表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ミッドナイト・ロストサマー』 ~この100回目の夏を、「輝ける悪魔」と~  作者: 水森已愛
-第二章- 「“施設”<オルタナティブ・ダークナイト>編」
20/133

第1話 「失われし記憶」 ~ロスト・ペイン・ノーモア~


「やあ。ようやく起きたんだね」



「ん……う……」


「しゃべらなくていい。そっと目を開けるんだ。七織ななおりくん」


「なな……おり……?」


「そうだ。それが君の名前。七織。七織ななおり千夜ちやくん。僕を覚えているかい?」


「誰、だっけ……?」


「僕は、君の主治医の進藤しんどうだ。それも、覚えていない?」


「進藤……」


「うん。僕のことはそう呼んでくれてかまわない。無理もないよ。君は不幸な事故で記憶を失った。おそらく、頭を強く打ったんだろう」


「頭……あたし……」


「だが、心配はない。君の記憶喪失は、一時的なものだ。ちゃんと治療を受け、正しく服薬すれば、きちんと治るたぐいのものだ」


「薬を……?」


「そうだ。僕の指示に従い、この薬さえ飲んでおけば、君は何も心配しなくていい」


「心配……しなくていい……」


「そうとも。ただし僕の指示は絶対だ。守らないと、もっと不幸なことが起こる。これだけは、覚えていてくれるかな?」


「うん……」



 あたしは、こくり、とうなずいた。

 進藤は病室から去っていって、あたしはベッドに寝たまま、天井の染みをみつめていた。


 なんだか、頭がすごくぼんやりしている。

 でも、この人は大丈夫だと言った。大丈夫。なら、心配しなくていい。


 もうなにも、心配しなくていい。

――なにも。


……ああ、ひどく眠い。あたしは、もう一度目を閉じた。




             (( 千夜……! ))


 

 一瞬、誰かの笑顔らしきものが、目の裏に浮かんだが、それはぼやけてよくみえなかった。



「――チカ……」



 呟いて、首をかしげた。



「“チカ”って、誰だ……?」



///////////////////////////////



Lost pain no more ~ロスト・ペイン・ノーモア~

「失われた痛みは、もういらない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ