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狂気の刃

 結社にて。待機している翡翠達は、周囲から聞こえる連絡を聞いたりして、暇をつぶしていた。


「お姉ちゃん達大丈夫かなー?」


「きっと大丈夫よ。だって火の龍の巫女だもん」


「だよねー」


 回転いすで遊ぶ凛子と、お菓子を食べている凛音はこんな会話をしていた。海人は座禅をしていた。そんな中、慌てた職員が扉を開け、翡翠達がいる部屋に入って来た。


「大変です‼敵の中に、脱走中の死刑囚、力山郷士がいることが分かりました‼」


 力山郷士。その名前を聞いて、翡翠は驚愕した。


 郷士は十年以上前、何十件もの殺人事件を犯した男である。度々、テレビの番組で昔の事件を取り上げる番組では、何回も放映されている。その為、事件発生時は幼かった翡翠でも、そのテレビを見て名前を知る事が出来た。


 だが、警察に捕まり、死刑という判決が出てから、彼がどうなったかは知らないのである。まだ生きているのか、または死刑執行されたのかは伝えられてないからだ。


 そんな彼が、今、三刃達がいる現場で目撃されたという話を聞き、翡翠は驚いた。


「どうしてそんな奴がいるんですか‼」


「……実は二年前、何者かが郷士を脱獄させたんだよ」


「何でそんなことをメディアに知らせなかったんですか‼」


「そんな事、世間に知られたら警察は叩かれる‼それに、脱獄を手伝った奴が魔法使いだって話もあるんだ」


「何で魔法使いが……」


「ここだけの話、実は郷士も魔法を使うんだ」


 そのことを聞き、翡翠の目は点となった。


「だからあいつを捕まえる時、結社の魔法使いも関わったんだ。あいつとの戦いで、何人か死んだ……」


「もしかして、あいつは魔法を使って人を殺してたんですか?」


「そうだ」


 話を聞き、翡翠は慌ててこう聞いた。


「湯出さんはどこにいますか‼」




 輝海はザボッサと戦う中、ある事に気付いていた。


「思い出した。過去の資料にな、お前と同じような戦い方をする奴の事を書かれてたな」


「ほう」


「名前は力山郷士‼てめぇ、二年前に脱獄した力山郷士だろ‼何でトランプカードにいる‼」


「スカウトされたんだよ」


「ったく、何でお前みたいなクソ野郎を‼」


 輝海は電撃を放ち、ザボッサに攻撃をした。だが、ザボッサは剣で電撃を切り払い、攻撃をかき消した。


「おいおいおいおい。飛び道具で牽制すんなよ、せっかくの楽しい殺し合いが出来ないじゃないか」


「ったく、お前は殺しの事しか考えてないのかよ」


「その通り‼」


「頭イカれてるぜ」


 輝海はこう言うと、後ろに下がった。その時、輝海の背後にいた魔法使いや警察官が、銃や魔法を放った。


「お前ら」


「援護します‼」


「輝海さんは今のうち、奴を倒してください‼」


 ザボッサは攻撃を受け、少し怯んだ。だが、ザボッサは奇妙な笑い声をあげ、叫んだ。


「こんなもん、俺には効かねえよ‼」


 ザボッサは風を発生させ、魔法や銃弾を弾き飛ばしていたのだ。そして、ザボッサは大きく飛び上がり、警察官と魔法使いの前に着地した。


「本当の殺しってのを教えてやるぜ」


 嫌な予感を察知した輝海は、すぐに逃げろと叫ぼうとしたが、それより先にザボッサの凶刃が彼らを襲った。最初の一振りで、目の前にいた警官の首をはね、次の二振り目で、横にいた魔法使いの胴体を切り裂いた。


「んんっ~~~~~……殺しって最高‼」


「このイカレ野郎‼」


 輝海の電撃が、再びザボッサに命中した。が、電撃を浴びたザボッサは、気持ちよさそうな顔をしていた。


「この殺意がこもった刺激……いいねぇ……感激だ」


 うっとりするザボッサを見て、輝海は恐怖を覚えた。




 その頃、5階で三刃と光賀と戦っているザグボが、下の騒動に気付いた。


「チッ、仲間がいたのか」


 ザグボはザラザに目で合図をし、近寄った。


「さっさとあのガキを始末して、下に行くぞ」


「了解」


 返事の後、ザラザは水を発生させ、三刃と光賀を濡らした。


「うげぇ‼」


「何だこの水……ただの水か」


「濡れたな。じゃあ……感電しろ」


 ザグボは、大きな雷雲を発生させ、電撃を二人に向け、放った。攻撃方法を察した光賀は、避けるように三刃に伝えたが、それより先に攻撃が二人を襲った。


「グアアアアアアア‼」


「ウワアアアアアア‼」


 感電した二人は、その場に倒れた。


「何だ、大したことなかったな」


 二人を倒し、下に行こうとしたザグボとザラザだが、後ろから風が二人を襲った。


「グアッ‼」


「チッ、まだ生きてたのか!」


 二人が目にしたのは、立ち上がろうとしている光賀と、すでに立ち上がり、武器を構えている三刃の姿だった。


「戦いはまだ始まったばかりだ」


 三刃はそう言うと、ザグボに斬りかかった。




 3階。


 人質を解放している姫乃も、下の騒動に気付いていた。


「人質はどう?」


「全員助けたよ」


 窓の近くで人質の移動を行っていた夕が、姫乃にこう言った。


「下の方が騒がしい。何かあったのだろう」


「服部さんも気付いていたのね」


「当たり前だ。忍びとして、常に周囲の気配を察知するように心がけている」


 その後、3人は集まり、今後の事を話始めた。


「私は下に戻るわ。もし、やばい奴がいたら私が戦う」


「僕は敵をまとめておく」


「私は夕と共に動こう。敵の片付けが済んだ後、三刃達の方に行こう」


「今後の事は決まったわね。じゃあ、動きましょう!」


 会話後、姫乃は下の階に向かい、服部と夕は敵の殲滅を始めた。




 結社にて。


 待機している翡翠達に、結社の職員がこう言った。


「大変です‼ニュースで現場の映像が流れています‼」


 この言葉を聞き、翡翠達や職員達がテレビの電源を入れた。ニュースの映像には、ヘリコプターからカメラを使ったのか、真上からの映像が流れていた。


「まずいです。この映像が流れると、魔法の存在が世間に知られてしまいます‼」


「それってまずいんですか?」


 翡翠がこう聞くと、職員はすぐに質問に答えた。


「ああ。魔法の存在を知っているのは結社に関わりのある警察関係者の一部、そして政治家の一部だけなんだ。もし、魔法の存在が知られると、それを悪用するために悪い連中が動くだろう」


「じゃあ、静かに戦ってってお兄ちゃんに……」


 この直後、ビルの五階部分が爆発し、煙が発生した。


「……お兄ちゃん……」


 映像を見た翡翠は、大きくため息を吐いた。




 ザボッサと戦っている輝海は、うっすらと聞こえるヘリコプターの音を聞き、窓から外を見た。


「マスコミの連中か!こんな所ニュースで流れたらシャレにならねーぞ‼」


「ボソボソうるさいぞ‼」


 輝海の隙を突き、ザボッサが攻撃を仕掛けた。輝海は盾を出し、何とかザボッサの攻撃を防いだ。そんな中、姫乃達の攻撃から逃れてきた敵が、下のロビーにやって来た。


「ザボッサさん!助けてください!」


「恐ろしく強いガキが暴れてて……仲間もみんな捕まってしまって……」


「何だよ。情けねぇな。そんな奴は殺してやる‼」


 そう言うと、ザボッサは仲間を剣で切り裂き、殺してしまった。


「ったく、根性ねぇな」


「てめぇ、命を何だと思ってやがる」


「とくに。何とも」


 ザボッサは外を見ると、にやりと笑った。


「さてと、マスコミの皆様方に挨拶をしますか‼」


 剣先をヘリコプターに向け、ザボッサは魔力を込めた。その行動を見て、輝海は恐ろしい事を察した。


「てめぇ‼ヘリを落とすつもりか‼」


「落とす?違う、真っ二つにするんだよ‼」


 ザボッサは剣を振り下ろした。そこから、強烈な風の刃が発生し、ヘリコプターに向かって飛んで行った。風の刃は、上空のヘリコプターを真っ二つに切断し、消えた。真っ二つになったヘリコプターは、地面に落ち、大爆発を起こした。


「へっへっへ。すげー爆発だな‼何人死んだんだろうな~」


 笑いながら、ザボッサはこう言った。輝海は怒りのあまり、ザボッサに殴りかかろうとした。だが、それより先に、爆炎がザボッサを襲った。


「何だこの炎は‼」


 炎に包まれたザボッサは、炎を払おうとした。だが、炎はなかなか消えなかった。


「クソッ‼なかなか消えねえ‼」


 炎に悪戦苦闘する中、背後から姫乃がザボッサに斬りかかろうとしていた。


「姫乃!」


「輝海さん。こいつは私に任せて」


 ザボッサに斬りつけた後、姫乃はひるんだザボッサを蹴り飛ばした。姫乃が輝海の方に振り向いた。その時の姫乃の目を見て、輝海は寒気を覚えた。その目は、野生の獣のような目をしていた。

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