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傷多き決着

 翡翠達は、連絡が来るのを待ちながら、テレビでニュースを見ていた。レポーターが、慌てながら現場の状況を伝えるが、翡翠はそんな事よりも、三刃が映像に出ないかどうか心配だった。三刃の事だ。テレビに映って魔法の事が世間に知られてしまうなんてこと、考えていないだろう。先ほどの爆発も、三刃か光賀がやったんだろうと、翡翠は思っていた。


「お兄ちゃん……変なことしないといいんだけど」


「一応、結社の役員がビルの周りに魔法の決壊を張ったから、カメラには映らないと思うんだけど……」


 心配しながら、凛子がこう言った。




 屋上で戦っている三刃とザグボは、下の戦いが終わったことを察した。


「光賀……無事かな……」


「ザラザ、後で迎えに行く」


「僕を倒してか?」


「その通りだ!」


 ザグボは斧を振り下ろし、三刃に攻撃した。三刃は剣で攻撃を受け止めようとしたが、斧の方が力、威力が強く、防ぎれなかった。


「グガッ!」


 三刃は悲鳴を上げ、尻もちをついた。


「隙を見せたな!」


「死んでたまるか!」


 三刃は開いている左手を前に出し、風の刃を発生させた。ザグボは風を受けて怯み、後ろに下がった。


「チィッ!」


 ザグボの隙を狙い、三刃は立ち上がって態勢を整えた。


「めんどくせぇな!仕方ねぇ、本気でお前を殺す!」


 ザグボは両手に電撃を発生させ、地面に叩きつけた。電撃は地面に流れ、三刃の方に向かって行った。三刃はあれに触ったらまずいと察し、電撃から逃げた。だが、逃げるのに集中してたせいで、ザグボの方を見ていなかった。


「隙だらけだぜ!」


 ザグボは三刃を殴り倒した。倒れた三刃は受け身を取って立ち上がろうとしたが、地面に流れている電撃が彼を襲った。


「ぐああああああああああああああああああああ‼」


 三刃の体に電撃が走る。痺れるせいで、身動きが取れなくなってしまった。


「く……くそ……」


「さーてと、始末するか」


 ザグボは、斧を三刃に向けて振り下ろした。少しだけ麻痺が回復した三刃は、体を回転させて攻撃を避けたが、斧の刃は左腕を切り裂いた。


「ぐあっ!」


「へへっ、片腕は使えないな」


 三刃の攻撃手段を奪い、自身が有利になったと、ザグボは思った。だが、三刃は右手に装備してある剣を、思いっきり振り上げた。その刃は、ザグボの右腕を斬った。


「グッ!」


「まだまだぁ‼」


 三刃はザグボに接近し、剣で攻撃した。剣は、ザグボの左の太ももに切り傷を与えた。


「何だと!」


 足に傷を負い、ザグボは片膝をついた。三刃はもう一度攻撃しようとしたが、左腕の痛みが彼を襲い、その場で立ち止まってしまった。


「へっ、俺ってば運がいい」


 ザグボは斧を構えた後、魔力を込め始めた。


「見せてやるよ……必殺の一撃……」


 ザグボは高く飛び上がり、三刃に向けて斧を振り下ろそうとした。


「喰らって死ね‼雷砕(らいさい)ッ‼」


 強烈な一撃が、三刃に命中した。三刃は血を吐き、その場に倒れてしまった。


「はぁ……はぁ……」


 三刃の息がある事を確認したザグボは、もう一度斧を構えなおし、三刃に近付いた。


「頑丈な坊主だな……俺の雷砕を喰らって生きてるのは、お前だけだ」


「お褒めの言葉……ありがとよっ!」


 三刃は風を周囲に発生させた。ザグボはただの目つぶしかと思った。だが、それは違っていた。三刃が発生させた風には、刃が混じっていた。それを知らないザグボは、刃の攻撃を受けてしまった。


「無駄な小細工を……」


「無駄じゃないさ」


 ザグボが攻撃を受けている間、三刃は立ち上がり、武器を構えていた。


「……無駄だな。立ち上がったのはいいが……ボロボロじゃないか」


 ザグボの言うとおり、三刃の足は震えていて、傷をおった左腕は情けなく、垂れている。


「お前を倒すまで、ボロボロになろうがズタズタになろうが……関係ないさ」


 三刃は息を吸い、ザグボに向かって走って行った。


「剣で勝負するつもりか……そんな体で何ができる!」


 走ってくる三刃を見て、ザグボは笑いながら叫んだが。三刃は剣を使わず、使えなくなった左腕に魔力を込めた。


「剣を使うのはフェイントか……」


「かかったな」


 三刃は左腕を思いっきり振り上げた。左腕から、巨大な風の刃が発生し、ザグボに向かって飛んで行った。ザグボは斧を振り、刃をかき消そうとしたが、刃の方が強かった。


「そんな……」


 刃を受け、ザグボの腹から横一文字に傷ができ、そこから大量に血が流れた。


「グウッ……」


 ザグボは痛みをこらえ、態勢を整え、斧を構えて三刃に向かって歩いて行った。


「おいおい、あんた死ぬぞ」


「ただでは死なん」


「あー、そうですか」


 三刃は斧に対抗するため、剣の刃部分に魔力を注ぎ、風を発生させた。


「これで終わらせる」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」


 ザグボの斧が三刃を襲った。三刃は剣で斧を振り払い、ザグボの隙を作った。


 がら空きになった胸部分に向け、三刃は剣で突き刺そうとした。だが、ザグボは雷を発生させ、三刃に反撃した。


「小賢しい手を‼」


「貴様も同じようなことを使っただろう!」


 互いの罵倒の後、ザグボは斧の刃に魔力を込め、三刃に向けて振り下ろした。


「……仕方ない」


 三刃は傷だらけの体を動かし、攻撃をかわした。


「そんな傷でよく動く」


「自分でもそう思うよ……」


 今、体を動かしたため、三刃の全身に痛みが走っている。次で仕留める。三刃はそう思い、剣を構えなおした。


 ザグボも、大量に血を失ったため、めまいが起きていた。このまま派手に動くと、死ぬかもと思っていた。


「次で……お前をしとめてやる」


「奇遇だな。僕も同じ事を考えていた」


 三刃とザグボは同時に深呼吸を始め、息を止めた。そして、ザグボが先に動き、三刃に攻撃を仕掛けようとしていた。


「渾身の雷砕を喰らえェェェェェェェェェ‼」


 ザグボは自分の中にある全ての魔力を、自分の斧に込めて、攻撃を放った。斧は地面に当たり、床や壁を粉砕した。


「やべぇ……力出しすぎた……」


 崩れる床と共に、ザグボは落ちて行った。落ちていく中、ザグボの目には、高く飛び上がった三刃が剣を構え、こちらに落ちてくる姿が映っていた。


「……嘘だろ……」


 三刃は先程の攻撃を、ジャンプで回避していたのだ。そして、飛び上がった衝撃で、ザグボに反撃を試みたのだ。


「これで本当に終わりだ‼」


 三刃の剣は、ザグボの脇腹に命中した。ザグボは短い悲鳴を上げた後、気を失った。


「へへ……ちょっとやりすぎたかな……」


 三刃はそう言うと、気を失った。




「……ん……君……三刃君」


 誰かが呼ぶ声が聞こえた。その声で、三刃の目は覚めた。周囲を見渡すと、そこは結社内の保健室だった。


「やっと起きたわね……」


 横を見ると、隣のベッドで横になっている姫乃がいた。姫乃の頬は、少しやせていた。


「姫乃……お前、何があった?」


「魔力を使いすぎた……。三刃君、あれから2日間寝てたのよ」


「2日間……あの後どうなった?」


 三刃はこう聞くと、扉が開き、翡翠が入って来た。


「お兄ちゃん、目が覚めたんだ」


「翡翠……」


「大変だったわよ。姫乃さんは力を使いすぎて倒れるわ、お兄ちゃんは傷だらけだわで、皆慌てたんだから」


「そう……か……なぁ翡翠、あれからどうなったんだ?」


 三刃にこう言われ、翡翠は順を追って説明を始めた。


 まず、三刃と戦っていたザグボは、5階にいた輝海が回収した。


 捕らえられていた人質は、救出した。だが、三刃達が到着するまでの間、何人かが死亡、ザグボにより暴行を受けていた社長は半年間の入院となった。


 戦いの舞台となったビルは、後日改めて工事をすることになった。


 そして、魔法の存在は世間には明るみには出なかった。しかし、ザボッサの蛮行によって破壊されたヘリコプターが周辺に墜落し、爆発したことが大きなニュースとなっていた。


 事件は解決した。だが、その爪痕は深いものとなった。


 話を聞き終え、三刃は心の中で呟いた。


 僕がもう少し強ければ、こんなことにはならなかった。




 数日後、とある文房具店に、3人の男が来店した。


「いらっしゃい」


 店主が客に気付き、愛想笑いで近付いた。


「何かお求めで」


「結社の入口はどこだ?」


 男の一人がこう言うと、店主は笑いながらこう言った。


「何ですかそれ?結社だなんて、私は知りませんよ」


「とぼけるな。貴様から魔力を感じるぞ」


 店主は笑いながら、レジに戻った。


「お客さん、馬鹿な事を言わないでくださいよ……それ以上言うと、消すぞ」


 店主はレジに設置してあるボタンを押し、シャッターを下ろした。そして、魔宝石から2丁のハンドガンを発生させ、装備した。


「テメーら何者だ!」


「……拙者らは……トランプカードの者だ」


 男の一人がそう言うと、日本刀を装備し、店主を切り裂いた。


「あ……ああ……」


 攻撃を受けた店主は倒れる間際、もう一つのボタンを押した。


「何を押した?」


「危険な奴が結社に用がある時に……押すボタンだよ……これで……結社の方にあんたらの存在を知らせることがで……き……た……」


 そう言うと、店主は息を引き取った。男の一人が溜息を吐き、こう言った。


「仕方ない。強行突破と行くか」

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