作戦開始
先に現場に着いた三刃と光賀は、上へ上がる階段を探した。
「非常階段はどこだ?」
「すぐ見つかればいいんだけど」
しばらく探していると、非常階段と書かれたボードがあった。三刃は武器を出し、光賀も続けて武器を出した。
「よし、行くぞ」
「うん」
二人は音を立てずに、階段を上り始めた。
その頃、一回の裏に侵入した姫乃達は、敵の確認と人質の位置を目で確認していた。
「人質は中央に囲まれているわね」
「そのようだな」
「どうするの?」
「先に敵を叩きましょう。敵の数を減らした後、人質を解放」
「分かった」
「ちょっと待って」
姫乃は行こうとする服部と夕を止め、最後にこう言った。
「なるべく騒がずに敵を倒すわよ。ボスと戦う三刃君と光賀君に迷惑がかかるから」
「了解。なら、忍者の出番だ」
服部はそう言うと、飛び上がって姿を消した。
そんなことも知らず、敵達は銃を構え、人質を見回していた。
「異常はあるか?」
「ありません」
「先ほどの女の死体はどうした?」
「処理しました」
「ご苦労」
敵たちのまとめ役はそう言うと、大きな欠伸をした。この様子を見ていた服部は、今がチャンスと思い、移動を開始した。
まず、服部が移動したのは少し離れた場所。敵が見回りをして否かを確認した後、服部は地面に降りた。続いて、物陰に隠れて敵が来るのを待った。しばらくし、二人組が服部の方に向かって歩いてきた。二人は話しているせいか、服部には気付いていない。好都合と思った服部は、魔法で糸を作り、二人の体を縛った。
「少し黙ってもらおう」
騒ごうとした二人組を止めるため、服部は魔力を込めて攻撃した。その後、気絶した二人のうち、自分の服のサイズを合いそうなものを選び、装備を始めた。そして、二人をゴミ箱へ隠した。その後、服部は移動を再開した。
「おい、ちょっといいか?」
歩いている中、敵の一人に声をかけられた。
「はい」
服部は正体が気付かれないよう、声を低くして返事した。
「便所に行きたいんだ、俺と見張りを代わってくれないか?」
「あ……ああ」
服部はそう返事をすると、ロビーへ向かった。
ロビーへ着き、服部は正体が気付かれないように見張りを始めた。そして、相手に悟られないように攻撃の準備、人質解放の準備を始めた
その頃、三刃と光賀は非常階段を上り続けていた。
「ここで3階か……」
三刃が出入り口の看板を確認し、光賀に伝えた。息を吐いた後、光賀は上を見た。
「確か、4階が敵の休憩場所って言ってたな」
「ああ。で、5階に黒幕と社長がいる」
話を終え、三刃は一呼吸した後、光賀にこう言った。
「行こう。もし、姫乃達が先に動いたら黒幕が動く」
「ああ。人質が解放できなくなる。急ごう」
二人は武器を構え、梯子を上って行った。
4階までの道のり、二人の目の前に敵が現れた。
「何だ貴様らは‼」
「警察か?それとも結社の奴か?」
二人は何も言わず、敵を斬りつけた。倒れた敵の胸から、通信機が落ちた。
「念のため、潰しておこう」
三刃は通信機を風で破壊した。
ロビーにて。服部は頃合いを見ながら、いつ姫乃達に合図を送ろうか考えていた。そうしているうち、敵の話声が聞こえた。
「そろそろやばいって、あの人を縛ってる鎖、そろそろ壊れそうだぞ」
「マジか……下手したら俺らが殺されるんだよなー」
「ここに来るまで、何人死んだんだっけ?」
「4、5人じゃね?俺、まだ死にたくねーよ」
「つーか、何でジョーカー様はあんな奴を仲間にしたんだ?」
「いや、この事はジョーカー様は知らないらしい」
「マジか!」
「おい、じゃあこの計画もさ、あの人は知ってるわけ?」
「さぁ?そこまでは分からん」
と、敵達は話に夢中になった。服部は気付かれないようにその場から離れ、姫乃達の元へ向かった。
「服部さん、お疲れ」
「大丈夫だった?」
「大したことはない」
姫乃と夕の返事に答えながら、服部は着ている服を脱いだ。
「さて、そろそろ始めるとしよう」
「ええ。いいわ」
姫乃の言葉の後、服部は魔力で作った紐を動かした。
「なっ……何だ‼」
「体が勝手に‼」
「た……たたた……助けてくれ‼」
紐は敵の体を縛り、そのまま上に吊り上げて行った。
「今よ‼」
姫乃の合図で3人は動き出し、人質の救出を始めた。
「おい、早く連絡を‼」
「そうはさせん」
服部はクナイや手裏剣を投げ、敵に攻撃をした。夕の連絡を聞いた輝海たちが、一斉にロビーに入って来た。
「人質の皆さんはこちらから出て行ってください‼」
姫乃によって解放された人質は、輝海の案内で、外に出て行った。
「さて、次は2階よ」
姫乃達は階段を上り、2階にいる人質の救出へ向かった。
5階。
「ん?なんだかうるせーな」
ザグボが立ち上がり、部屋から出ようとした。だが、ザラザがザグボを止めた。
「何だよ」
「非常階段で待機している奴に連絡が出来ない」
「……虫けらがこっちに来るのか」
「かもね。仲間が人質を解放。で、残った奴らが俺たちを相手にする……」
「ハッ‼上等じゃねーか‼」
ザグボが笑い声をあげたその時だった。いきなり非常階段の出入り口の扉が開き、突風が部屋に流れ込んできた。
「……虫けら共が来たか‼」
「テロリスト共に虫けらって言われたくないね」
三刃が部屋の中に入り、こう言った。
「さぁ、観念して俺達に捕まるか、俺達にぶっ倒されるか、どちらか決めろ」
続けて、光賀がこう言った。
「……2対2か……」
「俺も頭数に入っているのか……仕方ない、俺も戦うよ」
ザラザは溜息を吐き、こう言った。ザグボはトランシーバーで、下の階にいる部下に連絡を取った。
「お前ら、休憩はおしまいだ‼お前らは下で暴れてる奴らを始末しろ‼俺とザラザは他の奴を相手にする‼」
トランシーバーの電源を切り、ザグボはそれを地面に叩きつけた。
「さぁ、始めようぜ‼」
三刃、光賀の戦いが始まろうとしている頃、鎖で縛られているザボッサはうめき声をあげていた。
外では激しい戦いが始まっている。なのに、自分は鎖で縛られている。外の音を聞くうち、ザボッサの殺人衝動がどんどんと、強くなっていく。
ああ、殺したい。殺したい殺したい。
その思いは、次第に強くなっていき、ついに爆発した。
ザボッサは手足を縛っていた鎖を無理やり破壊し、自由を得た。
「うっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
歓喜の雄たけびを上げた後、ザボッサはズボンに入っていた魔宝石を手にし、魔力を込めた。魔宝石から、二本の刀が現れた。
「さぁ……殺戮ショーの始まりだぜェ‼」
ザボッサは扉を蹴り開け、ロビーへ向かった。
「あ‼ザボッサさん‼」
狂ったように走っているザボッサを見て、敵の一人が声を出した。
「ダメですよ、ザグボさんの許可なく出てしまったら‼」
「うるせぇ‼俺の勝手だカス‼」
と、ザボッサは注意した敵の首を斬ってしまった。頭を失った首から流れ出る血が、ザボッサにかかった。
気持ちいい……。
ザボッサはこう思いながら、血を浴びていた。しばらくし、ザボッサは再び動き出した。
「ヒィッ‼何だあいつは‼」
「血まみれじゃないか‼」
逃げ出そうとしている人質が、血まみれのザボッサを見て驚き、足を止めていた。
「早く‼早く逃げてください‼」
輝海は大声で叫んだが、人質は恐怖で動けなかった。
「たくさん人がいる……じゃあ……たくさん殺せる‼」
狂気の笑みを浮かべ、ザボッサは人質を襲い始めた。
「何だこいつ‼」
輝海は槍を出し、ザボッサの攻撃を受け流し始めた。
「あは、あはは、あはははははははははははは‼お前強いな‼いいぜ、俺と殺し合いをしようぜ‼」
「お前みたいな野郎は相手にしたくねーんだよ‼」
輝海はそう言うと、槍から電撃を発した。電撃はザボッサに命中したが、ザボッサは笑みを見せ、こう言った。
「気持ちいい……」
とんでもない奴がいる。輝海はそう思いながら、冷や汗をかいた。