『その名の秘密Ⅰ』 ~美しき夜の娘<千夜>編~
『ミッドナイト・ロストサマー』の主人公の名前に秘められた、真実の解説です。一部、重大なネタバレを含みます。
①千の名を持つ者たち
連載中のミッドナイト・ロストサマーでは、主人公・千夜が「千の夜」の名を冠していて、チカは「千の夏」。千夜の母は千景で、「千の影」ととることもできる。
千夜とチカの名前が似ているのは、何か関係があるのか、それはブラフなのか……。
話が進むにつれ、あきらかになるはず。
続きから、重大なネタバレを含みます。
ここまでのストーリーを未読の方は、お読みにならないことをおすすめします!
②*名前と運命*
ミッドナイト主人公、「千夜」の名前の「千」は、「数えきれないほどたくさん」の意。
「数えきれないほどたくさんの夜」を繰り返し、「受け止められないほどたくさんの死」をみつめて、その歪な生を、看取ってきた千夜は、だからこそ、「今度こそ」、負けられない。
少女は、繰り返す。〈失われた夏〉を。少女は、繰り返す。〈約束された裏切り〉を。
だが、少女は……「千夜」は、もう悔やまない。
運命が、何度でも、〈あの夏〉を奪い取っても。彼女はもう、二度と、諦めないと決めたのだ。
巡り廻る運命の歯車の交差点で、出逢ってしまった、二人の運命の仔。
〈夜〉と〈昼〉の狭間で、〈光〉と〈闇〉の狭間で、彼らは何を選択し、何を賭けるのか。
〈真夜中の少女〉と、〈失われた夏〉。彼らは何度だって、繰り返す。
裏切りの物語は、〈最後の一回〉を投げかける。
絶望と慟哭の果てで、最後の一ページに描かれるのは――。
③~美しき夜の娘<ライラ>~
第三章で、チカは千夜を、「美しき夜の娘」と呼び、命は四章の先のお話で、「僕の天使<ライラ>」「僕のエリス」と呼び、また、何も知らないはずの乙女と姫ですら、「女王<クイーン>」、「あたし達の救世主」と呼んだ。
さて、その「ライラ」「エリス」とは何を意味した単語なのか?
ここから、それをひも解いていきましょう。
①「ライラ」とは(ウィキペディアより)
・こと座 (Lyra)。
・エリス (準惑星) の旧通称 (Lila)。
・ライラ (天使) (לילה Lailah) -
(ユダヤ教やキリスト教に伝わる、受胎を司る天使。魂の助産婦とされる。この世に生まれる前の幼児の魂を、母親の胎内へ導く役目を持ち、幼児の魂に将来(人生)のことを教えるが、この世へ誕生する瞬間にそれを忘れさせる)
・ライラ (Lyla、Lila、Lilah) は、アラブ語・英語などの女性名。
アラブ語の「夜」(ليلى) に由来する。
・ライラ (Láilá、Laila) は、サーミ語・北欧語などの女性名。
ヘルガ (Helga) のサーミ語形で、「聖なる」を意味する。
*ヒント*
〈クイーン・ライラ〉。〈美しき夜の女王〉。
〈-真夜中の子どもたち-を孕む天使〉。〈-忘却の運命-の母〉。
〈-聖なる織姫-の竪琴〉。〈別れの音色の-エウリディケ-〉。
〈-運命の糸-を織る者〉。〈-真夏の鷲-を撃ち堕とす乙女〉。
〈災い-エリス-を塗り替えるもの〉。〈彼の名は悪-エリス-ではない〉。
④*失われた夜*
千夜の名は、文字どおり千の夜、つまり数えきれないほど多くの夜、という意味だけれど、この夜<night>には、「無知文盲の状態」、「失意」、「不安などの時」、という意味もあって、この、「無知(知らない)」、「盲目(見えない)」というのが、最大のポイント。
いつ、いかなるときも、何も見えず、何も知らない千夜は、何度でも選択肢を間違え、途方もない失意と不安に襲われる。
時には意図せずして、裏切り、裏切られる。
そんな千夜がもし「誰か」を、ひいては世界を救えるとしたら、それは何も知らない彼女が、全てを知り、受け止めたその瞬間しかない。
⑤*RERL-NAME*
これで、千と夏と夜の名を持つキャラクターは、
千夜、千夏
千冬(チカの実母?)、千春(チカを育てた母。千冬の妹)、千秋(現時点では誰か不明)
千景(千夜の血の繋がらない母)、朔夜(命)とだいたい揃ってきました。
そして、収束していく世界の果て、円環を繋ぐのは……。




