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番外編 イギリスの魔法使い

 今回から番外編に入ります。三刃達が週白訓練でいない間、翡翠達の周りで起きていた事件の話をします。

 三刃たちの住む町から、近くの空港にて。輝海が腕時計を見ながら搭乗口を見ていた。


「そろそろ来ますかね?」


 横にいた湯出がこう聞いた。


「もう降りた頃だろ。待っていれば来るはずだ」


「すみません。もしかしたあなた達が日本の結社の人達ですか?」


 女性が二人に話しかけてきた。輝海は女性を見た後、手帳を開き、こう聞いた。


「えー、あなたがイギリス支社からのセミレット・ピーターさん」


「横にいるのが、ユアセル・ピーター君だね」


「ガキ扱いするな。僕は立派な魔法使いだ」


「こらユアセル。そんな態度を取らない」


 セミレットはユアセルの頭を叩き、こうしかった。


「ごめんなさい。この子、やたらプライドが高いんですよ。それで、自分以外の魔法使いは自分より弱いって思ってるらしくて」


「思っていない。ただ、僕の方が役に立つと確信してるだけだ」


 その直後、セミレットの拳骨が、ユアセルを襲った。


「ここで立ち話も何ですから、結社の方へ向かいましょう」


「ここで活躍している魔法使いたちも待っていますので」


「分かりました」


 その後、輝海達は湯出の車に乗り、湯出宝石店へ向かった。




 結社の会議室。輝海に呼び出された翡翠達は椅子に座って待っていた。


「まだかなー」


「早く来ないかなー」


 回転いすで回りながら、凛音と凛子は輝海達の到着を待っていた。その横で、海人はおとなしく座って待っていた。


「海人君、おとなしいね」


「いや、結構緊張している。異国の人間と会うなんて、初めてだ」


 翡翠は海人の足を見ると、激しく貧乏ゆすりをしていた。


「輝海さんが言ってたよ、今日来る人達は日本語がわかるって」


「そうなのか」


 海人の貧乏ゆすりが少し収まった。しばらくし、輝海が会議室に入って来た。


「待たせてごめんね」


「おっそーい」


「何してたの~?」


「今やっとついて走って来たんだよ」


 息を切らせながら、湯出が走ってきた。


「湯出さん、イギリスから来た魔法使いの人達ってもういるの?」


「ああ。ちょっと待ってね」


 姫乃の質問に返事をした後、湯出は廊下に出て行った。しばらくし、セミレットとユアセルが会議室に入って来た。


「紹介するよ。こちらがセミレット・ピーターさんで、隣が弟のユアセル・ピーター君」


「よろしくお願いします」


 セミレットは頭を下げて挨拶をしたが、ユアセルは何も言わず、そっぽを向いていた。


「こらユアセル、挨拶しなさい」


「格下共に下げる頭はない」


 この発言を聞き、凛音と凛子は席を立った。


「今なんて言ったチビ助!?」


「下げる頭がないなら、切り落とされる頭はあるよね?」


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」


 翡翠が怒り狂いそうな二人をなだめる中、海人が姿を消した。


「何だあいつ、何も言わず去りやがって」


「去ってはいないさ」


 ユアセルの後ろから、海人の声が聞こえた。ユアセルは驚き、後ろを振り向こうとしたが、海人が先に羽交い絞めをしていた。


「グッ……がぁっ……」


「見た目で人を判断しないようにな」


「おま……え……!」


 ユアセルは力ずくで海人から離れたが、息が上がっていた。


「ここでやるか?」


「無駄だ、同じ結果だ」


 海人は元の席に座った。


「お前より強くなってやるからな」


 ユアセルはそう言って、セミレットの横に戻った。


「全く、初日からケンカしないの」


 セミレットは呆れながら、こう言った。


「じゃ、自己紹介から始めようか。それじゃあ翡翠ちゃんから」


「はい」


 翡翠は席を立ち、自己紹介を始めた。


「私は護天翡翠と言います。風の魔法を主に使っています。それと、風龍の巫女です」


「巫女?あ!もしかしてドラゴンプリンセスの事ね」


「ドラゴンプリンセス?」


「あー。海外の方じゃあ龍の巫女はドラゴンプリンセスって言われてるんだ」


 湯出の言葉を聞き、姫乃は納得した。


「ドラゴンプリンセスか……弱そうに見えるけど」


「ユアセル?」


 セミレットの視線を感じ、ユアセルは翡翠から視線を外した。


「じゃあ次は凛音ちゃんね」


 翡翠は慌てながら凛音に自己紹介を促したが、凛音は嫌な顔をしてこう言った。


「私は凛音。数日間よろしくね、自尊心の塊君」


「ユアセルだ」


「次は私ね。私は凛子。凛音とは双子の姉妹よ。よろしくね、100%自尊心」


「ジュースみたいに言うな」


「次は俺だな」


 海人が立ち上がり、咳払いをして自己紹介を始めた。


「俺は黒井海人。魔法使いと言われているが、俺は忍者だ」


「忍者?ああ、日本でいうスパイかどうりで強いわけだ……」


「これで、自己紹介は終わったね。それじゃあ、今日はこれで解散……」


 湯出の会話の途中、サイレンが響き渡った。


「モンスター出現!数は数十体、獣型と鳥獣型です!」


「よし分かった!」


「僕が行く」


 と言って、ユアセルは外に飛び出してしまった。


「あーもう!ユアセルったら……」


「私が止めてきます!」


 翡翠は会議室を出て、外に上がった。


「全くユアセルったら。ごめんね、迷惑かけて」


 後ろから、セミレットの声がした。翡翠はセミレットの声に気付き、話しかけた。


「セミレットさんも来るんですね」


「初日だっていうのに、これ以上あなた達に迷惑をかけたくないもの」


 そう言って、セミレットは西洋剣を出した。翡翠もガンブレードを装備し、周囲を飛び始めた。すると、翡翠の目に鳥獣型のモンスターが飛んでいるのが映った。


「いた!」


「行きましょう!」


 二人は急いで、モンスターの所へ向かった。到着した時には、すでにユアセルが何匹かモンスターを倒していた。


「姉さん、あと翡翠って奴!あとは僕がやるから下がってろ!」


 と、ユアセルは息を切らせながらこう言った。その言葉に反し、翡翠とセミレットは武器を構えた。


「粋がるのもやめなさい。息が上がってるじゃないの。あとは私と翡翠さんに任せて、あなたは退きなさい」


「僕一人で十分だ‼」


「退きなさい」


 セミレットに睨まれ、ユアセルは渋い顔をして去って行った。


「さぁ、行きましょう」


「はい‼」


 まず、翡翠は少し離れた所にいる鳥獣型モンスターを撃って攻撃した。魔法の弾丸は鳥獣型モンスターの胴体や羽を貫いたが、倒すまでにはいかなかった。翡翠は他のモンスターを足場にして、そのモンスターに接近した。


「はあああああっ‼」


 武器を剣の形にし、鳥獣型モンスターに斬りかかった。攻撃を受けた鳥獣型モンスターは、悲鳴を上げながら落ちていき、地面に激突すると同時に消滅した。


「すごいわね……」


 翡翠の戦闘を見ていたセミレットは、驚きの声を出した。その時、モンスター達が彼女の周りに集まった。


「さて、私も頑張らなくちゃね」


 セミレットは襲ってきたモンスターの攻撃をかわし、西洋剣でモンスターの首をはねた。続けてそのはねた首を別のモンスターに向けて、蹴り飛ばした。

 モンスター達が動揺する中、セミレットは西洋剣を握りなおし、モンスターに斬りかかった。攻撃する中、上空から鳥獣型モンスターが、セミレットに襲い掛かった。それに察したセミレットは、右手の人差し指を上空に向けた。


「発射」


 セミレットの人差し指から、白い閃光が発生した。閃光を受けたモンスターは、そのまま塵となって消えた。


 一方、翡翠は鳥獣型モンスターの群れと戦っていた。空からくるモンスターに対し、翡翠は銃で応戦していた。


「あーもう、数が多すぎる‼」


 翡翠は武器をしまい、目をつぶって魔力を練り始めた。しばらくし、翡翠の周りに風が発生し、徐々に渦が出来てきた。


「一気に倒す‼」


 翡翠の周りに、竜巻が発生した。竜巻は周囲にいたモンスターを全て飲み込んだ。竜巻の中は見えない風の刃が発生しており、その刃によって、モンスター達は切り刻まれていった。


「これで全部倒したわね」


 セミレットは周囲を見渡し、こう言った。翡翠はそうですねと返事をし、セミレットの所に向かった。


「それじゃあ戻りましょう。ユアセルが待ってると思うし」


「ですね」


 その後、二人は結社へ戻って行った。




「ただいまー」


 翡翠とセミレットが結社に戻ったが、中は険悪なムードで包まれていた。どうしたかと思い、翡翠は近くにいた海人に話を聞こうとしたが、凛子の怒声が響き渡った。


「大体察した」


「そうか……」


「ごめんね、ユアセルが迷惑をかけて」


 セミレットは喧嘩中の凛子とユアセルの元に近付いた。


「ざっけんなこのミジンコ砂利野郎がァァァァァァァァァァァ‼何上から目線で偉そうに物事ほざいてんだ?結局お前一人じゃかなわないから逃げて帰って来たじゃねーかこの野郎がァァァァァァァァァァァァァ‼」


「僕一人で十分だったんだ‼姉さんや翡翠って奴がいなくても、十分戦えた‼」


「止めなさい、あなたはまだ未熟よ‼」


 セミレットの拳骨が、ユアセルに命中した。翡翠も凛子をなだめ、喧嘩を収めた。


「どうしてこうなったの?」


「ユアセルが偉そうな態度をとってたの、凛子ちゃんが気に食わなかったみたい」


 凛音は翡翠にこう説明した。その後、凛子とユアセルのけんかを止めた後、凛音と海人は怒り狂いそうな凛子をなだめていた。翡翠はユアセルと話をしようと思い、ユアセルの部屋に入ろうとした。扉の前に着き、翡翠は軽くノックをした。


「誰?」


 中から、ユアセルの声がした。


「私。護天翡翠よ」


「何か用か?」


「話しましょ?」


 しばらくの沈黙の後、扉が開いた。


「どうぞ」


 翡翠が部屋に入ると、ユアセルは布団の上に座るように促した。


「座るとこ、ここしかないから」


「分かった」


 翡翠がユアセルの隣に座り、話を始めた。


「さっきの戦いはお疲れ様」


「何がお疲れだよ。後は姉さんとお前がやったくせに」


「まぁ、モンスターが全滅したんだから、いいじゃない」


「僕一人で十分だった」


 その時、翡翠はユアセルが左腕を隠すように服を引っ張っているのに気が付き、腕を触ろうとした。


「触るな」


 翡翠は察した。先ほどの戦いで、怪我をしたのだと。


「ちょっと待ってね。回復の魔法使ってみるから」


「できるのか?」


「先輩から習ったの。まだうまくできないけど」


 翡翠はユアセルの左腕の治療を始めた。


「……あいつとはえらい違いだ」


「凛子ちゃんの事?」


「そうだ。あいつ、僕より弱いと思うのに」


「どうしてそう思うの?」


 翡翠にこう聞かれ、ユアセルは少し考えてこう言った。


「僕は小さいころからモンスター達と戦ってきた。モンスター退治に対しては、他の魔法使いよりも腕があると思う」


「その時、他の人はいなかったの?」


「……姉さんや、イギリス支社の人がいた」


「それじゃあ、ユアセル一人の力じゃないんだね」


「何だと?」


「一人じゃあ無数のモンスターと戦えないよ。私だって、一人じゃあきつい。凛子ちゃんや凛音ちゃん、海人君の力を借りないと、戦えない時がある」


「それは弱者の言葉だ」


「人は皆弱い生き物よ。ううん、生き物は皆弱いと思う。誰かいないと、生きていけないし、戦えない」


「……そんなもんか……」


「そんなもんよ」


 ユアセルの治療を終え、姫乃は立ち上がった。


「それじゃあ、そろそろ行くね。そうだ、後でちゃんと凛子ちゃんに謝ってよね」


「……翡翠」


 名前を言われ、翡翠は驚きながら、ユアセルの方を振り向いた。ユアセルは恥ずかしいのか、うつむきながらこう言った。


「また……来てくれ」


 その返事に対し、翡翠はこう言った。


「うん。分かった」




 その頃、セミレットは輝海と湯出と話をしていた。


「調べた結果、あいつらはここから離れた岩場の所にいる。どうやら、岩場の一部を改造し、アジトを作ったんだろう」


「多分、そのアジトで何かを行っている。ここからじゃあ見れないが、時折変な色の煙が出ている」


「さらに、この近辺の魔法使いが行方不明になる事件も多発している」


 輝海と湯出の話を聞き、セミレットは立ち上がった。


「情報ありがとうございます。恐らく、奴らは日本で魔法使いを拉致し、モンスターに改造しようと考えています」


「魔法使いをモンスターに?まさか奴らはすでに……」


「イギリス支社に属している魔法使いが、すでに奴らの手にかかり、何人か死亡しました」


「まさか、とんでもない奴がこのタイミングで日本に来るとは……」


「奴らを倒すために、私とユアセルが来日したんです」


「そうだったな……表向きは三刃君達の穴埋め。本当の予定はイギリスの魔法犯罪者、カベロとその仲間の討伐」


 セミレットは輝海の言葉を聞き、頷いた。


「明日、奴らのアジトに攻撃してきます」


「じゃあ俺達も付いていくぞ」


「……いえ、私一人で行きます。奴らは仲間の……親の仇でもありますので‼」


 歯ぎしりしながら、セミレットはこう言った。

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