奴らを追い詰めるために
結社内での戦いから数日が経過した。修行を終えた三刃、姫乃、翡翠、凛子、凛音は修行の成果を試すために、日々モンスターとの戦いに励んでいた。服部達も修行をした三刃達に負けないよう、モンスターと戦ったり日々訓練していた。
「ただいま戻りましたー」
三刃と翡翠がモンスター退治から終え、結社内に戻ってきた。三刃の声を聞いた海人と夕がお帰りと言った後、三刃に近付いた。
「三刃君、輝海さんがみんな集まってくれって言ってたよ」
「いよいよトランプカードのアジトに攻め込むらしい」
この話を聞き、三刃と翡翠は分かったと返事をし、会議室へ向かった。
「全員集まったようだね」
「さて、トランプカードアジトへ攻め込む話をしよう」
輝海はこう言うと、モニターを操作しながら説明をした。
この前の戦いで捕らえたリリック、ボランドを尋問し、彼らから重要な手掛かりを得る事が出来た。それはトランプカードの本拠地である。そこに、ボスであるジョーカーがいるという。
さらに、ジョーカーに関しての情報もいくつか得る事が出来た。
・ジョーカーは男性。20代前半ぐらい。
・魔法使いである。得意属性は不明。
・性格は強い方ではない。内向的である。
・仲間には優しいが、暴れまわった部下を処罰することもある。
・表に出ることはあまりない。
以上がジョーカーに関する情報である。
「どんな魔法を使うか分からないか……」
「強いか弱いか分からないね」
と、凛子と凛音がこう言った。二人の声を聞いた輝海は咳ばらいをしてこう言った。
「それと、奴らに関しての情報はさらに手に入れた。ジョーカー以外にも、強い奴はいるそうだ」
輝海はそう言うと、再びモニターを操作した。そこにはジャック、クイーン、キングと書かれていた。
「彼ら3人はジョーカーに近い連中だ。簡単に言えば、トランプカードの幹部だ」
「3人いるんだな」
服部の言葉を聞いた輝海は、こくんと頷いた。
「情報の結果、数か月前にザグボ達を取り戻しに来たのがキングらしい。そして、この前三刃君と姫乃が戦ったのがジャックだ」
「あいつが幹部だったのか……」
三刃はジャックとの戦いを思い出しながらこう言った。
「それと、クイーンは女性で、主にジョーカーの世話をするそうだ。彼女は魔法を使えないらしい」
「そして、トランプカードにはもう一人科学者がいるそうだ」
続いて湯出がこう言うと、モニターに『ミセス・マルコ』と表示させた。
「マルコと呼ばれる女科学者がトランプカード内にいるらしい。魔法を使った化学を使っていろんな兵器を作っているようだ。ただ、組織内での彼女の評判は悪いらしく、ザグボ達犯罪者共は皆マルコが呼んだらしい」
「何の目的で呼んだのかは分からないって言ってたな」
「あと一つ、組織内の情報が分かったから伝えるね」
湯出はこう言うと、次にモニターにトランプカード内の情報をモニターに移した。そこにはこう書かれていた。
・スペード:密偵やスパイなどを行うチーム。主に男性陣が多い。
・クラブ:戦闘や犯罪、テロを行うチーム。犯罪者が多く、このチームを作ったのはマルコである。
・ハート:ジョーカーを守るチーム。これに関しては情報が掴めていない。
・ダイヤ:戦闘支援を行うチーム。女性陣が多いのだが、これに関しても情報がない。
「以上、4チームでトランプカードは作られている。俺達が戦ってきたのはクラブの連中だ」
輝海はそう言うと、モニターを操作して地図を表示した。
「奴らのアジトはここから車で数時間の所にある廃ビルの中だ」
「準備ができ次第、皆で一気に叩く‼」
その言葉に反応し、三刃達は声を上げた。
その後、会議を終えた三刃達は帰路に付くことになった。帰り際、同じ道を通っていた三刃と姫乃だったが、姫乃が不意にこう言った。
「ついに始まるね」
「奴らとの戦いか?」
三刃の言葉を聞き、姫乃は「ええ」と言って返した。
「この時のために修行をしてきたし、頑張らないとね」
「ああ」
「翡翠ちゃんもそうだけど、凛子と凛音も強くなってるから、負けられないわね」
「ああ」
「……ちょっと、どうしたの三刃君?さっきから同じ返事しか返さないじゃない」
頬を膨らませながら姫乃がこう聞くと、三刃は少し考えながらこう答えた。
「なんかさ、ジョーカーって奴の素性が分からねーんだよな」
「トランプカードのボスの事?」
「そう。あいつが使う魔法の事は分からないけどさ、優しくて内向的、そんでもってあまり外に出ない。そんな奴が巨悪の大将をやれるのかなーって」
三刃の言葉を聞き、姫乃は少し考え始めた。
「確かにそうね。あんな優男がどうしてこんなことをするのかしら……」
「一度、話をしてみたいな」
三刃のこの言葉を聞いた姫乃は、少しきょとんとした。
「どうして?」
「悪い人じゃなさそうな気がする……」
「うーん。だけど……相手が巨悪だからねぇ……」
「それにどういう人かまだ分からない。どっかでばったりと会うかもしれないな」
「あり得るかも」
姫乃が笑いながらこう言ったその時だった。二人の腹から音が鳴ったのだ。
「……コンビニ……寄り道するか」
「ええ」
その後、二人は近くのコンビニへ寄って行った。
コンビニの前に立ち、三刃は家で待つ翡翠に少し遅れると連絡をし、店内に入った。
「三刃君、何かおごってねー」
「おごらないよ」
三刃は姫乃にこう言葉を返した後、店内を見回した。店内には二人の店員と、20代くらいの男性と、その男性の付き添いらしき女性がいた。その他にも、やたらと周囲を見回す50代くらいの男がいた。
何だあのおっさん。
三刃は50代くらいの男性を気にしながら、おにぎりのコーナーへ向かった。
「うーん……人気のあるのはないわね……」
「皆晩飯で買って行くんだろ。それに家に帰れば飯があるし、肉まんでもよくないか?」
「確かにね。でも、コンビニに行くとついつい見ちゃうんだよね」
「気持ちは分かる」
二人が会話をしている時だった。突如店内に悲鳴が響いたのだ。三刃と姫乃は声のした方を振り返り、そこで起きている出来事に驚愕した。
「金を出せ!出ないとこの女をぶっ殺すぞ‼」
三刃が気にしていた50代の男が、女性を捕まえて刃物を首元に近付けていた。
「お兄ちゃん遅いなー」
翡翠はテレビを見ながら三刃の帰りを待っていた。連絡が来てから30分が経過した。帰ってきたら文句でも行ってやろうかと思いながら、テレビのチャンネルを変えていた。すると、生放送と速報のテロップが流れたニュース画面が映った。
「現場の大西です。今、現場では緊迫した雰囲気が流れています」
どうやらコンビニ強盗が起きたらしい。物騒だなと翡翠は画面を見ていた。だが、彼女は画面を見て目を丸くして驚いていた。
「お……お兄ちゃん!?姫乃さん!?」
画面に映る人質の中に、三刃と姫乃がいたのだ。