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問題養女  作者: 火乃椿
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銃と養女

 この世には、クズと呼ばれる人間が少なからず……いや、違う。この世にいる者は大半がクズだ。間違えであっても私の周りには、クズしかいない。


 朝、ぬくぬくとあたたかい布団から出ると冷たい空気が私の体に当たり寒さで、体が震える。学校の制服に着替えるとギシギシと鳴る階段を降り、リビングへ向かった。リビングは、薄暗く誰もいない。普通は、先に起きた母親がお弁当や朝ごはんを用意してくれているものだ。まぁ、数年前に失ってしまったが、私は台所に向かうと冷蔵庫から食材を取り出し、自分のお弁当と自分の朝ごはんを作る。養女のために朝早く起きてお弁当や朝ごはんを作ってくれないゴミのような養親には、朝ごはんは必要ないだろう。朝ごはんとお弁当ができたので、朝刊を見ながら朝ごはんを食べる。やっぱり、どこも金に権力。一面の記事も、それ以外の記事も汚職事件やら天下りやらで、世間は大変なようです。ごはんを食べ終わり、綺麗に新聞紙をたたみ、皿を洗う。そういえば、今日は週に一度の射撃練習か。ライフルとハンドガンを持っていかなければ、早足で自分の部屋に向かい、机に置いてあるハンドガンをハンカチに包みカバンに入れライフルを肩にかけ、玄関へ向かった。もちろん、お弁当は忘れずカバンの中に入れてあるぞ。

 さて、学校に着くまでいろいろ整理しよう。私は「雲ケ畑栄(くもがはたさかえ)」、岐阜という県に住んでいる。今は、遠い未来。ある国が核ミサイルを放ち、世界は戦争のない昔とは程遠いが大昔の戦争時代に似ている。世界は魔術と科学を融合させ、いろいろな武器を作り戦っている。世界からは弾丸と言う鉄の塊を無くし、非現実的な魔法的レーザーを主流とした。武器や戦争の話は置いといて、私の学校は「美濃魔法学校」という軍学校に通っている。まぁ、軍人の養成学校と思えばいいだろう。普通科目は勿論、魔法学、魔法医療学、戦争法、発砲練習を学ぶ、選択科目もあるがまぁ追々ということだ。これぐらい把握していれば大丈夫だろう。おっと、もう学校についてしまった。コンクリートの壁に囲まれたビルたち、なんとまぁ、風情のないことだ。社会科の教科書に乗っていた旧海軍兵学校の校舎の方が、趣があると思うのだがな……今度の校外練習の場所に飛島の山奥で行いたいと志願してみるか。一応、魔力が多い特待生だからな。少しは参考にしてもらえるだろう、まぁそのためには長ったらしい説明文を書かなければならないか。まったく、質より量と言うのかそれとも先生方が長文が好きだからなのか……短くて説得力がある方がいいと思うけどな……

「おはようございます」

 教室の入り口で一礼をし、入る。自分がいつも使う席に座り、カバンを引き出しの中に入れる。そしていつも読んでいる学校の推薦図書の戦意高揚の詩集を読む。正直言ってまったく、面白くないが読んでいれば先生からの評価が高まる。そしたら卒業後、入隊したい軍隊に推薦をしてくれるかもしれないからな。戦意を高めるというよりは、先生からの評価を高めるために読んでるな。もうすぐ一限目が始まるな、確か国語か。一限目が国語とはいいな。軍学校に通ってる生徒は将来のために必死になって各軍歌を覚えたり、お国のために頑張るという意思を見せたりしてるから、趣味がなかったりする。国語は、物語をたくさん読めるから癒しの時間だ。教科書とノートを机の上に開く、確か前回の「ライトノベルと近代日本について」の続きだったけな。近代日本人は、本当に面白い物語を書くな。VRを使って電脳世界で戦闘三昧、女子校に一人の男子が放り込まれるハーレムもの、死亡して前世の記憶を残したまま異世界に転生するとか。本当に奇妙だ。VRを使った遊びなんて数年前に流行ったけど、全国で精神的被害が多発して廃止になったし、女子校が共学にするときは一学年分の男子生徒を入学させないといけない。それとも、こういうことがあったらいいなっていう夢物語か。異世界転生ものは……あるかもしれないな、小さい子が前世の記憶を語ったりしたとかいう事例があったみたいだし。そんなことを考えていると、授業開始の鐘が鳴る。

「おはようございます。それでは、前回の続きから始めます」

 国語の担任の先生の挨拶で授業が始まる。大きなスクリーンのようなホワイトボートに、前回の内容が書かれていく。もちろん、手書きでなくフェアリーステッキという魔法の杖に記憶をさせ、魔力でその内容を書かいているという優れたものだ。魔力の消費は少なく、もともと魔力の少ない人間にも扱えるという……燃費はいいが値段が高いというのが欠点だな。まぁ、誰に説明するでもないことは置いといて授業に集中しなければ、もうじき春の軍適正試験が行われるからな。今年も学年一位を取れればいいのだが……まぁ日頃の努力と天性の才能だがな。そんなことを考えているとあっという間に授業が終わり、昼休みになった。

 確か、午後の授業は発砲練習か。楽しみだ。さて、早くお弁当を食べよう。食堂は混んでそうだし、教室で食べるか。パカッと、大きめのお弁当箱の蓋を開け、今朝作った大好物のサンドウィッチを頬張る。やはり、自分で作ったサンドウィッチは美味しい。あの養親には作れないだろう。頬張っていると、後ろから声が聞こえた。それを無視して食べていると隣の机に売店で買ったであろう、焼きそばパンとペットボトルの玉露を乱暴に置かれた。今日はしつこいな、と思い隣を見る。

「お、美味しそうなサンドウィッチね。雲ケ畑さん、もらってもいいかしら」

「……居前さん、あげませんよ」

「居前静子」、同じクラスの生徒だ。私と8つ違う学生、何もおかしくないが忘れないためにも確認しておこう。この軍学校は三年制、入学のできる年齢は高等学校を卒業した18歳、志望者は16歳からでも入学できるが親からの了承や魔力の測定、運動能力の測定といろいろ面倒だ。さて、私が入学をした年齢は、10歳だ。志願者の受け入れの年齢からは6つも離れている、普通は志願できる年齢になったらまた応募してね。と、伝えられる。だが、志願者枠には特別枠と一般枠がある。特別枠は先天的な魔力を持った者を受け入れる枠、一般枠は義務的に魔力を授けられた者を受け入れる枠と別れている。私はその特別枠に応募し見事合格ということだ。まぁ、軍学校側も世界的に貴重な先天的に魔力を持った者は積極的に受け入れたいのだろう。ちなみに、居前氏は義務入学をした生徒だったな。

確認は終わりにしてと。彼女は休み時間や移動教室の時にやたら絡んでくる、彼女と同じ年の生徒もたくさんいるのに……何故、私に絡んでくるのか。謎が多いな。お弁当を食べ終わると、カバンにお弁当箱をしまい持ってきた運動着を持ち、居前さんを置いて教室を出た。居前さんに何か言われた気がするが、無視をしよう。今は発砲練習に集中しよう。

 更衣室に向かうと、今日の発砲練習に参加する女子生徒が着替えをしていた。私は空いてるロッカーにカバンを入れて着替え始める。後ろにいる女子生徒達は、個々で仲のいい友人と駄弁りながら着替えているようだ。そういえば、私は友人と言う友人がいないな……両親が死んでからは養親の家を転々として、学校も転校ばかりで友人ができても離れ離れ……というか、この性格上、同い年の友人も年上の友人も年下の友人もできないか。よく、養親に私はクズだと言われるからな。まぁ、クズにクズって言われるほどクズなんだろうな。絶望的だ。


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