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『ミッドナイト・ロストサマー』 ~この100回目の夏を、「輝ける悪魔」と~  作者: 水森已愛
-第一章- 「“誓夏”<リピート・ワンス・アゲイン>編」
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Fragment(Y)「お前に、あげたい」~オルタナティブ・ダークナイト~




 

  この町の隣には、施設、と呼ばれている場所があって。


  それは犯罪を犯したガキや、問題のあるガキを、まとめて押し込んでいるような場所だった。

  誰もが存在を知っていて、知らないふりで、れ物扱いをするその場所は、あたしにとっても、内心小さくない恐怖の対象だった。

 

  いわく、人体実験をしてるだとか。いわく、電気ショック療法で何人も死なせたとか。

  黒い噂がたえないその場所は、あたしでなくても、「そう」だったろう。


 誰も彼もが、避けていた。冗談めかして、揶揄やゆしつつも、恐れていた。


  けれど、あたしは自分が良い人間だとは思っていなかったし、犯罪を犯すような、どうしようもない奴らが、自分とくらべて、たいして変わっている、とも思えなかった。

  だから、チカが、施設の人間だと知った時、実は、それほど驚かなかった。


 

  いや、ちょっとは、本当は、かなり驚いたけど。

  でも少なくとも、チカがおかしいとか、イカれてるとか、可哀想なヤツだとか。


  そんな、はた迷惑なレッテルを押し付ける気は、さらさらなかった。


  だって、あたしにとって、チカはすでに「特別」で。

  変わりようもなく、「格別」だったから。


 そう、チカは、あたしにとって。



――大切で、格別の。


英雄<ヒーロー>だったんだ……。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



いずれ、遠くて近い未来、あたしは、お前に誓う。


たとえ、お前があたしを引き裂き、食い殺す悪魔ばけものだったとしても。

あたしは、そんなお前と出逢えたことを、もう二度と、後悔なんてしない。


なあ、××。


――あたしと出逢ってくれて、ありがとう。

――あたしをみつけてくれて、ありがとう。


……あたしを、好きになってくれて……。


だから、お前に言うよ。

死んだように生きていたあたしに、お前がくれた、あの言葉を。


その、最初で最後の答えを、お前にやるよ。

あたしの心臓いのちごと。


――だから××、お願いだ。


あたしを、××てほしい。

どうか、この気持ちを、受け取ってほしい。


お前はきっと、拒絶するだろう。

そして、あたしを殺すだろう。


それでも、やるよ。

お前の欲しがったすべてを、お前の失ったすべてを、与えてやるよ。


“大嫌い”なお前に、“世界で一番どうでもいい“お前に、あたしは、今――。

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