表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ストーカー日記

作者: ササデササ

 3月1日。

 今日も彼の帰りは遅かった。

 彼は帰宅し、しわになるのも気にせず服を脱ぎ捨て、カーテンも閉めずにご飯も食べずに、ベッドに倒れこんだ。

 相当疲れているのだろう。

 私は明日胃に優しいおかゆを作ろう、と思った。




 3月2日。

 私は朝ごはんにおかゆを作った。

 彼は一口も食べてくれなかった。

 食べなくちゃ元気が出ないのに、彼は私の作る料理を殆ど食べてくれない。

 



 3月3日。

 今日、彼の仕事は休みだった。

 疲れているはずの彼は、エッチなホームページを見ていた。

 私というものがあるのに、疲れているはずなのに、正直別れようかと思った。

 私の恨めしい視線に気が付いた彼は、慌ててカーテンをした。

 手遅れだ。

 私はしっかり見たのだ。

 手遅れなのに、私の心から彼は消えなかった。

 



 3月4日。

 むしゃくしゃしていた私は、彼のノートパソコンを盗んできた。

 いや、借りてきた。彼が帰ってくる前に返した。

 とにかく、エッチなホームページを見れなくしようと思ったのだ。

 しかし、私はそんな方法を知らなかった。

 せいぜい『お気に入り』を削除するくらいしか出来なかった。

 削除する必要はなかったかもしれない。

 もう彼なんてどうでも良いのだから。

 もう私たちは別れるのだから。

 彼のパソコンには『日記』と名づけられたフォルダがあった。

 中には『西暦ハイフン日付』とシンプルな名前がつけられたテキストファイルが沢山あった。

 最近の日付の物を私は見てみた。



  ー ー ー ー ー ー ー ー 

 

 3月1日。

 今日も仕事が遅くなってしまった。

 例の彼女はおきているだろうか? と心配したが大丈夫だった。

 ちゃんと俺の帰りを待っていてくれた。

 俺はサービスシーンのつもりで全裸になった。

 だけど、今日は疲れている。

 そのままベッドに倒れこんだ。

 だから、これは、2日の朝に書いたものだが、未来の君、というか俺は覚えていたかな?

 

 3月2日。

 今日の朝、玄関を開けたらおかゆがあった。

 これが鍋だったならば、まだマシなのだけど、どんぶりにおかゆが入っていた。

 ラップはしていない。

 これじゃぁ、埃が入ってるじゃないか。

 いつから置いてあるのか分からないそれを、食べる気にはならなかった。

 彼女はちょっと大雑把過ぎる。


 3月3日。

 今日は昨日のおかゆの件を反省してもらおうと、エッチなホームページを見ている様を彼女に見せ付けた。

 予想以上に怒っていたので、慌ててカーテンをした。

 俺たちの関係は終わったかもしれない。


  ー ー ー ー ー ー ー ー 


 以上。

 全文一字一句同じ。

 気味が悪い。




 3月5日 

 私はすぐに引越しの準備を始めた。

 愛しの彼はストーカーだったのだ。

 このままじゃ、私の身が危ないわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  素朴な文章、光る内容。飾らなくても輝く星のような、有名な掌編作家を思わせる作品でした(σ*´∀`)  締め方も良かったです……。
2014/12/31 10:22 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ