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暴走する火竜の巫女

 龍の巫女。普通の魔法使いとは違い、多くの魔力を保持しており、その力が発揮された時、とてつもない力になるという。実際、ジズァーのような悪い魔法使いがその力を求め、龍の巫女を探していることもある。


 だが、巫女の力はそれだけではない。巫女は体内に龍が潜んでいるといわれており、普通の魔法使い達は決して彼女らを怒らせるなと忠告されている。もちろん、輝海達結社の魔法使いも、火竜の巫女である姫乃の扱いには気を付けるように口出しされている。


 輝海と姫乃は知り合って、年が経過している。だが、輝海はあれほどブチ切れた姫乃を見たことないのだ。


「ひ……姫乃……」


 輝海は恐る恐る姫乃に声をかけたが、姫乃には聞こえなかった。


「何だお前?殺し合いの邪魔をするんじゃねーよ」


「うるさい‼」


 姫乃は叫んだ後、刀をザボッサの右肩に突き刺した。


「イチチチ‼やるなぁ……」


 自分の右肩から流れる血を見て、ザボッサは笑みを浮かべた。


「さぁ、どんどん斬りあって行こう……ぜ……」


 だが、姫乃の目を見て、ザボッサの顔から笑みが消えた。


「ひ……ひぃ‼」


 恐怖を覚えたザボッサは、慌てて後ろに下がった。姫乃はゆっくりと歩きながら、ザボッサに近付いて行った。


「どうしたの?殺し合いでしょ?来なさいよ、殺人鬼」


「殺し合いなんてどうでもいい‼俺は逃げる‼」


 慌てながら、ザボッサは二階に逃げた。上に行き、ザグボとザラザと合流しようと思ったのだ。しかし、目の前の道には、姫乃が放った炎が行く手を遮った。


「畜生‼」


 装備している剣で炎を斬ったが、斬っても斬っても炎は再生する。


 こうなりゃやけくそだ‼


 そう思ったザボッサは、炎の中に突っ込んだ。何とか2階にたどり着くことができ、心の中でザボッサは安堵した。その時、目の前にクナイや手裏剣が飛んできた。ザボッサはそれらを剣で叩き落とし、前に走って行った。


「どこだ?俺に殺されたい奴はどこにいる?」


 目を血走らせながら、周囲を探すと、その場に立っている夕の姿を見つけた。


「へっへっへ。坊ちゃんよぉ、そこに突っ立っていると、殺されちゃうぞォォォォォォ‼」


「ハッ‼」


 夕に斬りかかろうとしたその時、ザボッサの目の前に暗黒の空間が発生した。ザボッサの剣は、刃部分が空間に飲まれ、消えてしまった。


「剣が……俺の剣が……俺の剣がァァァァァァァ‼」


 愛刀を失い、ザボッサは深く悲しんだ。そんな中、後ろで足音が聞こえた。


「観念なさい。ここであなたは終わりよ」


 後ろから追って来た姫乃が、剣先をザボッサに向けてこう言った。彼女の後ろには、夕と、天井から降りてきた服部が立っていた。


「へ……へへへ……へへへへへへ」


「……何がおかしいのよ」


 突如、笑いだしたザボッサを見て、姫乃は気持ち悪そうにこう言った。ザボッサは笑うのをやめ、こう言った。


「ここで終わり?終わるのは……お前だァァァァァァァ‼」


 ザボッサは両手を振り下ろし、風を発生させた。風は鋭く巨大な刃となり、姫乃達に襲い掛かった。それに対し、姫乃は腕を振り上げた。その直後、床から巨大な炎が発生し、風をかき消した。


「そんな……普通の魔法使いでも、今の技は相殺できないのに‼」


「私をその辺の魔法使いと一緒にしてたのね。それじゃあ勝てないわけよ」


 姫乃はザボッサに近付き、魔力を発しながらこう言った。


「私は火竜の巫女よ」


 その後、姫乃は自分の背後に、魔力を発生させた。その魔力は徐々に巨大な龍の形になっていった。そして、龍の口が開き、そこから巨大な炎が放たれた。




 結社にいる翡翠達は、この時の様子をニュースで見ていた。


「お姉ちゃん……本気で戦ってる」


 凛子が恐る恐るこう言った。


「あれが……巫女の本気」


 画面越しだが、巫女の本気がどんなものか、翡翠には理解できた。




 姫乃が放った炎は、壁を突き抜けていた。炎が発生したせいで、地面や天井が黒焦げになっていた。そして、炎に直撃したザボッサは、その場で倒れていた。夕が慌てて倒れたザボッサに近付き、呼吸と脈を調べた。


「まだ生きてるよ。あんな炎受けてるのに……」


「体が丈夫な方なのか、それとも魔力で多少防御したんだろうな。とにかく、身動きできないように縛っておく」


 服部が気を失ったザボッサを拘束する中、夕は姫乃の様子を見るため、彼女に近付いた。


「あの……姫乃さん?」


「……どうしたの……夕君?」


 姫乃の声は、いつもよりも低く、元気もなさそうだった。


「なんか調子悪そうだけど」


「大丈夫よ……少し……疲れただけ……」


 この直後、姫乃はその場に膝をついた。慌てた夕は急いで姫乃に肩を貸し、下にいる輝海を呼んだ。輝海はすぐに夕の元に向かい、姫乃の様子を調べた。


「どうやら魔力の使い過ぎのようだな」


「じゃあ、僕達はどうしたらいいんですか?」


「三刃達の援護に向かうか?」


 輝海は少し考えたが、間を取ってこう答えた。


「俺が行く。服部達は姫乃を連れて下に戻ってくれ。この様子じゃあ姫乃はもう戦えないし」


「分かった。では、後は頼む」


 その後、夕と服部は姫乃を連れ、下に降りて行った。


「さてと、上に行きますか」


 そう言うと、輝海は階段を上り続けた。


 4階。輝海はさすがに敵はいないだろうと思っていたが、階段からすぐ近くの扉が開き、中かれ敵が現れた。


「貴様、何者だ!」


「チッ、まだ敵がいやがったのか!」


「おい皆、集まれ‼敵が来たぞ‼」


 扉から、次々と敵が現れてしまった。輝海は慌てたせいで、こうなってしまったと心の中で後悔した。


「仕方ねぇ、こいつらを全員ぶっ倒してから先に行こう」


「一人で多勢を相手にしようってか?」


「俺らも舐められたもんだな」


「たった一人だ‼すぐにぶっ殺そうぜ‼」


 その後、敵の軍団は輝海に襲い掛かった。それに太刀打ちするため、輝海は槍を装備した。




 その頃、上で戦っている三刃と光賀は、ザグボとザラザのコンビプレーに苦戦していた。ザラザが水で周囲を濡らし、ザグボの電撃で感電させる攻撃だ。一見地味な攻撃かと思えるが、三刃と光賀はザラザの攻撃で体が濡れていて、少しでも電撃を喰らうだけでダメージを受けてしまうのだ。


 苦戦する中、光賀はある事を思いつき、三刃に近付いた。


「三刃、こうなれば一対一で戦うように仕掛けるぞ」


「タイマンで勝負か。光賀、お前はどいつを相手にする?」


 会話をする中、ザグボの電撃が襲い掛かって来た。二人は攻撃をジャンプで避け、別々の所に着地した。


「作戦タイムか?そんな時間はとらせないぜ」


 三刃の近くにいるザグボが、こう言った。三刃は光賀の方を見て、こう言った。


「光賀、こいつの相手は僕がする‼水を使う奴を相手にしてくれ‼」


「分かった‼絶対に勝てよ‼」


「ああ‼」


 三刃は風を発生させ、ザグボを上空へ飛ばした。飛ばされたザグボは天井を破壊し、そのまま上空へ飛ばされた。その後、その後を追うように三刃が上空へ飛び上がった。


「ザグボ‼」


 心配したザラザが後を追おうとしたが、光賀が発した光が行く手を阻んだ。


「おっと、お前の相手はこの俺だ‼」


「しまった……仕方ない。貴様を始末した後、あの風を使う小僧を始末してやる‼」


「始末できるもんならやってみな。俺達は強いぜ‼」


 得意げに、光賀はこう言った。




 上空へ飛ばされたザグボは、地面に激突する前に態勢を整え、何とか着地した。


「チッ、面倒なことになった」


 目の前の床から、三刃が飛んで出てきた。


「一対一か。自信があるようだな」


「それなりにお前みたいな犯罪者と戦ってきたもんでね」


「そうか……それじゃあ、久しぶりに楽しめそうだな」


 ザグボは魔宝石から斧を発生させた。三刃も武器を構えなおし、ザグボに向かって行った。

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