槍使いの戦い!
輝海とクトゥルの戦いは廊下で行われていた。
「オラッ‼」
輝海は槍を振り上げて攻撃したのだが、矛先は天井に突き刺さってしまった。
「ヘッ、馬鹿だなお前‼」
クトゥルは身動きが取れなくなった輝海に近付き、突きで攻撃を仕掛けてきた。だが、輝海は突き刺さった槍を使って高く飛び上がり、クトゥルに飛び蹴りを浴びせた。
「グッハ‼」
「チッ、こんな所じゃあうまく戦えねーな……」
天井に突き刺さった槍を抜き、輝海は周囲を見回した。
「さーて、少しこの廊下を広くしますか」
「何をするつもりだ!?」
輝海は槍を回し、魔力を発しながらこう答えた。
「少しこのビルをぶっ潰す‼」
その直後、輝海は周りの壁を雷で破壊した。
「チッ、滅茶苦茶な奴め‼」
壁が崩壊した際に発生した砂煙を払いながら、クトゥルは輝海の姿を探した。壁を破壊し、その時に発生した砂煙で身を隠すなんてクトゥルは読んでいなかったのだ。
「……しゃーねーな……本来なら使いたくないけど……」
クトゥルは息を吐きだしながら、魔力を使って水を発生させた。その水は徐々に小さく分裂し、肉眼では確認しにくいほどの大きさとなった。
「破裂しろ‼」
その直後、その水は急激に水温が上がり、激しく破裂した。無数の水が破裂したことにより、周囲の煙はあっという間に消し飛んでしまった。そんな中、奇襲を狙っていた輝海に水滴がかかり、あまりの熱さに悲鳴を上げてしまった。
「そこか‼」
輝海の声が聞こえた方を見て、クトゥルは槍を突きさした。手ごたえはあった。だが、槍がピクリとも動かない。
手ごたえはあったはず。なのにどうして槍が動かぬ!?
クトゥルはそう思いながら、魔力を発したが、突如上から音が聞こえた。
「隙あり‼」
「なっ!?」
何と、上から輝海が襲ってきたのだ。その手には、槍が握られていた。輝海が放った槍の攻撃は、クトゥルの右肩に命中した。
「貴様……何故動ける?」
「お前が突き刺したのは盾だ」
その時、砂煙が完全に晴れた。クトゥルが目にした光景は、雷で盾が浮いていて、自分の槍がそこに突き刺さっていた光景だった。
「まさか……盾に当たってたとは……」
「さーて、お前を捕まえるから大人しく……」
「そんな事で俺を倒したと思ったか?」
クトゥルは槍を離し、氷の円型刃を作り、輝海に向けて投げた。
「うおっ‼」
氷の円型刃をかわそうとした輝海だったが、完全には避けきれず、両腕に傷を負ってしまった。
「チッ……」
輝海は流れる血を抑えながら後ろに下がろうとしたのだが、クトゥルが氷で作った投げ槍を投げて攻撃を行っていた。
「おいおい、そんなもんも作れるのかよ‼」
輝海は電撃を発し、飛んでくる氷の投げ矢を破壊し始めた。だが、一部の槍は強くできており、電撃だけでは破壊できなかった。
「クッソ!」
輝海は痛みが走るのを我慢し、投げ槍を飛んで回避した。
「攻撃は終わってねーぞ」
と、クトゥルがこう言った。その直後、輝海は頬に何かが当たるのを感じた。触ってみると、手に少量の水が付いていた。
「水……」
この時、輝海は砂煙を飛ばす時に使われたクトゥルの水の事を思い出した。
「まさか……」
直後、輝海の周囲で激しい爆発が発生した。この爆発を見て、クトゥルは輝海が死んだと確信した。
「ふぅ、そこそこ強い相手だったが……俺の敵じゃあなかったな」
「わるーござんしたね。お前の敵じゃあなくてな」
クトゥルの後ろから輝海の声が聞こえた。まさかと思い、クトゥルは後ろを振り返った。
「生きてたのか……あの爆発の中……」
「まーな。ま、魔力を使ってバリアを作れば生き延びることは出来る。服はボロボロになっちまったがな」
輝海はボロボロになった服を見せながら、クトゥルに話した。そして、槍を構え、クトゥルに矛先を向けた。
「次は俺の番だ」
輝海はクトゥルに接近し、槍で突き始めた。クトゥルは突き攻撃を防御したのだが、そのせいで腕に傷がついてしまった。
「クッ‼」
「そらよっ‼」
輝海は突きでの攻撃を止め、槍を下から振り上げた。この攻撃を防御できなかったクトゥルは後ろへ吹っ飛び、転倒してしまった。
「しまっ……」
「これで決める‼」
輝海は槍を前に突きだし、矛先に魔力を込め始めた。その魔力はあまりにも強すぎるせいか、周りに渦が発生していた。
「嘘だろ……お前にまだそんな魔力が……」
「終わりだ」
輝海がこう言った直後、姿は消えた。どうなったと思ったクトゥルは周囲を見回したが、その瞬間に体に変な違和感を感じた。
「な……あ……」
しばらくし、胸のあたりに痺れる感覚が走った。そして、胸の所から電撃が走った。
「まさか……」
「俺の電撃、よーく味わいな」
輝海がこう言った直後、大きな電撃がクトゥルを襲った。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼」
電撃を喰らったクトゥルは、大きな悲鳴を上げた。何度も電撃が体を襲い、痺れる感覚と激しい痛みがクトゥルを襲った。
「クソ……ジョーカー……様……」
クトゥルは小さくそう言うと、その場に倒れた。輝海は倒れたクトゥルに近付き、脈を調べた。
「ふぅ、死んではいないか」
気を失ったクトゥルを隅へ移動させ、輝海は周囲を見回した。
「おい雑魚共、お前達もこうなりたくなかったら大人しく従え」
このセリフの後、輝海の強さを目の当たりにした雑兵が土下座をしながら姿を見せた。
上にいる服部達は、下での戦いの音を聞きながら移動していた。
「すごい音だったなー」
「雷の音だ。輝海さんがやったんだろう」
「今は音がしない。あれで決着がついたんだろう」
「だといいんだけどな」
服部達が会話をしながら移動していると、海人が服部と光賀に止まれと伝えた。
「誰かいる」
「へっ。敵のお出ましか」
光賀は剣を出してこう言ったが、何かを察した海人は服部と光賀にこう言った。
「俺が相手をする。二人は先に行ってくれ」
「え?いいのか海人に任せて」
「……ああ。海人、あいつの相手はお前に任せた」
「すまない、茉奈」
その後、服部は光賀を連れて先へ向かった。海人は手裏剣を投げ、大きな声でこう言った。
「そこにいるんだろ!?大人しく出て来い、俺が相手になる」
海人の言葉の後、壁の方から足音が聞こえた。
「ほう。優秀な忍者がいるようだな」
壁から現れたのは、30代くらいの男だった。海人はその男を睨み、こう言った。
「まさか、お前も忍者か?」
「左様。我はわけあってトランプカードで世話になっている土語と申す。命令であるが故、お主を倒す」
土語は鎖鎌を持ち、海人に向かってこう言った。