表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/85

真夜中の激闘

 ホテル内。隣のトランプカードのビルから音が聞こえたからか、宿泊客がロビーに集まって来ていた。その対応をするため、ホテルの従業員が慌てながら作業をしていた。


 そんなことを知らず、剛三はミーザと激しい戦いを繰り広げていた。


「フンッ!」


 剛三は勢いよく火の玉を放ったが、ミーザは魔法壁を作り、火の玉をかわした。


「そんなチンケな玉玉じゃあ俺は焼けねーぜ?」


「今のは小手調べだ。これには耐えられん‼」


 剛三は構えを取り、ミーザに向かって走って行った。


「ハッ‼攻撃が当たらないから直接叩く気か?」


 ミーザは笑いながらモーニングスターを振り回し、鉄球を剛三に向けて投げた。


「狙いやすいんだよデカ物ダルマ‼」


 飛んでくる鉄球を目にし、剛三はにやりと笑った。剛三は走るのをやめ、大剣で防御した。飛んできた鉄球は大剣に当たったが、その時に鎖が大剣に絡みついた。


「何をするつもりだ?」


「こうするつもりだ‼」


 鎖が大剣に絡みついたことを確認した剛三は、大剣を力を込めて横に振り回した。


「へっ?おわっ!?」


 モーニングスターを装備していたミーザは、剣が降られたのと同時に体が飛び上がった。剛三はこれを狙っていたのだ。鎖をわざと大剣に絡ませ、そのまま振り回してミーザを壁や床、天井に激しくぶつけてダメージを奪う。もし、手を放しても武器がないため、どうしようもできない。


「デカ物のくせに考えたな、クソッ‼」


 ミーザはダメージを受けるのを防ぐため、モーニングスターを手放した。


「ほう、武器よりも己の身を案じたか」


 大剣を止め、剛三は地面に倒れているミーザにこう言った。


「バーカ。俺は他にも武器を持ってんだよ」


 ミーザは胸ポケットから魔宝石を取り出し、武器を具現化させた。


「……槍か」


「何でも使うと思ってるなデカ物。俺の本来の武器はこいつなんでね」


 ミーザは槍を構え、剛三に向かって突進した。




 輝海と砕はビルの中を走っていた。だが、二人の存在も、中にいるトランプカードの連中は察していた。


「結社の連中はどこだ!?」


「見つけたらぶっ殺せ‼」


「いや、生きたまま臓器を引きずり出してやろうぜ‼公開処刑だ‼」


 至る所から、物騒な言葉が飛んで来ている。


「ったく、本当に頭の悪い連中だな……」


 言葉を聞いていた際は、呆れてこう呟いた。


「輝海、俺は雑魚の始末をしてくるよ」


「一人で大丈夫か?」


 心配そうに輝海は言ったが、砕はヘッと笑ってこう言った。


「俺が雑魚相手に殺されると思ってるのか?」


「……いや。じゃあ俺は先に進む」


「気を付けろよ」


 輝海は先に行き、砕は後ろへ戻ってトランプカードの兵士達の元へ向かった。


「おい、いたぞ‼」


「逃げれねーからのこのこ出てきたのか」


 罵倒を始める兵士達だったが、砕は彼らに向かってこう言い放った。


「それがあんたらの遺言か?」


「遺言?死ぬのは貴様だ!」


 兵士の一人がこう言うと、兵士達は一斉に砕に襲い掛かった。


「えー、結社の魔法使いから馬鹿の皆様に一言伝えたいことがあります。貴様らは全員この場で処刑です」


 砕は風を発し、襲ってくる兵士達を切り裂いた。風を受け、不審に思った兵士達だったが、体に異常がない事を知り、笑い始めた。


「何が処刑だ?貴様が放ったのはただの風ではないか‼」


「それが結社の魔法使いの実力か?」


「雑魚が粋がるんじゃねーぞ‼」


 再び罵倒が始まったが、一部の兵士が、様子がおかしいと察したのだ。


「あ……あれ?俺の右手が……ない」


 この直後、後ろの兵士が倒れた。


「あれ?なんかバランスが……」


 不審に思い、足を見てみると、右の太ももが切断されていた。


「ヒッ‼何でこんなことが……」


 右の太ももを切断された兵士が悲鳴を上げている途中、彼の首が崩れ落ちた。その後、次々と風によって切り刻まれた兵士達が、倒れて行った。


「バイバイ犯罪者の皆さん」


 倒れた兵士に向かい、砕はこう言った。だが、何者かが彼を襲った。


「風の魔法使いね。やるじゃんか」


「……凄腕もいたんだ」


 砕は溜息を吐き、飛んでくる相手の攻撃をかわしていった。


「戦いなれてるね。でも、ここで騒動を起こしても何も変わらないよ」


 そう言いながら、相手は姿を見せた。


「おいおい、腰にリボルバーを付けちゃって、ガンマン気取りですか?」


「気取りじゃない。俺はガンマンだ」


 相手はそう言うと、一瞬のうちにリボルバーを装備し、発砲した。攻撃を察知した砕は弾をかわしたが、少し遅れたせいか、頬に切り傷が出来た。


「いい反応をしてるね」


「あんたもね。俺の風、全部避けてたじゃないの」


「そのせいで、お気に入りの服が切れちゃったけどな」


 砕と相手の男。二人はにらみ合いながら、微笑んでいた。


「雑魚の相手だと思ったけど、こりゃ楽しめそうだね」


「余裕ですね、結社の魔法使いさんは」


「余裕がなきゃ仕事は出来ないって」


「ほう。じゃあ、一生仕事ができなくしてやろう」


 この言葉の直後、砕は横に飛んだ。その背後には、先ほど相手が発砲した銃弾が飛んで来ていたのだ。


「追尾弾!?」


「俺はただの古臭いガンマンじゃない。名を、コラルという……」


 男、コラルは背中にある帽子をかぶり、こう言った。




 同時刻、三刃の家にて。寝てる途中で起きた翡翠は三刃の部屋の扉を叩いた。


「どうした……今夜中だぞ……」


 寝てる途中で起こされたのか、三刃は欠伸をしながら扉を開いた。


「ねぇ、なんか感じない?」


「何が?」


「魔力の衝突みたいなのが。遠くから感じるの」


 三刃は欠伸をしながら、魔力を察知しようとした。だが、眠気に負けて部屋に戻った。


「ちょっと、真面目な話してるのに!」


「明日湯出さんに何かあったか聞こうよ。今日はもう遅い。お隣さんに迷惑だからあまり騒ぐなよ」


「全くもう」


 話を聞く気がない三刃を見て、翡翠は呆れていた。だが、それは嘘である。三刃はわざと気付いていないふりをしていたのだ。


 うすうす三刃も気付いていた。トランプカードの事、姿を見せない輝海の事。大人たちは自分たちに言えない何か大きな仕事をやっていると考えていた。


 だが、今の状況、自分も翡翠も戦力としてはまだ未熟。姫乃も武器が破損して戦えない状態。どうすることもできない。


「……明日湯出さんに相談すっか」


 三刃はそう呟き、眠りについた。




 外にいる忍と閃助は、中で戦いが行われているのを察していた。


「向こうもバカではないな、俺達の事を察していやがった」


「どーすっかねー?俺達も中に入って一緒に暴れる?」


「命令通りに動く。それが一番だと思うが……」


 この時、二人は大きな魔力の変動を察した。まさか中で何かがあったのでは?と思い、ビルを見つめた。


 二人の予感は当たっていた。砕は飛んできた追尾弾をよけきれなかった。弾は、砕の心臓部分に命中していた。


「がはっ……あ……」


「アディオス。君とのおしゃべり、それなりに楽しかったよ」


 片膝をついた砕に対し、コラルはこう言った。


「さて、もう一人いるね。彼を倒さないと、ジョーカー様に叱られてしまう……」


「ま……待て……」


「ん?」


 苦しそうに息を吐いて、立ち上がる砕を見たコラルは、驚いて後ろに下がった。


「こりゃまた、心臓を打ち抜いたはずなのに、生きてるなんて……」


「俺は執念深いんでな……」


 この直後、砕の周囲に激しい風が発生した。まずいと思ったコラルは、リボルバーを取り出して4発銃弾を放った。だが、そのうちの3発は風で切られてしまった。


「お前を道連れにして死んでやるゥゥゥゥゥ‼」


 己の死を察した砕は、最後のあがきで激しい風を放った。その風は天井や床、壁を切り刻んで破壊していった。激しいせいか、下の階で戦っている剛三とミーザにも被害が及んだ。


「砕の野郎、こんな風を使って、何してんだ!?」


「チッ、めんどくせー真似するな‼」


 二人は落ちてくる天井や瓦礫をよけながらも、戦いを続けていた。


 上の階に登っている輝海も、その風を察していた。


「砕の奴……まさかな……」


 輝海は奥歯をかみしめ、歩みを続けた。彼は察した、この攻撃が砕の最後の攻撃であることを。




 しばらくし、激しい風は収まった。階段付近には、切り傷が出来たコラルが倒れていた。


「……うーん……こりゃまいったね」


 コラルは立ち上がり、目の前の惨状を目にしておーこわと呟いた。


「傷薬……取ってこないとね」


 彼はそう言って階段を登ろうとしたが、力が尽きて倒れている砕を見つけ、近付いた。


「君のせいで服がボロボロになっちゃったじゃないか。どうしてくれるんだ?」


 砕はコラルを睨み、小さな声でこう言った。


「クソ野郎が……」


 この言葉の後、砕は息を引き取った。何かするんじゃないかと思っていたコラルは、リボルバーを構えていた。だが、砕が息絶えた光景を見て、リボルバーを腰のシリンダーにしまった。


「死体の処理……どうしようかな……」


 砕の死体を見て、コラルは困り果てたようにこう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ