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巨悪の影

 夏休みが終わり、2学期になった。三刃は欠伸をしながら登校していた。海での戦いの後、三刃は毎日モンスターと夏休みの課題と戦っていた。その為か、今まで以上に体も精神も付かれていた。


「あ~……かったりぃ~」


 横にいる宇野沢はだるそうに呟いた。


「お前いつも夏休み明けにこう言うよな。中学の頃から変わってねーな」


「お前だってそうじゃねーか。というか、いつもよりなんかだるそうに見えるけど」


「気のせいだろ」


「よう二人とも‼」


 後ろから光賀の声が聞こえた。振り向くと、そこには真っ黒に焦げた光賀が立っていた。


「光賀、お前どこか行って来たのか?」


「いや、昨日家で料理に挑戦しようとしたんだけど、コンロが爆発してこうなった」


「怪我一つもないってところが奇跡だな……」


 三刃は光賀を見て、こう言った。




 放課後、三刃は帰ろうとした時、姫乃に呼ばれた。


「どうした?」


「輝海さんから連絡が来たのよ。放課後に来てくれって」


「何か用事かな」


「とにかく、服部さんと光賀君と夕君にも伝えて。湯出宝石店で合流ね」


「ああ」


 その後、三刃は光賀たちに話をし、共に湯出宝石店へ向かった。そこにはすでに姫乃の姿もあり、凛子と凛音、翡翠と海人もいた。


「皆集合したんだ」


「それだけ大きな事件が起きたんだ」


 湯出宝石店から輝海が現れ、こう言った。


「話は結社の中でする」


 三刃達は会議室に移動した。そこにはすでに何人か結社の役員がそろっていた。輝海は三刃達に開いている席に座るように促した後、話を始めた。


「今、トランプカードという魔法犯罪組織が立てこもり事件を起こした」


「トランプカード?何ですかそいつら?」


 三刃がこう聞くと、輝海は資料を渡し、話を続けた。


「トランプカードは大規模な魔法犯罪者の集まりだ。今まで大きな事件を繰り返し起こしてきた」


「でも、僕達そいつらと戦ってはないですよね」


「実は、三刃君達が強くなるまで、できるだけトランプカードと戦わないようにしてきたんだ」


「……それだけ強い奴がいるってことですか?」


「ああ。話を戻そう。トランプカードは静丸駅から数百メートルほど離れた所にある会社が入っているビルを占拠。従業員と社長を人質にして立てこもっている」


「今やっているこのニュースの事だよ」


 湯出がテレビをつけてこう言った。テレビのニュースでは、テロリスト集団がビルを占拠したと騒いでいた。


「中にいるトランプカードの数は約三十人、全員魔法使いでかなりの魔法の使い手だ。それに、そのうちの三人が黒幕との情報が入っている」


「誰からの情報何ですか?」


「現場の警官だ。一部の警官には魔法使いの存在を知らせてあるんだ。それと、政府の一部の人間にも魔法使いの存在は知らせてある」


「じゃあ、その政府の人が……」


「俺達に頼んだってわけだ」


 輝海はテレビの電源を消すと、三刃達の顔を見回した。


「今回の作戦には俺達にも力を貸してほしいと話が出ている。上の連中は三刃君達の実力を理解している」


「じゃあ、僕達は上に認められたってわけですか?」


「そういう事だ」


 しばらくし、三刃がこう言った。


「行こう皆。あいつらをやっつけよう」


 三刃の声に反応し、姫乃達は立ち上がって声を出したが、輝海が三刃達を抑えた。


「待て皆。これからチーム分けをする」


 その後、輝海の提案でチーム分けをすることになった。



 トランプカードと直接戦う戦闘チーム。


 トランプカードに捕らえられた人質を助ける救護チーム。


 現場に向かった二チームに指令を送る裏方チーム。



 以上の三つに分かれることになった。


「時間がないから、話し合いは手短に頼むぞ。二十分後に戦闘チームと救護チームは駐車場に集合‼」


「分かりました」


 輝海が部屋から出た後、三刃達は話し合いを始めた。


「戦闘チームと救護チームの人数を決めよう」


「戦闘チームは二人、救護チームは三人。後は裏方でいいと思うわ」


 姫乃がこう言うと、光賀が口を開いた。


「じゃあ戦闘に慣れている俺と三刃が戦闘でいいんじゃないか?」


「三刃君と光賀君が?大丈夫なの?」


「僕は平気だ。誰であろうと相手になってやる」


「いざとなったら俺の光魔法で何とかする」


「……そうだな。二人が適任だと私は思う」


 服部がこう言った。続いて、夕も話を始めた。


「僕は人質を救いたい。闇の力で人が助かるなら、喜んでこの力を使いたい」


「うむ。その気があるならいいだろう」


「じゃあ私達も行くわ‼」


 手を上げて凛子がこう言ったが、三刃がそれを阻止した。


「それは止めてくれ」


「どうしてよ?」


「僕達がやられた時、誰が代わりに行くんだ?」


「私達」


「そうだ。僕より戦いの経験が多い凛子と凛音、それに風龍の巫女の翡翠、そして忍者の海人。皆優秀だ。もし、僕達がやられても十分に戦える」


「……保険ってことね」


 凛音がぼそりとこう言った。


「そうだな」


「私はお兄ちゃんに言うとおり、ここに残るわ」


「俺も三刃の兄ちゃんの案に賛成だ」


 翡翠と海人がこう言った。凛子は少し考えた後、こう言った。


「いいわ。今回は仕方ないから三刃の言う事に従うわ‼」


「悪いな、凛子」


 三刃は凛子にこう言うと、何かに気付いてこう言った。


「お前、僕の方が年上なんだから、さんを付けろよ」


「結社で働いてるのは私の方が上だもんね~」


「ったく……」


 そして、話し合いの結果が出た。



 戦闘チーム 三刃、光賀。


 救護チーム 姫乃、服部、夕。


 裏方チーム 翡翠、凛子、凛音、海人。



 その後、三刃達は駐車場へ向かった。


「話はまとまったか」


「はい」


「よし、じゃあ皆、これを耳につけてくれ」


 輝海が持ってきたのは小さなイヤホンだった。


「イヤホンですか?片方しかないですけど」


「音楽を聴くためじゃない、通信用だ。こいつさえあれば俺と連絡できるし、裏方チームとも連絡ができる」


「似たようなのがあった気がしますが」


「あれよりも高性能だ。それを付けたら、車に乗り込め、すぐに行くぞ」


 イヤホンを装備し、三刃達は車に乗り込んだ。三刃達が座ったのを確認した後、輝海は車を発進させた。




 立てこもり現場のビルにて。一階のロビーには、人質達が座らされていた。


「た……助けてください……助けてください」


「うっせーな‼おめーらの社長が金をよこしたら助けてやるって言ってんだろうが‼」


 トランプカードの一人が、泣き言を漏らした人質を蹴り倒した。


「黙れ、黙れよ雑魚がッ‼」


「いい加減にしろ」


 別の団員が、人質の頭を踏みつけている団員を吹き飛ばした。


「す……すみません……ザグボさん……」


 ザグボと呼ばれた団員は、周囲を見回した。


「……警察がうるさいな……」


「仕方ないですよ。俺達は犯罪者なんですから」


 階段から声が聞こえた。ザグボはザラザと呼んだ後、ザラザに近付いた。


「で、金はどうだ?」


「譲る気はないみたい。どうするザグボ?」


「もう少し脅してみろ。そうだな、指を一本ずつ切り落としてみろ。それか、片目を潰せ」


「分かったよ。おっそろしい事を考えるねぇ」


 そう言いながら、ザラザは戻って行った。すると、団員の一人が銃を乱射し始めた。


「おい、暇だからって銃を乱射するな」


「す……すみません」


「これはジョーカーには内緒なんだ。もし、この事件の事がばれたら……俺達は始末されるだろう」


「でも、これは上から言われたことなんですよね」


「そうだ。ま、あの人は身勝手だからジョーカーの言う事なんて聞いてないと思うが」


 その時、人質の女性が立ち上がり、逃げようとした。それを目撃したザグボは、電撃を発生させた。


「こ……このままじゃあ殺される!助けて、誰か助けて‼」


「逃さん」


 ザグボが発した電撃は逃げる女性の後を追い始めた。物凄いスピードで動く電撃と女性の距離は徐々に短くなっていき、しばらくして電撃は女性に命中した。


「ギャアアアアアアアアアアアアアア‼」


 女性は感電しながら悲鳴を上げた。そして、感電が静まると、そのまま倒れた。


「いいか?外に出ようとする人質がいたら、容赦なく殺せ。その場で泣きわめいてる奴は無視しておけ」


「は……はぁ……」


 その後、ザグボは二階に上がり、人質の様子を見た。


「何も異常はないな」


「はい。今のところはありません」


「そうか。変な奴がいたら容赦なく殺せ。それと、非常口から出ようとする奴も殺せ」


「了解しました」


 その時、下からドスンと音が聞こえた。


「次はあいつか……」


 ザグボは溜息を吐き、下に戻った。一階のロッカー室にて。そこに椅子に座らされ、鎖で縛られた男が立っていた。男は椅子を何度も揺らし、音を立てていた。


「うるさいぞザボッサ」


 ザグボが近付くと、ザボッサはザグボを噛みつこうとした。攻撃を察ししたザグボは後ろに下がり、こう言った。


「お前の出番は当分先だ」


「早く……早く鎖をほどいてくれ……人を……人をぶっ殺してぇ……早く人を殺したい‼俺の剣で頭を叩き割りたい‼俺の剣で心臓をえぐりだしたい‼」


「静かにしろ」


 ザグボは弱い電撃をザボッサに放ち、気絶させた。


「ふー、殺人衝動がある奴の世話は大変だな……」


 そう言うと、ザラザは上の階に戻って行った。


 ビルの五階。そこにはザラザと椅子で縛られている社長がいる。ザグボは部屋に入ると、社長に近付きこう言った。


「社長さん。いい加減金をくださいよ。早くくれれば痛い目に合わずに済んだものを」


 そう言うと、近くにあったナイフを社長の手の甲に刺した。


「イギャアアアアアアアアアアアア‼」


「もし、他に変なことを考えてたら、殺しますよ?俺、さっき外に出ようとした女を殺したんでね」


 ザグボはそう言った後、社長の腹に強い蹴りを入れた。蹴りを喰らい、社長は嗚咽をした後、気絶した。


「ったく、立派なのはそのふとった腹だけかよ」


 呆れたザグボは近くにあった椅子に座り、欠伸をした。ザラザは近くの壁に寄りかさり、ザグボに話をした。


「ザグボ、一人殺したんだ」


「ああ。逃げようとした」


「処理が面倒だから、あまり殺さないでよね」


「はいはい」


「それより、またザボッサが暴れたの?」


「ついさっきな。今は気絶してるから大人しいけど」


「頭のねじがぶっ飛んだ死刑囚の世話は大変だね。ザボッサの事、ジョーカーに言ってないんでしょ」


「そんな事ジョーカーに言ってみろ、どんな目に合うか分からねーぞ」


「殺されるかもね」


「恐ろしい事を言うなよ。ま、いざとなったらザボッサを殺せばいいだけさ」


 その時だった。ザグボは何かを察し、急いで窓から外を見渡した。


「どうかした?」


「魔力を感じた」


 ザグボは社長に近付き、顔面を殴った。


「ふぐっ‼うう……」


 目を覚ました社長の襟元を掴み、ザグボはこう聞いた。


「誰が結社の連中を呼んだ?」


「結社……何の……事だ?」


「とぼけんじゃねぇぞ豚野郎が‼」


 怒ったザグボは社長を椅子に叩きつけ、顔面を殴り始めた。


「話せ豚野郎‼何で結社の連中がここに来てんだ!」


「私は嘘を言っていない……結社とは何のことだ……」


「黙れ豚野郎が‼このままぶっ殺して切り刻んで生姜焼きにしてやろうか‼」


「や……止めてくれ‼殺さないでくれ‼」


「うるせーよ豚野郎‼もう頭に来た……ぶっ殺してやる」


 ザグボは宝石を取り出し、手斧を出現させた。社長は悲鳴を上げ、命乞いを始めた。


「殺さないでくれ‼金はやる。いくらだ?いくらでも出してやる‼」


「今は金なんて要らねー。お前の命をよこせ‼」


「ザグボ、落ち着きなよ」


 ザグボの首元に、水が発生していた。我に戻ったザグボは手斧を戻し、先ほど座っていた椅子に戻り、座った。


「すまねぇなザラザ。また熱くなっちまった」


「それ、悪い癖だよね。直す気ある?」


「努力はしてる。それよりも、結社の連中が来やがった」


 ザラザは考えているのか、唸り声をあげていた。そして、こう言った。


「やるしかないんじゃない?ま、地の利はこっちの方が有利だよ。人質もいるし、どのフロアにも下っ端はいる。使いたくないけど、いざとなったらザボッサもいるし」


「……そうだな。少し落ち着くか……」


 ザグボは大きく深呼吸し、目をつぶった。


「少し寝る。騒動が起きたら起こしてくれ」


「うん」




 輝海は車を現場から少し離れた所に止めた。


「いいか?今回の任務は人質の奪還とトランプカードを倒す事。それと、今はマスコミの連中が現場を囲んでいる。なるべく被害を出さずに戦うんだ。そして、魔法使いがこの世にいると言う事を知らされるなよ」


「はい。分かりました」


 三刃の返事の後、三刃と光賀は先に現場に向かった。続いて、姫乃達救護チームが現場に向かい、輝海はその後について行った。


 その頃、気絶しているザボッサが目を覚まし、にやりと笑った。


「魔法使いだぁ……魔法使いがこっちに来るぞぉ……ケケケケケ……早くこっちに来い。ぶっ殺してやるよぉ」

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