈、こいつらの相手は俺がする。お前らは先に行け」


「いや、私も残ろう」


 服部は光賀の横に立ち、こう言った。


「お前一人だけではこいつを倒せない」


「……悪い。茉奈」


「二人とも……死ぬなよ」


「絶対に生きて再開しましょ」


 そう言って、三刃と姫乃は走って行った。ジャックが跡を追おうとしたのだが、服部が邪魔をした。


「さぁ、行くぜおっさん‼」


 光賀は武器を持って、キングに襲い掛かった。

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