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7番の少年は底辺から成り上がる!  作者: ライト・ユーテ
幼稚園編
8/28

八話 友達

アリスが帰って10分ほどしてからエリイがソラを迎えに幼稚園の門から入ってくるのが見える。ソラはエリイが来たのにいち早く気づきエリイの前まで駆け寄る。

「ソラ、迎えに来ましたよ」

「うん、ありがとう、帰ろ?」

エリイはソラの手を握り帰るために幼稚園の抜け、夕方になり、少々静かになった街中を二人で歩く、するとソラが何の前触れもなくエリイに話しかける。

「そうだ、エリイ姉さん、僕友達ができたんだ」

「あら、そうですか、それはよかったですね…」

「うん」

「……友達ですかぁ、それはよかった…え…」


――――バッ

エリイは自分の首が千切れるのではないかと思うくらいに凄い勢いでソラの方を向く。

「どうしたの?」

ソラは笑顔だ、最近は少しずつこちらの生活にも慣れてきて空を見る以外でも笑顔を見せるようになり、エリイはうれしく思う。

(って、そのことじゃないですっ!と、友達!?)

「ソラ!本当ですか!?友達ができたのですか!?」

エリイは驚きのあまりソラの肩を勢いよく揺すぶる、

「う、うん…ほ、本当だよ、だ、だから…はなして」

苦しそうに訴えるソラの言葉にエリイはすぐに正気に戻り顔を青ざめソラの方から手を離す。

「あ、ごめんなさい、私ったら、また…」

顔を青ざめるエリイにソラは何事もないように笑顔を向ける

「大丈夫だよ、わざとじゃないんだし」

エリイの目からソラは天使に見えたのだという

「ありがとうございますソラ!そ、それでその友達というのは?」

やはり気になるのかソラに遠慮がちにも聞いてくるエリイ

ソラは上を見上げ楽しそうに今日のことを話す

「うん、今日そのことあって友達になろうっていったら「いいよ」っていってくれたの、だから友達になったんだよ」

正確にはもうすこし乱暴な言い方だったがわざわざそれを言うほどソラは正直者ではない。エリイはソラに友達ができたと知り喜んでいる

「よかったです!ソラにもやっと友達ができて、今日は夕食を豪華にしましょう!!」

エリイの言葉にソラは慌てて手を振る

「え!?だめだよ、何時も通りの食事で十分だよ、わざわざ祝うことでもないし、お金がもったいないよ」

でもエリイはソラの言葉なんてまるで聞いていない様子だ。

「そうと決まれば早速買い物をしないといけませんね!えっと、まずは…お肉と野菜とちょうみ「エリイ姉さん!!」…どうしました?」

急に、そしてソラにしては珍しく大きな声を出したことにエリイは少し驚き頭の中で考えている今日の夕食のメニューを一旦中断させソラを見る。

「…ふつうで…いい」

ソラのそんな言葉にエリイは困惑する、そしてソラの話し方が少し前のものと似ていることに気がつく、奴隷として逃げてきたあのころに

エリイはすぐにソラに近づき焦りながら話しかける

「で、でもソラ?ほら、せっかくの友達ができた日ですし、その、」

なかなかソラにいう言葉が見つからないエリイ、ソラは別にエリイの行動に怒っているのではなく、むしろその逆である、嬉しく思うがそこまでしてもらう様な事を自分はしていないし、ただでさえ無理をして幼稚園に通わせてもらっているのにこれ以上甘えれない、とソラは考えている。

だがもし、形は違えど昔みたいに強要され、強制されることなら話は別だ、ソラはそれを喜んで受け入れよう、それが今のソラなのだ。前は奴隷として、今回は自己満足の人形として自分は過ごす。

夕暮れの中、ソラは思考する


―――まぁしょうがないかな


赤い夕焼けの光が空の背中を当たりソラ以外の周りだけが明るくなる

ソラはただ立っている

「あ、まぶしいっ…」

エリイは眩しくなり目を閉じ手で顔を覆う

すぐに再ほどのソラのことが心配になり目を開ける

「ソラ?…大丈夫ですか?……ッ!?」

エリイは驚愕する、そして後悔した。

夕焼けにあたりながらでもわかるソラの目、それは少し前までの目と同じ

光のない、希望のない目だった、エリイは慌ててソラを抱きしめる、ソラは急のことにびっくりして目をパチクリさせている。

だがソラが戸惑っている間もエリイはずっとソラを抱きしめ続け「ごめんなさい、そういう意味じゃなかったのよ?」と言っている。





そのあと直ぐに和解し、ソラも笑顔に戻る、だがエリイはどうしても、どんな小さな形でもいいからお祝いがしたいというものだからソラは流石にここまで自分のことを思っている人が自己満足で言っているとは思えないと自分の認識の間違いを恥ずかしく思った。

もちろんソラはその申し出を受けた。

長い通路を歩ききり、今は自分の家にもなったエリイの家に着く、家の中に入りエリイはソラに幼稚園のこと、そして友達のことをいろいろきいた、ソラが友達の名前を言うとエリイは一瞬驚いた表情をしたがすぐにもとにもどった。暫く話、エリイは料理の支度をするためにキッチンの奥にいってしまった、ソラはソファに座り静かに本を読んでいる、といっても幼稚園にあるような絵本ではなく魔法の本だ。これはエリイのというよりシスターの集まる教会で見つけエリイがもういらないからとくれた本だった。

ソラにとっては初めてもらった本に情が沸き今じゃ暇な時間はほとんどこの本を読んでいる。

本を読み始め15分くらいたったころ玄関の扉が開く音がする


―――ギィイイイ


「おじゃまする、ソラに友達ができたときいたんだが」

入ってきたのはここ最近会えていなかった騎士のダッグだった。

ソラはダッグの顔を見ると笑顔を浮かべダッグに近づいていく

「こんにちは、ダッグさん、お久しぶりです」

「ふむ、相変わらず子供らしくないな、お前は」

ダッグの苦笑いにソラは微笑を浮かべる

「それでソラの友達というのは?」

それからエリイのときと同じようにアリスのことをダッグにはなすソラ






アリスのことを話し終わりダッグの顔を見てみると目を見開いている、ソラは不思議そうに首をかしげる。

ソラの疑問に答えるようにダッグは目を見開いたまま口を開く。

「……まさか、友達を作れとはいったが、伯爵の友達を作るとは…」


その後は、エリイのつくったご馳走を3人で食べ話に花が咲いたという。



















・・・・・伯爵家・・・・・


アリスの家の中では親子みんなで夜ご飯を食べている

だが何時も通りではなく母のマルティナと父のガルドは驚いたように目を見開いていた。驚いた原因はアリスがご飯を食べ終わった直後のことである

「ごちそうさま!ありがとう!」

アリスはそういいメイド親とご飯を準備したメイドたちに向かってお礼を言う、少し前までのアリスだったら考えられないことだ。

「アリス、ちょっとまちなさい」

「どうしたの?」

そのことが気になりついアリスを呼び止めてしまうマルティナ

マルティナが驚いたようにアリスに質問する

「いったいどうしたの?前まではいただきますすら言わなかったじゃない、どういう風の吹き回しかしら?」

母の言葉にアリスはほほを膨らませいかにも不満ですといわんばかりの顔になる、そしてアリスは自信満々にマルティナに言う

「友達からなにかしてもらったらお礼を言ったほうがいいっていわれたの!」

その言葉にマルティナだけでなく、父のガルドやメイドたちも驚いたように目を見開く、しばらく沈黙が支配していたがガルドが最初に正気の戻りアリスに優しく声をかける。

「はっはっは、そうか、アリスにも友達ができたのか!それはいいことだ!それで、相手はどんなこなんだ?」

これはマルティナも気になることである、友達ができたのはいいが相手がどんな子が気になるのはしょうがないことだろう

「うん!ソラっていう男の子!今日ともだちになったの!!」

うれしそうに言うアリスをみてついついマルティナはアリスをからかうような言葉をいってしまう。

「あらあら、アリスの彼氏さんかしら?」

マルティナのそんな言葉にアリスは顔を真っ赤にさせる、それはもう誰が見てもわかるほどに。

「ち、違うもん!!友達だもん!か、かか、彼氏じゃないもん!!」

「あら、図星?ふふっ可愛いわね~」

慌てる娘の姿を見てマルティナは微笑ましく思いアリスの頭をなでる

するとその会話にガルドも加わる。

「そうか、そうか、アリスもついに友達ができたか…で、いつ落としたんだ?」

「ぶっ」

父のそんな言葉に落ち着いてきたアリスは吹いてしまった

マルティナはその光景を笑いながら見ている

「ち、ちがうもん!ソラが何かしてもらったらお礼を言うと相手も自分もうれしいって教えてくれただけだもん!」

「そいかそうかソラ君というのか、別に恥ずかしがることじゃないぞ?お父さんだって昔は女のこ「昔はなんですか?」……あ」

何かを話そうとしたガルドの言葉にマルティナが中断させる

ガルドは恐る恐る冷え切った声の聞こえたほうへと顔を向ける

そのときのマルティナの顔は笑っていたが何よりも怖かったという

「ちょっとお話をよろしいですか?あなた」

「い、いやこの後ちょっと仕事が……」

ガシッ

「じゃあいきましょうね?ゆっくりお話しましょう?」

―――ズルズル

ガルドはそういわれズルズルと引きずられながら部屋の奥へと消えていった

部屋に残されたアリスにメイドが話しかける、メイドもアリスの変化におどいて、そして気になっているのだろう。

「それで、どんな子なんですか、そのソラという少年は」

メイドのそんな問いかけにアリスは即答する

「へんなやつ!私に文句ばっかり言うし!空ばっかり見てるし!」

いきなりの愚痴のような言葉にメイドは驚く

「……で、でも、いろいろ教えてくれるし、優しい」

恥ずかしそうにモジモジとしながら言うアリスにメイドは微笑みをうかべる

「そうですか、とてもいいお友達ですね?」

「うん!」

元気いっぱいに答えるアリスを見てメイドはもうひとつ質問をする

「それで、本当のところソラ君のこと、好きなんですか?」

メイドの言葉にアリスはトマトのように顔を真っ赤にさせ

「べ、べべ別に、す、好きじゃない…でも、嫌いじゃない…好きってよくわかんない…」

「ふふっそれはそのうちわかりますよ」

「そうなの?私にもわかるかな?」

「ええ、わかると思いますよ?」

メイドの言葉にアリスは心が温かくなるのを感じる、そして自然と今日ソラから教えてもらった言葉を口に出す。

「うん!ありがとう!」

「ふふっどういたしまして」

これが伯爵家のアリスが人が変わったといわれるようになる前日だったという。



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