銃と養女2
発砲練習場にて
「これより、発砲練習を行う。気を引き締めて取り組むように」
発砲練習の担当は「マサダタダコ」先生。ちなみに偽名らしい。発砲練習の担当先生の中では一、二を争うほどの厳しさだ。まぁ、銃は危ないが戦場に出たら体の一部のように酷使するだろうが、ここは戦場ではない。細心の注意を払うのは適当だろう。
「次、雲ケ畑さん」
「はい」
目の前の机に置いてある銃の弾をライフルに入れ、足を大きく開き踏ん張る。私は他の生徒と違って小柄だ、よろけないように仁王立ちをしている。狙いを定め引き金を引くと、少しの反動を感じる。
「流石、特待生。素晴らしかったわ」
「身に余るお言葉、ありがとうございます」
先生に一礼をし、列の後ろへ戻る。それにしても、年上より評価されるとは気持ちがいいな。年功序列ではなく、成果主義。先祖が考え付かない世の中……いや、わりと先祖たちも戦争が起こるというのは予測していたか。まぁ、昔の話より今だ。集中していなければ……
「今から抜き打ちテストを始めます。動きながら撃つ、いつも静止した状態で撃てるとは限りません。銃は二丁、二丁使うのも使わないのも貴方次第です。片手撃ちは、不安定なので気を付けましょう。では、一人目。中に入って」
人型の的で練習するときは、透明な部屋で行う。かなり激しかったりするから弾が飛び散らないようにしているらしい。あとは音がうるさいからこの中の音は外に完全に聞こえないように防音だ。
片手撃ちかぁ、拳銃程度だし反動は少ないか。だが、四面楚歌の状態だったらマシンガンみたいにダダダダダと弾が出ないからな……かと言ってちゃんと見て撃たないと狙った的に当たらないし、難しいな。ちゃんと正常な判断をすればいいことか。見てる限り、敵もそう多くはないし瞬発力を測る感じか。慣れてるから簡単といえば、簡単か……だが、油断は禁物か。拳銃は各自所持しているものではなく、学校の拳銃。銃の性能を均等にするためか。もうそろそろ私の番か、抜き打ちテストとはいえ手を抜くわけにはいかない。どんなに小さなテストでも調査書に書かれるか、分からないからな。
「管理番号20B4、雲ケ畑栄」
さて……楽しい遊戯の始まりだな。
ビーっとブザーが鳴り始まる。私は腰に付けた銃を両手に持ち、目の前に現れた人型パネルを撃つ。すると、バンッと大きい音を立てた。その反動で私は少しよろめく、驚き目の前のパネルを見ると弾痕が見えた。これは鉄塊特有の痕……なぜだ。もう廃止ではなかったのか! 手元には代えがない、くそったれ! この軍学校はどうなっているんだ。仕方ない、このままやり遂げてみせよう!
「このくらいで点数落とされてたまるか!」
撃ったことのない鉄の塊、感じたことのない重さ。これを乗り越えてこそ、軍人の第一歩ではないのか。あの山中十六魔法空軍大将に近づけるのではないか? 銃自体はいつも使っているが、反動が違う。魔法的レーザーは簡単に言えば殺傷能力の高い水鉄砲、銃が重ければ重いほど反動も大きくなるが、鉄の弾丸よりは反動は小さかったんだっけな。まぁ、理論も大切だが感覚も同じくらい大切だ。撃っていれば慣れるか。前後左右から交互に現れるパネルをいつも通り撃つ。一体も外すことなく撃ち続ける。そして、終わりを告げるブザーが鳴りパネルは戻っていく。私は深く息を吸い吐く。その部屋から出、机に銃を置きマサダ先生の方を向き、一礼をし、先生をまっすぐ見つめ言う。
「ありがとうございました。銃の弾が鉄の塊になっていましたよ」
「おかしいわね……全部、レーザー弾のはずなのに……」
「きっと疲れていたんでしょう。授業は大切ですが、先生のお体も大切です。どうか、ご自愛を。授業を中断させて申し訳ありません」
先生の体を気遣う姿勢、これも点数に入るだろうか。まぁ、この件は本当に不思議だ。銃の扱いに関してはどの軍学校でも、細心の注意を払うように国から火器取り扱い免許という資格を持った職員が来ているはずなんだがな。職務怠慢だとしたらゆゆしい事態だな。まぁ、それは上の人間が片付けてくれるであろう。私が首を突っ込む話ではないからな。だが、もし生徒の手によるとしたら……ふふ、告発せざるを得ない。証拠を徹底的にあぶり出さなければ、危ない悪戯は許せない。