表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/85

残虐なる者

『昨日未明、○○県××市で大規模な爆発が起こりました。この事故による死傷者はまだ出ておりません。爆発の規模が大きいため、周りのホテルやデパートにも被害が及んでおります』


 ずっと朝からこのニュースが流れている。三刃はテレビの映像を見ながら呟いた。


「えげつねーな。まるでテロじゃねーか」


「そうだね。まさか、魔法使いが関わってたりして」


「ないないそんな事。魔法使いは知られちゃいけない存在なんだ、こんな派手なことする奴なんていねーだろ」


 三刃と翡翠はこんな会話をしながらテレビを見ていた。


『待ってください。今ビルから死体が発見されたとの情報が入りました。どうやら人体の一部が切断されている死体が発見された模様です』


「バラバラ殺人か……」


「こんなひどいことするなんて、人間じゃないね」


 翡翠はお茶をすすってこう言った。その時、電話の音が鳴り響いた。


「私出てくる」


「おー」


 立ち上がった翡翠に、三刃は気の抜けた返事で返した。


『現場からは以上です。カメラをスタジオに返します』


 テレビに映るリポーターがこう言うと、画面はスタジオに戻った。だが、そこに映ったのは辺り一面血で染まったスタジオと、首を斬り落とされているコメンテーター、そして両腕を切り落とされて死んでいる女性司会者と、うつ伏せで血を流している司会者の姿が映った。カメラが通っているのか、他のスタッフらしき悲鳴が響き渡っている。


「何だよこれ……」


 驚愕した三刃は画面を直視し、誰がこんなことをしたのか調べた。すると、金髪のロン毛の男性がカメラに映った。


「あー、これ今映ってる?じゃあ俺の言ってる言葉聞こえるかー?いっきまーす。おっぱいおっぱいぱいぱいぱい……聞こえてるねっと」


 男は司会者の死体を蹴り飛ばし、その椅子に座り、大きな音を立てて両足を机の前に置いた。


「あーあー。聞こえますか結社のクソ間抜け魔法使いの皆様?あれ、返事ねーな。俺様の言ってることが高度すぎるから、間抜けの結社の皆様には分かんねーか。じゃあ分かるように言ってやるよ。しわしわじゃねー脳みそのおバカな結社の魔法使いのみなちゃま、おげーんきでーすかー?俺様はトランプカードの魔法使い、クローバーのジャベだ‼よろちくびー」


 画面の向こうで、トランプカードの魔法使い、ジャベがふざけてるような感じの喋り方でこう言った。




「一体何だこれは!?」


 一方を聞いた結社の魔法使いが、皆ジャベが映っているニュースの画面に注目した。


 輝海達の敗北は、彼らは知られていなかった。いや、恐らくそうだろうと確信していた。今朝のビル爆破騒動となったビルは、輝海達が昨晩戦っていた場所なのだから。


「まさか……トランプカードの連中はこうなることを恐れて……」


「ビルを爆破させたのか!?」


「その可能性が高い、そして……輝海達が捕らえられたか……あるいは殺されたかもな」


 結社の中に、重い空気が流れた。湯出もこの場におり、話を聞いていて内心ショックを受けた。輝海が死んだかもしれないからだ。


「嘘でしょ……輝海先輩……」


 そんな空気の中、画面の中のジャベは笑いながら話を続けた。


「おいそこの豚野郎‼画面を切り替えるんじゃねーぞ。くっそつまんねーCMにも入るな。いいから何もせずこの動画を映しとけ。あーあー。えー、結社のみなちゃまー。実は俺様達はちみ達のお仲間を捕まえたんでちゅよ。数は二人。普通の奴とでかい図体したゴリラ。でも、そのゴリラは致命傷を負ったから死んだかもね。草生える。で、お仲間を取り返してほしかったら、かかって来いよクソ野郎‼」


 と、ジャベは剣を出し、近くにいたスタッフを切り裂いた。


「場所はテメーらで調べろや。いくら間抜けな連中でも、画像を見れば調べられるだろ」


 その後、ジャベはスマホを取り出し、画面に押し付けた。そこには、紐で括りつけられた輝海と剛三の姿が映っており、周りはどこかの崖のようだった。


「場所を調べろ、今すぐにな‼」


「はい‼」


 命令を受けた職員が、すぐに場所を調べ始めた。


「場所は分かったか?じゃあもう一つ話をしてやる。今日こいつらをぶっ殺す!つまり処刑だ‼時間は今から6時間後だ。6時間きっちり経ったらぶっ殺すからな、覚えてろよ‼」


 ジャベはそう言うと、剣の刃に魔力を発し、振り回した。そこから、無数の黒い刃が飛び始め、周囲のスタッフや機材を切り裂いた。


「じゃあ、能無しの結社と戦えるのを待ってるぜー。そうだ、もし来るとしたらエロくておっぱいでかくて、俺の息子が反応しそうな女子を連れて来いよ!ブスを連れてきたらぶっ殺す‼」


 その後、画面は切り替わり、しばらくお待ちくださいのアナウンスが流れた。




 テレビの電源を消した三刃は、すぐに立ち上がって玄関に向かった。その時、翡翠が声をかけた。


「お兄ちゃん、今おばあちゃんから連絡があって……」


「今はそんな暇はない‼」


 と言って、出て行った。その様子を見て、翡翠は首をかしげた。


「何かあったのかな?」


 数分後、三刃は湯出宝石店から結社へ向かった。そこにはすでに姫乃や光賀、夕が集まっていた。


「皆もテレビを見たのか?」


「ええ。まさか私達が知らないうちにこんなことになってるとはね……」


「輝海さんも俺らに知らせてくれたら、戦いに行くんだけどなー」


「輝海さんは君達をこの戦いに巻き込みたくなかったんだよ」


 神妙な顔をした湯出が、部屋から出てきた。


「皆、集まってくれたのはいいけど、帰ってくれないか?」


「どうしてですか?」


「今回の戦いは今まで以上に厳しい。子供の皆では対処できない。そして危険だ」


「だからって、輝海さんをほっとけませんよ‼」


 夕が叫んだ。湯出は間を置いた後、静かに口を開いた。


「もし、皆がこの戦いに入るなら……一言だけ言っておく。自分の身は自分で守れ」


「はい」


 三刃は返事を返した。


 数分後、場所が判明したと情報が入った。場所はここから少し離れた所にある山。そこに輝海と剛三がいる。そして、トランプカードの魔法使いも。


「作戦は一つ、トランプカードと戦う事だ。最初は俺と誰か一人で行く。もし、俺やその一人が死んだり戦闘不能になったら、他の二人が現場に行く」


「分かりました」


「じゃあ、最初は僕が行く」


 と、三刃が名乗りを上げた。


「ああいう奴は大っ嫌いなんですよ。ぶっ飛ばしてやります」


「……敵わない相手でもか?」


「無茶して突っ込みますよ」


「……分かった」


 話を終えた後、三刃と湯出は車に乗り込んだ。


「あとは連絡があるまで待機。何かあったら来てくれ」


「おう!」


「気を付けてください」


 光賀と夕が湯出にこう言った。姫乃は三刃に近付き、じっと目を見てこう言った。


「気を付けてね……死なないで」


「ああ。帰ってくるよ」


 と、三刃は姫乃にこう言った。そして、二人を乗せた車は出発した。




 捕らえられている輝海が、目を覚ました。


「どこだ……ここは?」


 魔力を探知すると、悪意を持った魔力が近くにいることを察知した。そして、自分が今置かれている状況を把握した。


「……けっ、俺ら捕まったのかよ……」


 後ろを振り向き、剛三にこう言ったが、剛三は返事を返さなかった。


「剛三?おい剛三?」


 名前を呼んでも、剛三は返事をしなかった。そして、ピクリとも動かなかった。しばらくすると、カラスが降りてきて剛三の体をつつき始めた。


「ちっ、来るなよカラス、邪魔くさい!」


 輝海は体を揺らし、カラスを追い払っていた。その音を聞いてか、足音が近づいてきた。


「気分はどうだい、魔法結社の魔法使いさん?」


「……何のようだ?ガンマンヤロー?」


 コラルが笑いながら輝海に近付いてきた。そして、剛三の体をつついているカラスを撃ち殺した。


「何やっても無駄だよ。あんたは数時間後、この世とお別れすることになる」


「処刑ってことか?」


「そうだよ。お前さんの処理を任されたのは、このコラルだ。よろしくね」


 コラルはそう言うと、輝海の横に座った。


「最期の話し相手になってやるよ。何か話題ない?」


「剛三はどうなっている?」


「ヘリコプターで運んでる最中に死んだよ。失血死」


 この言葉を聞き、輝海は奥歯をかみしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ