『夜と夏の物語<ロスト・エリュシオン>』 ~約束された終焉~
青春ダークファンタジー『ミッドナイト・ロストサマー』の、<運命に操られし主役>、千夜とチカ、二人の交錯しあう運命に関する考察です。
大量のネタバレを含みますので、ここまでのストーリーを未読の方はご注意です!
――Are you Ready?――
*死の番*
チカの誕生に秘められた謎。
〈生まれてきてはいけなかった子〉。〈悪魔の愛し子〉。
実の母ではなく、その妹に育てられ、両親の死後、親戚の誰にも引き取ってもらえず、呪われた施設に預けられた理由とは。
千夜も、また、実の母を自らの誕生によりなくし、実の父親に捨てられ、裏切られ、育ての父親はアル中、唯一の拠り所である、育ての母親は失踪。
鏡写しのこのふたりは、惹かれあう運命にある。まるで、磁石のSとNのように。
あるいは、〈オルフェ〉と〈エウリディケ〉のように。〈イザナギ〉と〈イザナミ〉のように。
――あるいは、〈彦星〉と〈織姫〉のように。
*物語が終わる時*
チカの秘密も、だいぶ明らかになってきました。
さて、チカの抱いた真実を知ったとき、千夜は?
誰よりも輝く、〈死のメテオライト〉、チカに与えられた試練は、あまりにも残酷で、無慈悲だった。
闇に墜ちることを約束されたメシアを救うため、〈美しき真夜中の娘〉にして、〈星月夜の女王〉、千夜達の命懸けの闘いが始まります。
〈失われた夏〉と、〈失われた夜〉。
二つの願いが交錯するとき、どんな奇跡が、あるいはどんな絶望が襲いくるのか。
ふたりの戦いは、まだはじまったばかり。
一瞬の輝きが永遠になるとき、この夏は、静かに幕を閉じるでしょう。
<――さあ、永遠の夏を、取り戻せ――>
*〈本当の救世主〉は誰だ*
チカはすごくセクシャルなので、ハンパなくモテる。
それも、性別を感じさせないタイプのセクシャルさなので、男女問わず惹き付けて離さない。
施設でひとりぼっちだったのも、「人の死を悲しめない欠陥品」だから、嫌われたんじゃなく、みんな、チカのことが、本当に好きで好きでたまらなかったから、自分達の死にまったく動揺しないチカに、裏切られた気持ちになって、失望して、もうどうしようもなく、憎むしかなくなってしまっただけなのかもしれない。
――切ない。
そんな、壊れたチカは、もう手遅れなのか。ゆっくりと壊れ続け、崩壊するしかないのか。
――それとも?
たとえば、千夜の〈終わらない夜〉と、〈始まらない夏〉を壊したのが、チカだとしたら。
チカの壊れきった心臓を抱き締め、その〈約束された破滅〉から救い出すことができるのは、さあ、誰だ?
*破滅の星と真夜中の少女*
チカは属性としては、「破滅と死」を司るキャラクター。
その輝きは、夜空を打ち落とす明星に似た、閃光のシューティングスター。
〈ナイト・ブレイカー〉という、あのタイトルと、四章番宣から、今後、何をしでかすかは、大体予想がつくと思います。
さて、運命の反逆者<ルシファー>にして、神をも喰らおうとする救世主<ゴッドイーター>、チカは、「失われた夜」を取り戻すことができるのか。
それとも、抱いた闇に飲み込まれ、すべてを壊す破滅の神<タナトス>へと堕ちてしまうのか。
――その時、〈美しき真夜中の少女〉・千夜は?
*約束された終焉*
『チカの秘密Ⅰ』 ~タナトスとメサイア編~で、まさか、と勘づいた方は正しい。
チカは、〈裏切りの子〉であり、〈悪魔の愛し子〉であり、〈けして、生まれてきてはいけなかった子〉であり。
――〈禁断の愛の果実〉、でもある。
〈七つの罪〉を銃にこめて、チカは、誰を撃ち抜く?
――さあ、愛しい夜に、〈約束された終焉〉を。 ――




