白雪姫(もうひとつの昔話5)
お城の窓辺。
降る雪に向かって、おきさき様は胸の前で手を合わせて祈りました。
「この雪のような白い女の子がほしいわ」
すると翌年。
おきさき様の望みどおりの女の子、真っ白な肌をした白雪姫が生まれました。
けれど悲しいことに、それからまもなくして、おきさき様は病気でなくなってしまいました。
その後。
王様は新しいおきさきを迎えました。
このおきさきはとても嫉妬深く、そして不思議な鏡を持っていました。国じゅうの鏡が映すもの、そのすべてを知っているという魔法の鏡です。
毎日、おきさきは鏡に向かってたずねました。
「この世で一番美しいのはだれ?」
「おきさき様です」
鏡の返事はいつもおきさきでした。
十年の月日が流れます。
白雪姫は美しくすこやかに育っていました。
そんなある日。
「この世で一番美しいのはだれ?」
おきさきが、いつものように鏡に向かってたずねますと、
「白雪姫です」
鏡がこれまでとちがう返事をしました。
「なんですって!」
おきさきは自分より美しい白雪姫をにくたらしく思い、すぐに殺すよう猟師に命令しました。
しかし……。
猟師は白雪姫をあわれに思い、森の奥深くにこっそり逃がしてやりました。
そこには七人の小人がいました。
白雪姫は小人たちに助けられ、そこでいっしょに暮らし始めたのでした。
ある日。
「この世で一番美しいのはだれ?」
おきさきが鏡にたずねますと、
「白雪姫です」
死んだはずの白雪姫だと答えます。
「なんと、あの子はまだ生きていたのか。わたしがこの手で息の根をとめてやる」
おきさきは毒リンゴを作り、リンゴ売りに化けて森へと向かいました。そしてまんまと、白雪姫に毒リンゴを食べさせたのでした。
白雪姫がたおれて動かなくなります。
おきさきは鏡にたずねました。
「この世で一番き美しいのはだれ?」
「おきさき様です」
鏡の返事に満足して、おきさきはお城に帰っていきました。
白雪姫は生きていました。
小人たちが、のどにつまった毒リンゴを吐かせたのです。けれどこのままでは、おきさきの魔法の鏡に映り、また見つかってしまいます。
小人たちは相談して白雪姫に魔法をかけました。
二度と見つからない魔法を……。
毎日。
「はあ……」
白雪姫は深いため息をつきます。
鏡に映る超ブスの顔を見るたびに……。