第7話 「血の祭宴」~ブラッディ・ナイトメア・パーティー~
「進藤?!」
扉を開けたあたしがみたものは、信じられない光景だった。
目の前に倒れていたのは、この前、進藤の代わりに、あたしの身体を見に来た、若い看護婦だった。
「どうし……」
肩に手をかけると、だらり、と腕が落ちてきた。
「…………っっ!!」
(――死んでる……?!!)
その目は生気を失ったように濁っていて、唇は紫色に変色し、赤黒い液体が、顎まで垂たれていた。
振り払うように腕を放すと、べちゃ、と音を立て、それは元の位置におさまった。
口を押さえ、後ずさる。
今度は、びちゃり、と裸足にへばりついたものがあった。
こわごわと足の裏に触れると、掌にべったりとへばりついた赤が、どろり、とねばりながら、したたった。
悲鳴を押し殺し、あたしは、ゆっくりと後ずさると、踵を返し、駆けだした。
(……進藤!!)
進藤を、探さないと!! 早く、早く――、みつけないと!!
――人が! 人が、人が倒れている!! それも、血を流して――!!
廊下を駆けながら、あたしは、目の前の惨事に、ひたすらにあえいだ。
胸を押さえ、横たわる医者。
腹を押さえ、うつぶせになった看護婦。
皆、おびただしい血にまみれ、ぴくりとも動かない。
「クソ……ッ、なんで、こんな……っ!!」
息を切らし、涙をぬぐいながら、走る、走る、走る。
ふと、廊下の影に、人影がみえた。
……生きてる!
「進藤……っ?!」
振り向いた男が、こちらをみて、ニタア、と嗤わらった。
「ひっひっひ……千夜ァ……。いや、“ナナオリクン”だったっけなァ……?」
血だまりに、やつは立っていた。
「誰だ……お前……?」
不自然にカットされた、金髪。ぎょろりと光る眼光。
その細身から漂う、こびりついたような死臭。
「ひゃあはは。おれの名前も教えてもらってないんだァ? やっぱりあんた、あの腐れバカに騙されてんじゃねエ?」
男は、掌のモノをみせた。
大振りのサバイバルナイフ。そこに滴っていた、赤いモノは――!
「――お前、まさか……っ!?」
びちゃり、と赤黒いそれが、音を立てて、流れおちた。
「さあ、本当の謝肉祭<カーニバル>の、はじまりはじまりィ!」




