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明かされた魔法使いの存在

 コラルとジャベの戦いの後、湯出は疲れ果てていた。肉体的ではなく、精神的に。


 ジャベの取り調べを行っていたが、彼から出る言葉は全て罵倒と汚い言葉である。さらに、彼がテレビ局で蛮行を行ったせいで日本中に魔法使いの存在を明かされてしまった。しかも、この蛮行はまれに見ない悲惨で残極な事件として、世界中に報道されてしまった。そのせいで、世界中に点在する魔法結社がパニックになっている。


「はぁ……疲れた……」


 ジャベの取り調べを打ち切り、湯出はカップコーヒーを飲んでいた。そこに、輝海が声をかけてきた。


「よー、大分苦戦しているようだな」


「はい。あいつ言うこと聞きませんよ。とっとと自白剤使って仕事進めたいんですけど」


「あいつはほっておけばいいさ。代わりにガンマンもどきの野郎がいろいろ話しているよ」


「それって本当ですか?」


「嘘発見器使っている。もし、嘘を言えば体中に電撃流れる仕組みの奴な」


「それで奴は、痛い目にあいたくないから話してるんですか?」


「ああ」


 輝海はコーヒーメーカーでコーヒーを注ぎ、湯出の隣に座った。


「あれから三刃君達はどうなっている?」


「三刃君はいったん自宅に戻りました。梅子さんが大事な話があるというので」


「で、姫乃や光賀達も自宅にいるのか」


「はい。でも皆、結構思いつめた顔をしていましたよ」


「トランプカードの連中の力を見てビビってるのか……」


 輝海がこう言った直後、湯出の携帯電話が鳴り響いた。


「すいません。宝石店の方に客が入りました。ちょっと顔出してきます」


「大変だなー」


「あとの事はお願いします」


 湯出は輝海に頭を下げてこう言うと、湯出宝石店の方へ走って行った。


 宝石店へ着き、急いでカウンターへ向かって来客を確かめた。


「いらっしゃーい。何かお探しで?」


 湯出は愛想よく笑顔で客を迎え入れた。その客は、宇野沢だった。




 その頃、三刃は自宅で傷を癒していた。あの戦いからしばらく経っているのだが、傷は完全に癒えてなかった。


「つつつ……まだ動くと痛いな……」


「こんなもんで弱音吐くんじゃないよ。相場の馬鹿は大けがをしても笑いながらよく帰って来てたんだよ」


「兄さんの体と三刃君の体はちょっと違うと思うけど……」


 と、笑いながら宗次郎がお茶を出した。


「しばらく休んでなさい。翡翠ちゃんもね」


「はい」


 翡翠はスマホをいじりながら、返事をした。


「さっきから誰と連絡をしているの?」


「友達。一応魔法使いの子」


「もしかして、三刃の彼女かい?」


「姫乃さんの事?違う違う。姫乃さんの妹」


「ほー、あの火竜の巫女に妹がいたのかい」


 梅子はこの話を聞き、にやりと笑った。


「その子らは龍の力を使えるのかい?」


「んー……まだみたい。凛子ちゃんが私達の力よりもお姉ちゃんのほうがもっと上だって言ってた」


「そうかい……」


 この反応を見た翡翠は、少し疑問を持った。その時、三刃の携帯が鳴り響いた。


「誰だろ……宇野沢?どうしたんだ」


 三刃は携帯を取り、宇野沢と連絡を始めた。


「どうした宇野沢?何か用か?」


『お前今どこにいるんだよ?』


「どこって……家だけど」


『今からそっち行く、いろいろと聞きたいことがあるんだ。魔法の事とか、ニュースでいろいろやらかした男の事とか!』


「魔法……お前ちょっと待て!どうして……」


 三刃は宇野沢に話しかけたが、宇野沢はすでに電話を切っていた。


「どうしたの?」


「まずい事になった。宇野沢に魔法の事がばれた」


 三刃は冷や汗をかきながらこう言った。




 数分後、湯出と宇野沢が三刃の部屋に来ていた。


「さぁ。話してもらうぞ」


 と、宇野沢は胡坐をかいて三刃にこう言った。まいったと思いながら、三刃は宇野沢にこれまでの事をすべて話した。ジズァーの戦いの事、GWで起きた血狐の戦い、宿泊訓練での騒動、そしてトランプカードの事も。


「はぁ……お前がやけに変な傷を負ってるから変だと思ったんだよ」


「悪い。魔法の事に関してはお前にだけは知らせたくなかった」


「……気持ちは分かった。俺を危険なことに巻き込みたくなかったんだろ?」


「ああ」


 三刃は短く返事をした。宇野沢は溜息を吐き、立ち上がって三刃に近付いた。


「今までこんなことが起きてたなんて知らなかったよ。今までご苦労だったな」


「何だよ、その反応」


「秘密にしてたから怒ると思ってんのか?んなわけねーだろ。お前は俺が出来ないことをやってる男だ。すげーと思うよ」


 予想外の反応で、三刃は驚いていた。だが、次に宇野沢はこう言った。


「だがなー、あまり無茶すんじゃねーぞ。お前にはまだ貸したいエロ本とかあるし、お前に貸したエロ本も返してもらってない」


「何だよ、エロ本の為に生きろってか!?」


「それもある。お前に生きていてもらいたい人は俺以外にもたくさんいるだろ。だから、戦って死ぬんじゃねーぞ」


 宇野沢の言葉を聞き、三刃は少し間を開け、こう言った。


「ああ。何が何でも生きてやるよ」


「頼むぜ、親友」


 宇野沢はヘッと笑って三刃にこう言った。その時、翡翠が部屋に入って来た。


「魔法の事を知ったのって、あのニュースで?」


「ああ。いろんなところで騒ぎになってたぜ。魔法使いがテレビ局で虐殺したって」


「湯出さんがそいつを倒したんだよね」


 三刃が湯出にこう言うと、話を聞いていた翡翠が驚いた。


「ええええええええ!?湯出さんが!?あのおっかない人を!?」


「そんなに驚く?」


「いつもアニソンとか聞いてる人だから、そんなに実力ないかなーって思ってました」


「俺もそう思ってた」


「失礼だな……これでも結構筋肉あるよ?体中生傷だらけだよ?見る?」


「結構です」


 翡翠はこう言った直後、梅子が笑いながら顔を見せた。


「話は終わったかい?」


「ばあちゃん。まぁ大体は」


「そうかい。じゃあ今度はばあちゃんの話だ」


 と、梅子は笑いながら三刃と翡翠をリビングへ戻るよう告げた。それを見た宇野沢は湯出にこう言った。


「なんか重要そうな話なんで、俺帰りますね」


「うん。気を付けてね」




 梅子はリビングの椅子に座り、三刃と翡翠にこう聞いた。


「あんたたち、強くなりたいかい?」


「もちろん」


「うん!」


 二人の返事を聞き、梅子の目つきが変わった。


「それじゃあ修行をするかい?」


 二人は少し間を開け、梅子に返事をした。


「ああ。強くなれるんだったら!」


「私も。巫女の力を使いこなしたい!」


 強い返事を聞き、梅子は少し笑ってこう言った。


「じゃあ三刃の傷が治り次第、修行を始めるよ。だけど、メンツをそろえないとね」


「他に誰か呼ぶの?」


「あんたらの親友さ。火竜の巫女も修行させるんだよ」


 この言葉を聞き、三刃は慌て始めた。


「ど……どうして姫乃やあの凶暴双子も修行させるんだよ!?」


「あの子達も致命的な弱点がある。お前と同じ年代の子、その子は体力がない。いくら巫女の力を上手く扱えると言っても、力がなくちゃあ意味がない。そして双子。あの子らは自分に力がないと言っているが、それは間違い。あの子らも火竜の巫女の力を持っているはずだ。何が何でもそれを引き出す!」


「ばあちゃん……姫乃達が修行に付き合ってくれるって思ってるの?」


「あの子らはトランプカードというへんちくりんな組織と戦いたがっているはずさ、そのために力を得るんなら私の修行を快く引き受けてくれるはずさ」


「そ……そうかな……」


「とりあえず連絡してみな」


 梅子に言われ、三刃はスマホで先ほどの事を姫乃に伝えた。すると、すぐに返事が返ってきた。


「返事早いな」


「言ってみな」


「うん……修行をさせてください。凛子と凛音も修行をしたがっているって伝えておいて。だって」


 返事を聞いた梅子は、にやりと笑った。


「じゃあこう返事を返しな。修行は三刃の傷が治り次第。内容は後日伝えるってね!」


 その後、三刃は梅子の言われた通りの言葉を、姫乃に送った。


「さぁ。修行の準備をしないとね」


 梅子は携帯電話を取り、誰かと連絡を始めた。

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