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『ミッドナイト・ロストサマー』 ~この100回目の夏を、「輝ける悪魔」と~  作者: 水森已愛
-第三章- 「“HEG”<ホロコースト・エンゲージギルティ>編」
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第7話 「血の祭宴」~ブラッディ・ナイトメア・パーティー~



「進藤?!」


 

 扉を開けたあたしがみたものは、信じられない光景だった。


 目の前に倒れていたのは、この前、進藤の代わりに、あたしの身体を見に来た、若い看護婦だった。


「どうし……」


 肩に手をかけると、だらり、と腕が落ちてきた。


「…………っっ!!」


(――死んでる……?!!)


 その目は生気を失ったようににごっていて、唇は紫色に変色し、赤黒い液体が、あごまで垂たれていた。

 振り払うように腕を放すと、べちゃ、と音を立て、それは元の位置におさまった。


 口を押さえ、後ずさる。

 今度は、びちゃり、と裸足にへばりついたものがあった。

 

 こわごわと足の裏に触れると、掌にべったりとへばりついた赤が、どろり、とねばりながら、したたった。


 悲鳴を押し殺し、あたしは、ゆっくりと後ずさると、きびすを返し、駆けだした。



(……進藤!!)


 進藤を、探さないと!! 早く、早く――、みつけないと!!




――人が! 人が、人が倒れている!! それも、血を流して――!!



 廊下をけながら、あたしは、目の前の惨事さんじに、ひたすらにあえいだ。


 胸を押さえ、横たわる医者。

 腹を押さえ、うつぶせになった看護婦。


 皆、おびただしい血にまみれ、ぴくりとも動かない。



「クソ……ッ、なんで、こんな……っ!!」



 息を切らし、涙をぬぐいながら、走る、走る、走る。


 ふと、廊下の影に、人影がみえた。


……生きてる!




「進藤……っ?!」



 振り向いた男が、こちらをみて、ニタア、と嗤わらった。



「ひっひっひ……千夜ァ……。いや、“ナナオリクン”だったっけなァ……?」


 血だまりに、やつは立っていた。



「誰だ……お前……?」



 不自然にカットされた、金髪。ぎょろりと光る眼光。

 その細身から漂う、こびりついたような死臭。



「ひゃあはは。おれの名前も教えてもらってないんだァ? やっぱりあんた、あの腐れバカに騙されてんじゃねエ?」



 男は、掌のモノをみせた。

 大振りのサバイバルナイフ。そこに滴っていた、赤いモノは――!



「――お前、まさか……っ!?」



 びちゃり、と赤黒いそれが、音を立てて、流れおちた。



「さあ、本当の謝肉祭<カーニバル>の、はじまりはじまりィ!」



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