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男二人、意地の戦い

 ビルから離れた所に、結社が用意したバスがある。そこでは、怪我をした魔法使いや警察官などが集まっていた。ここに、ザボッサとの戦いで力を使い果たした姫乃が、ここで休んでいた。


「姫乃さん、大丈夫かな……」


 夕が心配そうに、こう言った。服部は姫乃の寝顔を見て、夕の方を見た。


「あれだけの魔力を使ったんだ。ばてない方がおかしい」


「巫女って、普通の魔法使いと違うんだよね。もしかしたら、光賀君みたいな光の魔法使いや、僕のような闇の魔法使いよりも、強いのかな」


「使い手によるだろう」


 そんな中、姫乃の目が動いた。


「う……ん……」


「姫乃、気が付いたか」


「姫乃さん、動ける?」


「皆……どうして……」


「戦いの後で、倒れたお前を運んできたんだ。今は安静にしていろ」


 服部はそう言うと、姫乃の布団を直した。


「……あの男は?」


「治療中だ。心配するな、身動きが出来ないように拘束してある」


「何で助けたの?」


「あとで話をさせるつもりだろう。結社もトランプカードとやらの情報が欲しいだろうし」


「……分かった……で、三刃君達は?」


「まだ戦っている。決着がついてないだろう」


 服部はビルを見て、こう言った。




 ビルの5階。


 光賀はザラザと交戦していた。宙には、ザラザが発生させた水の塊が、ところどころ浮いていた。それに触らないよう、光賀は立ちまわっていた。


 あの水が厄介だな。


 戦いながら、光賀はそう思った。


「悪いが、時間はかけない。すぐに始末する」


 ザラザはそう言うと、浮いている水を動かし始めた。水に触れないように、光賀は動き回ったが、左腕に水が当たった。


「弾けろ」


 水が弾け飛んだ。その水ははじけ飛んだ瞬間、氷のつぶてとなり、物凄い勢いで光賀に飛んで行った。


「グアッ‼」


 氷は光賀の頬や右腕に刺さり、傷を受けた。


「浅かったか……」


 ザラザは新たに水を作り、光賀に向かって飛ばした。


「こりゃあ、やばい奴を相手にしちまったな」


 光賀は剣を構え、魔力を込め始めた。何をするつもりだ?ザラザは注意深く、光賀の観察を始めた。


「光の力、見せてやるぜ‼」


 光賀はそう叫ぶと、剣を思いっきり振り下ろした。そこから、巨大な光の刃が発生し、宙に浮いている水を弾き飛ばした。


「その力で水を弾き飛ばしたか。だが」


 弾け飛んだ水は、すぐに凍り、再び光賀に向かって飛んで行った。


「無駄な事だ」


 飛んでくる氷に対し、光賀は地面を殴り、自分の周りに光の衝撃波を放った。それにより、氷のつぶては消滅した。


「……仕方ない。接近戦はあまり好きではないが……行くしかない」


 ザラザは光賀に接近し、左腕からストレートを放った。光賀は体をそらして攻撃をかわし、剣を振り下ろした。ザラザは瞬時に左腕に水の塊を発生し、凍らせて盾にした。


「やるな」


「褒められても何も出ないぞ」


 その後、二人は後ろに下がり、互いの動きを読み始めた。


 数分後、ザラザは水を発生させ、飛ばした。


「また水の攻撃か」


「今度は違う。貴様を殺す」


 宙に飛んだ水は、大きくなり、光賀を襲った。


「何をするつもりだ?」


 光賀がこう言った直後、水は光賀の頭に向かって動き始めた。水は、光賀の頭を包み込んでしまった。


 しまった‼


 光賀はこう思い、水から離れようとした。だが、動きが鈍くなった隙に、ザラザが水を使い、光賀の両足と両腕を凍らせて封じていた。


「さて、上に行こう」


 光賀を倒したと思い、ザラザは上に行ってザグボの戦いに加勢しようと思っていた。それを見て、光賀は力を振り絞り、魔力を解き放った。


「俺はまだ負けちゃあいねェェェェェェェ‼」


「なっ!」


 ザラザは油断していた。今の魔力で発した衝撃で、両手両足を封じていた氷も吹き飛んでいた。


「なんて奴だ!」


 向かってくる光賀に対抗するため、ザラザは右手に水を発生させ、凍らせて刀を作った。


「いいだろう!本気で戦ってやろう‼」


 再び二人の接近戦が始まった。ザラザの氷の刀と、光賀の剣がぶつかった。そのままつば競り合いが発生し、二人は歯を食いしばるほど、力を出して剣を動かし始めた。しばらくし、二人は同時に後ろに下がり、態勢を整えた。乱れた呼吸を整え、いつ動こうか考え始めた。


 先に動いたのは光賀だった。剣を振り上げようと構えをとった光賀に対し、ザラザは右左に動き、光賀の攻撃を乱そうと考えた。ザラザとの距離が近くなったのを確認した後、光賀は剣を振り上げた。だが、ザラザは攻撃をかわし、光賀の脇腹を斬った。


「うがっ‼」


 光賀は痛みをこらえ、背後にいるザラザに向かって剣を振り下ろした。ザラザは氷の刀で防御しようとしたが、勢いよく振り下ろした剣は、氷の刀を破壊し、ザラザの体に傷を付けた。


「グハァッ!」


 互いに傷を受け、片膝をついた。二人はよろめきながら立ち上があり、互いを睨んだ。


「うおおおおおおおおおおおおお‼」


「はあああああああああああああ‼」


 雄たけびを上げて、自分の闘気とやる気を奮い立たせ、走って行った。そして、再び激しい剣の戦いが始まった。何度も刃が互いの体を傷つけるが、それでも二人は倒れようとはしなかった。


 しばらくし、二人の体は傷だらけになっていた。呼吸も乱れ、剣を持っている手も、疲れと斬られた痛みで震えていた。


 二人とも、同じことを考えていた。


 次の攻撃で、あいつをぶっ倒す!


 二人は同時に走り出し、剣を構えて飛びあがった。そして、同時に叫び声をあげ、同時に剣を振り下ろした。


 地面に着地し、二人はしばらく身動きせずにいた。ザラザは息を吐き、上を向いて呟いた。


「ザグボ……すまない……」


 その後、ザラザの体から血が飛び散った。倒れたザラザを見て、光賀は腕を上げた。


「……ハァ……ハァ……勝った」


 小さな声で、勝利宣言をした。だが、その直後に光賀も倒れた。




 数分後、荒い呼吸をしながら、輝海が5階にやって来た。


「くっそ……雑魚の相手さえなければ……」


 ぼやきながら、輝海は扉を開けた。そこには、血まみれで倒れているザラザと、大の字で倒れている光賀の姿があった。


「光賀‼」


「あ……輝海さん。来るの遅いっすよ」


 へへっと笑いながら、光賀はこう言った。光賀の意識がある事を知った輝海はホッとした後、光賀の治療を始めた。


「敵はどうした?」


「一人は今倒した。そこに倒れてる奴がそうです。もう一人は上で三刃と戦っています」


「上か……」


「輝海さん、あそこで倒れてる奴、結構強いので気を失っている間に拘束してください」


「ああ。分かった」


 輝海は倒れているザラザを拘束した後、結社の魔法使いを呼んだ。しばらくし、魔法使いが5階に来た。


「では、我々はテロリストを下まで運んでいきます」


「頼んだ。そうだ、一部の奴はここで俺と待機してくれ。まだ一人いるからな」


 輝海はこう言うと、気を失っている社長の元へ向かった。


「そう言えば、ここ社長の部屋だったな。ひどい目に合ったんだろうな……」




 とあるビル内。テレビを見ている男性が、腹を立てながらこう言った。


「ザグボの奴!こんなに派手にやったら、ジョーカー様にこの事を知られてしまうだろうが‼」


 ここはトランプカードのアジト。ザグボ達に命令をした上司が、目立ってしまったことに腹を立てながら、考え事をしていた。


「これでは、私が始末されてしまう……こうなれば逃げるしか」


「ザチョル。話がある」


 部屋に入って来たのは、長い日本刀を腰に装備した男性だった。ザチョルは慌てて後ろを振り向き、声の主を確認した。


「ああ、キング様‼何用でございましょうか?」


 キングと呼ばれた男性は、腰の刀に手を触れ、こう言った。


「今、ニュースで流れている騒動、黒幕は貴様だな」


「いや……何でそんなことを?」


「スペードの内通者が教えてくれたんだ。貴様とザグボ、ザラザがとある会社を襲い、金を奪い取る作戦を」


「……」


「さらに、ジョーカー様に知らせず、死刑囚力山郷士を脱獄させ、さらに今回の騒動のメンバーに入れた」


「……それは……」


「ジョーカー様はお怒りだ。あの人が起こることなど、滅多にないというのに……」


「……」


「やはり、犯罪者のクズは……トランプカードにはふさわしくない」


「それが一体何だってんだ‼時代遅れの侍野郎‼」


「ジョーカー様は……お主らの処罰を接写に任せた。お主らは……ここで斬り捨てる‼」


 ザチョルはキングに襲い掛かろうとしたが、それより先に刀を抜いていた。そして、刀を鞘に納めた。


「う……ぐ……?あれ?生きて……」


 ザチョルは首を触った瞬間、ザチョルの首は動き出し、そのままザチョルの頭は落ちた。その後、キングは携帯電話を取り出し、連絡を始めた。


「ジョーカー様。ザチョルの処罰を終えました。……はい。テレビで見る限り、3人と他の部下達は結社の魔法使いと戦っているものと思われます。……分かりました。騒動が終わり次第、信頼できる部下と結社に向かいます」

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