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龍との会話

 己の精神世界に入った翡翠は、自分の中に眠る龍と対話をしていた。


(あなたが私の……)


(うむ。何、主に危害を加える気はないから安心せい)


(は……はい)


(そんなに硬くなるな。我は主の一部だからな)


(私の一部……)


 龍は自分の一部。そう言われ、翡翠は少し納得した。そして、風龍にこう聞いた。


(どうすれば私は力を手に入れられるの?)


(もう手に入れている。こうして我と会えたこと、その時点で力を手に入れているのだ)


(もう?だけど……別にたいして変わってないけど……)


(そう。だが、これで体力がある時に自由に我の力を使う事が出来る。完全に龍の力を使うには、こうやって我と会話をするのが条件だからな)


(そのために、深い瞑想が必要なの?)


(その通りだ。簡単に自分の精神世界には入れるからな。しかし、主は以前変な輩に捕まり、無理矢理龍の力を使われそうになっただろう)


 この言葉を聞き、翡翠はジズァーに捕らえられたことを思い出した。思えば、あれがきっかけで魔法の事を知り、自分の家族の秘密を知ったわけである。


(あの時は中途半端で終わったが……今思えばあのおかげで簡単に我と話す事が出来たかもしれぬな)


(……そうだね)


 翡翠は風龍に近付き、手を触れた。


(私、お兄ちゃんみたいに無茶するかもしれない。もしかしたらあなたを酷使するかもしれない)


(我をどうするかは主の自由だ。我は主の一部、手足のように使ってくれ)


(うん……分かった)


 翡翠はそう言うと、風龍を優しく抱きしめた。




「おや、案外早く目覚めたね」


 菊の声が聞こえた。翡翠は我に戻り、菊にこう聞いた。


「私、どこか変わったところある?」


「ええ。魔力の流れが変わったよ。さっきよりも魔力が増えてる。ちょっと風を出してごらん」


 翡翠は言われた通りに風を出してみた。すると、ちょっと力を入れただけで物凄い強風が吹いた。


「すごい、ちょっと魔力を込めただけなのに」


「完全に風龍の力を手にしたようだね。じゃあ、後はあの二人が目覚めるのを待つとするかい」


 と、菊はまだ座禅中の凛子と凛音を見てこう言った。




 その頃、サバイバル生活をしている三刃と姫乃は、雨風をしのげる場所を見つけ、一旦そこで休憩をとっていた。


「いきなりサバイバルって言われても、何すればいいか分からないわ」


「だな。とりあえず火は姫乃の魔法で何とかなると思うし、後は飯と飲み水の確保だけだな」


 三刃はしゃがんでこう言った。その時、何かを探しているようだった。


「何を探しているの?」


「武器になるようなものが落ちてないかなーって。さっき猪の群れに襲われただろ、そいつらの対策もあるし、近くに川がある。だから魚とりにも使いたいなーって思ってさ」


「武器……そうね。獲物を狩るにはどうしても必要ね」


 その後、二人は手分けして何か使えそうなものを探した。


 数分後、元の場所に戻って二人は見つけてきた武器に使えるものを広げた。


「細い木の枝が40本。風の魔法で弓矢のように飛ばしたら獲物は取れるな」


「それと槍のような木の枝もある。魚も取れるし、一応何とかなるかもね」


「ああ」


 その時、二人の耳に地響きのような音が聞こえた。


「また猪の群れか」


「やるしかないわね」


 三刃は木の枝を数本持ち、猪が襲ってくるのを待った。そして、猪が三刃に向かって突進してきた。


「今だッ‼」


 三刃は木の枝を風の魔法で勢いよく飛ばし、猪に攻撃を仕掛けた。木の枝は猪に当たったが、致命傷にはならなかった。


「あら?」


 猪は三刃の方を睨み、襲ってきた。


「う……嘘ォッ‼」


「ああもう、やるしかないわね‼」


 姫乃は炎を出し、猪を追い払おうとした。だが、猪は炎を恐れずに突っ込んで来た。


「えええええええええ!?」


 その結果、二人とも猪の突進に巻き込まれ、怪我を追ってしまった。


「うぐぐぐ……大丈夫か姫乃?」


 三刃は何とか立ち上がり、姫乃の近くに近寄った。


「何とか……いつつ……」


 姫乃は体を起こそうとするが、痛みが走って起きれなかった。


「ごめん……痛くて立てない……」


「そう……実は僕も……」


 三刃はそう言うと、ゆっくりと倒れた。


「これ、本当に修行になるのかしら?」


「さぁ?だけど、体を鍛えるにはうってつけだと思う」


「……ねぇ、近くに来てもいい?」


 姫乃がこう聞くと、三刃は首を振り、いいよと合図を送った。それを見て、姫乃は痛みを我慢し、三刃に近付いた。


「私、この修行耐えれる自信がない」


「いまさら言うなって。ばあちゃんの事だから無理に続けさせると思う」


「……かなり破天荒で無茶苦茶なおばあさんね」


「ああ」


 三刃は返事をすると、姫乃の方を振り返った。


「姫乃、自信がないなら僕があれこれやる。姫乃は休んでいればいいからさ」


「……フッ。あはははははは」


 姫乃の笑い声を聞き、三刃はキョトンとした。


「何言ってるのよ三刃君‼一人であれこれできると思うの?」


「何だよ、お前が自信ないから頑張ろうって思ったのに‼」


「ううん。その返事聞いたら自信がわいてきた」


「何だそれ~」


 しかめっ面した三刃に向け、姫乃はこう言った。


「二人で協力しましょう。とにかく、明日からは互いに役割を付けて行動」


「そうだな。何が何でも生き残ろう」


 三刃は姫乃に向け、こう言った。




 翌日。凛子と凛音は座禅を終えた。


「ふぃ~、やっと話が出来た」


「足が痛い……」


「やーっと自分の中の龍と話が出来たようだねぇ」


 菊が姿を見せ、二人にこう言った。


「これで嬢ちゃんも龍の力を使えるようになったよ」


「じゃあお姉ちゃんみたいに戦えるの!?」


「まぁの。だが、修行はこれだけじゃないぞ。先に飯を食ってから話をしよう」


 会話後、凛子と凛音はリビングへ向かった。道中この家に仕える召使たちが、一斉に二人に近付き、物凄い速さで二人の着替えをしてしまった。


「すごい速さ……」


「いつの間に着替えさせたんだろう」


 リビングへ着くと、目の前に大きなテーブルがあった。その上には焼き魚や納豆、ほうれんそうのお浸しなどが置かれていた。そして、その近くに翡翠が座っていた。


「あ、二人とも!龍と話が出来たんだ‼」


「翡翠ちゃん!」


 凛子が翡翠の腕を見て、ある事に気付いた。


「あれ、包帯なんか巻いてどうしたの?」


「修行中にちょっと怪我してね」


「もう別の修行をしてるんだ。すごーい」


「すごくないよ。私はジズァーの事件があったから、半分龍の力が目覚めてたみたい」


 翡翠はそう返事しながら焼き魚の身をほぐしていた。その時、菊がリビングへ入って来た。


「皆揃ったようだね。じゃあこれからの話をしようじゃないか。だけどその前に、飯を食べなさい。そのまま立ちっぱなしだと冷めちまうよ」


 その後、食事を終えた3人は菊の話を聞いていた。


「翡翠は聞いてるが、あの二人は聞いてないからもう一度言うよ。これからあんたらが行う修行は体力を付けること。三刃とあの嬢ちゃんと同じような修行だけど、こっちは別のやり方で行う。付いて来な」


 3人は菊に連れられ、ある部屋に案内された。


「この部屋には実物に近いモンスターを発生できる機械が置いてある。多分、相場の友人も似たようなものを持ってると聞いたがね」


「あ、湯出さんの地下室の」


「そうそう。あの魔宝石職人。だが、私の家の方がもっと強くて硬くて速いモンスターを作れる。まぁこっちの方が性能がいいってこと。翡翠は龍の力が目覚めた後、ここで修行をしてたんだよ」


 部屋に入り、3人は床、壁、天井が白で統一された部屋へ入り、菊は機会が置いてある部屋へ入った。


「今からモンスターを発生させる。ただし、実戦に近い形となるから怪我に気を付けるんだよ」


「はい‼」


「かかってこい!」


「久しぶりの戦い……腕が鳴るわ」


 3人は武器を構え、モンスターの出現を待った。




 どこかのビル。一人の青年がソファーの上で座っていた。横にいた女性が、青年の顔を触ってこう聞いた。


「最近全く動いてないけど、どうかしたの?」


「魔法使いの存在が全世界に知らされたのは知ってるだろ」


「……そうね。あいつが馬鹿な事をしたせいでニュースになってたわね」


「そのおかげで結社も派手な動きを撮れないが、こっちも動きが取れないんだ」


「つまり、変に大事を起こしたくないのね」


「ああ。だが、一部のクローバーの団員が派手に暴れるから……全くあの女、僕に無断であれこれやりやがって……」


「どうするの?」


「本当はここから追い出したいが、そんなことをしたら何をするか分からない。力を使って追い出したいが、僕の力だと殺しかねない」


 青年はこう言うと、体が震えだした。横にいた女性は優しく彼を抱きしめ、こう言った。


「あなたは優しすぎるわ。それがかえって仇になるかもしれない」


「僕でもそう思ってるよ……たまに考えるんだ。冷酷な面を見せるのも必要だって。だけど……それが僕には難しい」


「ジョーカー、今は休んで。何も考えないで。考えるからあなたは深く傷つくのよ」


「……慰めてくれてありがとう、クイーン」


 トランプカードのボス、ジョーカーは涙を流しながら側近であるクイーンにやさしく抱き着いた。

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