黒井家に侵入せよ‼
黒井家に侵入した三郎達は裏手へ回り、入口の近くにいた見張りを倒していた。
「中に入るぞ」
三郎は静かに扉を開き、部下と共に中に侵入した。
「わしが先に行く。あいつと戦った時に一度来たんじゃ。お前たちは後からついてこい」
「了解」
三郎が先頭に立ち、先へ進んでいった。しばらくし、三郎達は物陰へ隠れた。
「少し待て。尋問してくる」
「近くに敵がいるのですね」
「足音からして、人数は二人。無得、わしと一緒に来い」
「了解しました」
三郎は部下の無得と共に物陰から姿を現し、近くにいた敵を捕らえ、すぐに物陰に隠れた。
「グッ……ガァッ……」
「わしの質問に答えろ」
三郎は捕らえた敵の喉元にクナイの先を当て、こう言った。
「わ……分かった……答えるから助けてくれ」
「お前もだ」
無得も三郎と同じようにクナイを使い、敵を脅した。
「原戸はどこだ?」
「地下室にいる」
「血狐をよみがえらせる機械はそこにあるのか?」
「そうだ……」
「地下室の入口はどこにある?」
「和室の掛け軸の裏だ」
「罠はあるのか?」
「無い」
「今の言葉、嘘はないな」
「……クッ……至る所に赤外線がある」
「それを止める電源はどこにある?」
「台所にあるブレーカーだ。下の右端が赤外線のスイッチだ」
「それ以外に罠はないか?」
「無い。これは本当だ」
「……本当のようだな。最後の質問だ。原戸に機械を渡したのは誰だ?」
「知らん。本当だ」
「……分かった。質問はこれで以上だ」
その後、三郎はみぞおちを殴り、敵を気絶させた。無得も敵を殴り、後ろの押し入れに隠した。
「台所へ向かい、赤外線の電源を落とす。その後、和室へ向かい、地下へ行く」
「了解」
三郎達は台所へ向かった。台所の近くで三郎は物陰に隠れた。
「敵がいる」
「様子を見るか?」
「うむ」
その場で止まり、三郎達は敵の様子を見た。しばらくし、敵が姿を現し、周囲を見回した。そして、速足で逃げて行った。
「わしらに気付いてないようじゃの」
「どうやら、つまみ食いをしただけのようですね」
「なんじゃそら」
「そんな事どうでもよいわ。電源を落とすぞ」
話を終え、すぐに台所へ行き、ブレーカーの電源を落とした。その後、すぐに和室へ向かった。和室周辺には、見張りはいなかった。
「敵がいませんね」
「……嫌な予感がする。お前ら、すぐに武器を装備できるように準備をしておけ」
「はっ」
三郎は和室に合った掛け軸を破り、隠し通路を見つけた。
「行くぞ」
三郎を先頭にし、一行は隠し通路へ進んだ。
「……うっ……あぁ……」
翡翠に倒された土門が目を覚ました。起き上がり、周囲を見回し、大きく深呼吸をした。
「子供にやられるとは……」
「子供に倒されたのはお前だけじゃない」
上から日照の声が聞こえた。その直後、日照と嵐が降りてきた。
「お前らもやられたのか?」
「ああ」
「敵は意外と手練れのようだな」
嵐はこう言うと、体を抑え、うずくまった。
「まだ傷は治ってないのか?」
「当たり前だ。先ほど目が覚め、嵐と合流したところだ」
「そうか……そうだ、貢一はどうした?」
「また捕まったんだろう。仕方ない男だ」
「あいつのことは後回しにし、一旦戻ろう」
「傷が治り次第、あいつを助けに行くのか?」
「それしかない。またあの子供達と戦ったところで、返り討ちに合うのがおちだ」
「そうだな」
会話を終え、日照達は外へ抜け出した。
行動中、服部は心の中でこう思っていた。昔はこんな騒動などない、平和な里だったのにと。そう思う中、昔の事を思い出した。
数十年前。幼い服部は、白也と共に修行をしていた。服部は忍び刀を両手で持っていたが、刀の重さに耐え切れなく、ふらついていた。
「茉奈、お前はまだ子供なんだから、無茶はするな」
服部はまだ白也に子供と思われるのが嫌で、無理して動き始めた。
「おいおい、顔が引きつってるぞ」
「大丈夫だよ白也兄‼私だって立派な忍者なんだから」
そう言ったとたんに、服部は忍び刀を落としてしまった。その後、その場に倒れ、荒く深呼吸を始めた。
「お前にはまだ、修行は早すぎたかな」
白也が服部を起こす中、木の後ろにいる幼い少年を見つけた。
「おーい、君は誰だー?」
白也が声をかけたと同時に、少年は逃げようとした。だが、途中でこけてしまた。
「大丈夫か?」
大急ぎで白也は少年に近付き、声をかけた。少年の膝を見ると、擦りむいたらしく、血が流れていた。
「少し待ってろ」
白也は絆創膏を用意し、少年の膝に貼り付けた。
「これで大丈夫だ」
「……ありがとう」
「それで、君は何者なんだ?さっきから俺達の修行を見ていたようだが」
「……俺は黒井海人。爺さんが嫌だから、逃げてきたら……」
「そうか。じゃあ、一緒に修行するか?丁度、君と同い年位の子もいるし」
「それって私の事か?」
服部が白也の近くに来てこう言った。
「ああ。相手もいれば、いろいろと学ぶこともあるだろう。いい機会じゃないか」
「うん」
その後、服部と海人は簡単に挨拶をし、修行を始めた。それから、三人はよく修行を行った。修行は服部が高校生になるまで、頻繁に行われた。
「おい服部、ぼやっとして大丈夫か?」
三刃の声を聞き、服部は我に戻った。
「すまん。少し昔の事を思い出してな」
「昔?」
「よく白也兄と海人で修行をしてた事だ。あの時の事をうまく活かせばいいのだが」
そう言うと、服部は動きを止めた。
「どうしたの?」
姫乃がそう聞くと、服部を指をさして答えた。
「あそこが黒井家だ」
「さて、そろそろ戦いの準備をした方がいいよな」
三刃は剣を装備しようとしたのだが、服部に止められた。
「どうした?」
「祖父達がいる。私達は邪魔をしないように後ろで待機しよう」
「分かった。でもその前に……」
三刃は逃げようとしている貢一を見つけ、捕まえた。
「逃せねーよ」
「お願い、逃がしてちょーだい‼」
「そいつは無理な相談ね。服部さん、ちょっと手伝って。ほら、三刃君も」
数分後、三刃達はパンツ一丁にした貢一を、近くの大きな木の上に縛った。
「これで逃げれないだろ」
「道具もないしね」
「事が終わるまで、そこでじっとしてろ」
そう言うと、三刃達は先へ行ってしまった。
「おーい、誰かいないのー!?ちょっとー、助けてくれー‼五月だとはいえ、こんな夜中にパンツ一丁じゃあ風邪ひくって!誰かいない?あれ?本当にいないの……誰か助けてくれぇぇぇぇぇぇ‼あの腐れ外道、覚えてろ‼その前に助けてぇぇぇぇ‼」
貢一の情けない叫び声が、夜空にこだました。
その頃、屋敷地下にいる三郎達は、奥へ進んでいた。
「おかしいですね、あれから罠もないし、あいつの部下もいません」
「その位分かっておる。何もないからと言って、気を抜くな」
「はっ」
進み始めて数分後、三郎達の耳に機械音が聞こえた。
「ここから慎重に行くぞ」
「はっ」
音を立てず、息をひそめて三郎達は移動を始めた。しばらくし、原戸の声が聞こえた。
「ええい、まだ血狐は復活せんのか?」
「まだのようです。魔力とかいう、忍術と同じ力を注ぎ始めて早一ヶ月。本当に復活するのでしょうか?」
「……そんなこと知るか!とにかく、この機械の持ち主は確かに死んだ生き物に魔力を注ぐと、復活するという言葉を聞いた‼そして、この機械で魔力を注ぎ込まれ、生き返ったのを、わしはこの目で見た!」
「死んだ生き物が生き返る。漫画かゲームのような話ですが……」
「本当だ!わしは嘘は言わん」
この会話を聞き、三郎はまさかと心の中で思った。
「わしが一人で先に行き、様子を見てくる。皆は戻って待機。何かあれば、すぐに戻る。敵に見つかるなよ。後、無線はすぐにつながるように、常に用意をしておけ」
「分かりました。お気をつけて」
会話後、三郎は奥へ進み、物陰に隠れながら移動を始め、部下達は命令通りに戻った。
部下達は戻る中、会話を始めた。
「三郎様一人で大丈夫かな?」
「大丈夫だろ。何かあれば一人か二人呼ばれるさ」
「そう……だよな。なんか嫌な予感がするんだよな」
「それより、早く戻るぞ」
部下達は和室へ戻った後、すぐに外へ出ようとしたのだが、何かの気配を察し、物陰に隠れた。
「敵だ」
「戦うか?」
「ここで戦うのはまずい。地理的に我らの不利だ」
「やり過ごして逃げよう」
しばらくし、足音が聞こえた。足音の主は、翡翠達に倒された日照、嵐、土門だった。
「皆はいないのか……」
「あの隠し部屋だろ。早く行って、手当てをしてもらわないとな」
「あのガキ共……後で仕返ししてやる」
三人は部下達には気付かず、和室へ入って行った。部下達は隙を見てその場から去り、何とか外へ脱出した。
「連絡しよう。あいつの部下が戻って来やがった」
「傷だらけだが……どこかで戦ったのか?」
「あの傷なら、三郎様でも大丈夫だと思うが」
「馬鹿野郎。それでも三郎様の方が不利だ。おい、連絡はとれたか?」
部下の一人が無線で三郎と会話をし、返事をして電源を切った。
「三郎様からの伝言だ。白也達と合流し、隠し部屋に突入せよ。わしは血狐を復活の鍵となる機械を破壊する」
「勝負をつける時が来たか」
「皆に伝えろ、早くにな‼」
その後、無得は白也達と合流し、三郎からの伝言を伝えた。数分後、白也達は城を取り囲んでいた。白也は部下にこう伝えた。
「俺が先頭になる。無得、琉血、徒都、汰戸須……皆‼行くぞ‼」
白也の合図と共に、部下達は城に入って行った。