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予期せぬ乱入者

 ライフルを構えた湯出はコラルを睨んでいた。コラルが構えている銃は、片膝をついている三刃に向けられている。


「こりゃ、漫画でよくあるパターンになっちゃったね」


 ククッと笑いながら、コラルが呟いた。自分が三刃を撃てば、確実に湯出の構えるライフルが火を放つ。かといって、何もしないわけにはいかない。


「仕方ないねぇ……」


 コラルは銃口を湯出の方に向け、発砲した。


「そう来るか」


 湯出は横に転がって銃弾をかわし、その時にライフルをしまった。


「追尾弾だってこと、忘れてない?」


 避けた湯出に向け、コラルは笑いながらこう言った。だが、湯出は大きな盾を出し、銃弾を防いだ。


「あらら。厄介だねこれ」


「今だ三刃君!逃げろ‼」


 湯出の声を聞き、三刃は立ち上がってコラルから離れた。だが、その瞬間をコラルは逃さなかった。


「逃がさないよ」


 コラルが銃を構えたと同時に、湯出は急いで魔宝石から銃を具現化し、装備してコラルの銃に向けて発砲した。しかし、その前にコラルは銃を放っていた。


「ああっ‼」


 放たれた銃弾は、三刃の左足のふくらはぎを貫通し、地面に落ちた。攻撃を受けた三刃は、悲鳴を上げてその場に倒れた。


「三刃君‼」


「よーく見てなよ、あの子の最期を」


 コラルは地面に埋まった弾丸を操り、三刃の腹を貫いた。


「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」


 湯出は手にした銃を構え、コラルに向けて乱射した。何発かは外れてしまったが、3発はコラルの体に命中した。が、いずれも致命傷とは言わなかった。


「おやおや……怒って熱くなっちゃったねぇ。冷静になれよ」


「うるせーよ。ガンマンもどき」


 湯出は倒れたコラルに近付き、止めの一撃を与えようとした。だが、コラルは湯出に向けて銃を向けていた。


「このままその剣でグサッとやったら、バキューンって撃っちゃうよ?」


「鼬の最後っ屁のつもりか?」


 湯出は剣を振り下ろし、コラルが銃を持つ左腕を切断した。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 腕を切断され、コラルは大きな悲鳴を上げた。


「グウウッ……兄ちゃん……惨いことするねぇ……」


「お前もやっただろうが‼」


 湯出は落ちているリボルバーを破壊した後、三刃の方に向かい、傷の具合を調べた。


「急所は外れてる。だけど、早く治療しないとまずい……」


 湯出は急いで治療魔法を始め、三刃の傷を治し始めた。だが、その隙を狙ったコラルが立ち上がり、残った腕で銃を構えていた。


「読みが浅いねぇ……俺はもう一丁リボルバーを持ってるんだよ?治療を止めないと、頭が吹き飛ぶよ」


「読みが浅いのはお前の方だ」


 コラルの後ろから、輝海の声が聞こえた。コラルは振り向こうとしたが、その前に輝海がコラルを殴り倒した。


「湯出、治療を続けろ!」


「は……はい‼」


 その後、輝海は倒れたコラルの上に乗り、彼の顔を殴り始めた。


「この野郎、テメーに殺された剛三達の分を返してやるぜ‼」


「仇うちかい?みっともないから止めたら?」


 コラルがこう言うと、輝海はコラルの顔面を殴った。


「そんな事しても意味はないよ」


「黙れ外道‼」


 殴られるたびに、言葉を言うコラルに対し、輝海は鉄拳という返事を彼に返していた。


 数分後、輝海は立ち上がってその場に倒れた。


「はぁ……はぁ……まだ殴り足りねぇけど……体が限界だ……」


 この攻撃で、輝海は最後の力を使い果たした。殴られ続けたコラルの顔面は、青く腫れていた。


「無茶しないでくださいよ先輩。まだ治療が終わってないんですから」


 三刃の治療を終えた湯出は、次に輝海の治療を始めた。


「魔力が残ってないので、少ししかできませんが」


「動ける範囲で回復してくれればいい。俺より三刃君の容態はどうだ?」


「血は止めましたが、弾は体に残っています。結社に戻って手術をしないといけません」


「そうか……すまない、俺のミスで……」


「気にしないでください。悪いのはトランプカードの連中です」


「おいおい……勝手に悪者にされちゃあ困るぜ」


 会話の途中で、コラルの声が聞こえた。二人は声のした方を振り向き、状況を把握した。コラルは立ち上がり、気を失っている三刃に銃口を突き付けていた。


「おじさん怒っちゃったよ。これ以上変なことすると、この子の命はないよ」


「くそ……もう起き上がったのか……」


「自慢じゃないけど、俺の体はタフな方でね」


 コラルは笑いながら、こう言った。だが、後ろから車のエンジン音が響いた。


「湯出、他に援軍を呼んだのか?」


「いえ、呼んでません……あれは……結社の人じゃないですね」


 どうやら、誰かがここにやって来たようだ。敵の新手かもしれない。そう思った湯出は魔宝石を構えた。そして、車の扉が開いた。


「お兄ちゃん!大丈夫!?」


「ひ……翡翠ちゃん!?」


 中から出てきたのは翡翠だった。そして、助手席側から梅子がゆっくりと現れた。


「ヒッヒッヒ。久しぶりだね、相場の友人共」


「梅子さん!?どうしてここに!?」


「三刃に会いに来た」


 梅子はそう言うと、コラルを蹴り飛ばして三刃に近付いた。


「おーおーかわいそうに。体ん中に弾が入ってるよ」


「マダム、孫との再会は別の場所でやってくれないか?できればあの世で」


 コラルは梅子に銃口を合わせ、こう言った。それに対し、梅子は唾を吐いてこう言った。


「あんただね、人の孫に弾をぶち込んだのは?」


「ほー。じゃあマダムが相手になるのかい?」


「そうだよ。本当はあんたみたいな雑魚を相手にしたくないけどねぇ、孫がこんな目にあわされたんだ。手加減はしないよ」


 その直後、コラルが急に倒れた。その時、翡翠は強大な魔力を察していた。


「おばあちゃん……これって……」


「黙って見てな」


 翡翠は察した、コラルが急に倒れたのは梅子の攻撃のせいだと。だが、どうやって攻撃しているのかは分からなかった。


「な……何だこれ……動けない……」


 コラルは、何か重い物が体にのしかかったと察していた。そのせいで体中の骨がミシミシなっているのが分かる。


「いいかいよく見てな?風の魔法を上手く扱えば、こんな事が出来るんだよ」


 梅子が指を鳴らすと、風船が割れたような音があたりに響いた。それと同時に、コラルは地面に深くめり込んだ。湯出はコラルの様子を見るため、めり込んだコラルを掘り出して様子を見た。


「……気を失ってる……」


「あんたら、結社に戻るよ。久しぶりにバカ息子の墓を拝みたいからねぇ」


 梅子は湯出達にこう言うと、車の中に戻った。




 その後、結社に戻った輝海は事件の事を報告した。剛三たちDブロックの魔法使い達は全員死亡。聞き出したアジトは無数にあるトランプカードのアジトの一つでしかなかった。


 剛三達は死んでしまったが、新たにトランプカードの魔法使い二人を輝海達は捕らえる事が出来た。彼らに自白剤を打ち込み、新たに情報を聞き出すことに専念する。ということが決まった。


 傷を受けた三刃だが、事件から一週間が経過した今、やっと目が覚めたのである。


「……ここは……」


「結社の保健室だよ」


 三刃が眠っているベッドの横に、梅子が座っていた。


「ばあちゃん……どうして……」


「お前を助けたのは私だからね。とりあえずお前が起きたことを皆に伝えてくるかねぇ」


 と、扉を開けて出ようとしたが、その間際に梅子は三刃にこう言った。


「あの子に礼を言っておきなよ。ずっと眠っていたあんたの看病をしてたんだから」


 そう言って、梅子は出て行った。他に誰かいるのか?三刃はそう思い、周囲を見回すと、梅子が座っていた隣の席に姫乃がいた。


「姫乃……」


 三刃は姫乃を起こそうとしたが、腕を上げた瞬間腹に痛みが走った。まだ傷は治っていないようだ。仕方なく、三刃は声を出して姫乃を起こした。


「姫乃、姫乃、起きろ」


「うん……三刃君?」


 姫乃は重そうに瞼を開き、三刃の方を見た。


「やっと起きたんだ……」


「ああ、今さっきな」


 三刃は苦しそうにこう言うと、少し間を開けて姫乃に礼を告げた。


「ありがとな、看病してくれて」

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