表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/133

『チカの秘密Ⅰ』 ~タナトスとメサイア編~

 青春ダークファンタジー『ミッドナイト・ロストサマー』の天真爛漫にして、謎めいた準主人公、チカについての考察です。


 大量のネタバレを含みますので、ここまでのストーリーを未読の方はご注意です!



 ――Are you Ready?――








 *アンフェア・シークレッツ*




 命は、チカの秘密を、全て知っている。

 もちろん、その出生の秘密も、千夜に隠している事実も。


 だからこそ、チカを「プシキャット」と呼び、歪んだ方法で愛でている。

 チカは命のことをなにも知らないというのに。完璧にアンフェア。




 *メサイア・ネバー・クライ(泣けない救世主)*




 チカはどんなに悲しい映画をみても、一切泣かない。

 険しい顔で見て、見終わったら、「つまんなかったな」って言って終わり。



 ――チカは、泣けない。決して。チカが泣けるのは、××が×××時だけ。




 *ヒーローでなければ*


 チカはたぶん、ものすごい純粋な魂の持ち主。別作品、『リシアンの契約』のリシアンを越える純度の心を持つ。


 だからこそ、簡単に壊れてしまったし、赦されない罪をおかしてしまった。

 それでも、罪人リシアンサスのような、大量殺戮者にならなかっただけまし。


 ヒーローでなければなさないと言う縛りが、チカを大量殺戮から遠ざけたといえばそうだし、

 ……ヒーローだからこそ、手を血に染めなくてはならなかった。 



 今後、チカは自分の罪と真っ向から向き合い、絶望の果てに、どんな結末をもたらすのか。


 ――裏切りの物語は、最後の1ページへと加速していく。




 *チカの真実*


 チカは、現実にいたら、とてもモテるタイプではあるんだと思うけれど。


「ピカピカ光るものは、誰でも愛せる。しかし、その光が失われたとき、何人がその者を愛すのだろう?」


 という命題がある。それはリンドウにも言えること。だから、誰でも赦し、愛す完璧超人のリンドウさんも、チカにだけは少々辛辣(しんらつ)


 そして、チカの無敵の輝きが、一体何で出来ているか、どんな絶望と引き換えかを知った時、千夜ははじめて本当の、本物のチカを知るのだろう。 


 ただし、リンドウが、チカに対してキツいのは、もちろん、そんなくだらない同族嫌悪だけじゃない。

 チカは絶対に許されない、赦されてはいけない罪を犯したから。


 だからこそ、リンドウだけは、チカを許さないし、赦してあげない。

 それは、冷たいわけでも、酷いわけでも、見放しているわけでもなく、その逆。


 リンドウは、チカを憎んでいるわけでも、軽蔑しているわけでもないのだから。 


 今は比較的、好かれてるチカだけれど、すべての真実が明るみになっても、それでもまだ好いていてもらえるだろうか。


 ピカピカきらきら輝くチカが本当は……だと知って、一体何人がこの子を愛してくれるのだろう。


 チカの裏切りは、たぶんミッドナイトで、一番手酷い裏切りなので、読む方に全然優しくありません。




 *チカの秘密と罪*


 チカの秘密はあと三つ。


 そのうち一つは、本文内で、すでに何度か、さりげなく明かされているものの、主人公・千夜もまったく気づいていないし、わざと分かりにくくしてあるので、よーく読まないと、気づかないかもしれません! 


 一見、あっけらかんとしたチカは、その印象に反し、ものすごい罪を背負っているわけですが。

 だからこそ、中二病という、暗黒仮面という、ばかばかしい逃げ場にすがっているわけだけど。


 千夜にだって、罪はある。無知という、重い罪が。




 *デス・デミゴット・ブライト・ディスペアfromタナトス*





 まるで、死の神<タナトス>のように、チカの<DNA>は目覚めてゆく。

 愛情の鎖と、嫉妬の手錠が繋ぐ予定調和の未来。


 ――物語は、残酷に加速する。魔女が囁き、手招くその先に、果たして、希望はあるのか――。




 *“だから、なんだ”*



 たとえ、許されない生だとしても。生まれる前から、死せる定めだったとしても。

「だから、なんだ」とチカは吼える。


 そんなことで、この魂の呼ぶ声は、渇望は、果てしなく燃え上がる欲望の焔は、消せやしない。


 チカは、けっして諦めないだろう。自らが消滅し、抱いた闇に呑まれるその時まで。

 失われた未来を、取り戻すためなら、チカは何度だって自分の命を棄てるだろう。


 まるで、運命をねじ伏せ、その屍の上に立つように。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ