七話 伯爵家
・・・・・・伯爵家・・・・・・・
大きな部屋の中で小さな少女が駆け回る。
ダッダッダッ
「こら!アリス!!家の中を走っちゃいけません!」
アリスと呼ばれた少女を追って、25歳くらいの金髪の女性が怒鳴り声を上げる、だが少女は返事をせずにそのまま走って行ってしまった。
その光景を見て女性は「ハァ…」と、溜息をつく。
「まったく、誰に似たのかしら……」
すると女性の後ろから同じ年くらいの男性が話しかけながら歩いてくる
「はっはっは、アリスはいつも元気だな!」
「笑い事じゃありません!あのこは我が伯爵家の娘なのですよ!この前も幼稚園で喧嘩をして相手の男の子を泣かしたらしいんです!」
女性の話に男はうなるように声を上げ、悩ましい表情になる。
たしかに伯爵家の娘で礼儀がなってなく周りとのコミュニケーションができないのは問題だ、これからの信頼に関わってくる可能性がある。
「しかしなぁ、ただ怒るだけでは意味がないのではないか?」
「そうなんですよ!あのこったら叱っても謝る気もないみたいではしってっちゃうんです、友達もできてないみたいですし…」
「…どうしたものか…」
アリスはこの伯爵家の一人娘であるがために甘やかされて育ち、そのために我慢や相手のことを考えるということがわかっていないのだ、そのことに関しては親の二人にも責任があるが幼稚園でのことを聞き最近はエスカレートしていってると感じ、さらにいろいろな不安ができてしまう。
アリスの母はそれが心配なのだ、幼稚園の先生の話によると友達もまだできていないのだとか。
「大丈夫かしら……アリス」
女性は心配そうに自分の娘の名前を呼ぶのだった。女性の名前はマルティナ、マルティナ・イリス・ストアシア、伯爵家のガルド・イリス・ストアシアの妻でありアリスの母である。
そして次の日、マルティナは昨日のことを思い出し、心配そうな顔をして娘のアリスを幼稚園に送っている最中である。
(…本当に大丈夫かしら?ここまで頑固に育つなんて)
そして幼稚園の前間で着てとまり幼稚園の先生に話しかける。
「おはようございます、今日も娘をよろしくね?」
マルティナの言葉に先生はすぐに姿勢をただし頭を下げる
「はい、怪我のないよう、最善を尽くします」
その言葉を聞き、マルティナは苦笑いする、ちなみに先生の話し方が変わり、敬語になったのは相手が伯爵だからである。
「別に少し擦りむくくらいならいいのよ?子供なんだし」
先生はブンブンと首を横に振りあせったように口を開く
「い、いえ、そういうわけには」
「まあいいわ、それで今日は何か騒がしいけど何かあったの?」
マルティナの言葉に先生は頷き肯定を意味する
「はい、今日は急ですが転入生がくるんです、年はアリスちゃんと同じくらいです」
その言葉にマルティナは嬉しそうに顔をほころばせる
(…アリスと友達になってくれるかしら?)
「まぁ、それはいい知らせね、アリスと仲良くなってくれるといいけど……あ、もう時間ね、それじゃあよろしくね」
「はい、わかりました、送り迎えお疲れ様です」
先生は腰を九十度にまげマルティナが見えなくなるまで頭を下げていた。
そして時間は戻り現在
「いいけど…僕と友達になってくれない?」
「……ふぇ?」
アリスは驚いたように気の抜けた声を上げてしまう、が、すぐさま顔を赤くしてソラに言う、顔が赤いのは照れてるからなのか怒ってるかの分からない
「な、なんであんたなんかと友達にならなきゃいけないのよ!」
アリスは怒ったようにソラに怒鳴る、だが相手のソラは相変わらずのにこにこ笑顔だ。
「いやね?僕友達がいないんだ、それで君と友達になりたいなって思って」
ソラの言葉にアリスはますます顔を赤くさせる
「だからなんで私なのよ!ほかのこでもいいでしょ!……あ」
アリスは自分で言ってから少し後悔したような表情になる、アリス自身もなかなか頑固で少し横暴な性格をしているがそれはどう対応していいかわからないためでもある、そのためこういう風に好戦的な返事になってしまうのだ
だがソラは気にした様子もなく再びアリスに優しく声をかける。
「別に深い意味はないよ、ただ君も友達がいなさそうだし、多ければいいものでもないらしいし、僕も友達ってどういうものかわかってないしね」
ソラの言葉にアリスは目を見開き、でもすぐに戻り何かを思いついたような顔をしてソラに話しかける。
「そんなこともしらないのね!まぁ私ははくしゃくだからしってるけど!……で、でも、どうしてもっていうなら私が教えてあげるわ!友達がどういうものなのか!」
「そっか、じゃあよろしくね?僕はソラっていうんだ」
「うん!私アリス!」
ソラは右手を出し握手を求める、アリスはそれに答え、というより流れで右手を出しソラの握手に答える。
「ありがとう」
ソラのそんな呟きにアリスは不思議そうに首をかしげる
「どうしてありがとうっていうの?」
するとソラは優しく微笑みながらアリスに説明する
「それはね、人に何かをしてもらったらお礼を言うんだよ」
「おれい?」
「うん、ありがとうとか、どういたしましてとか、そういうと相手もうれしいし自分もうれしいんだよ」
アリスはそう聞き笑顔になる
「わかった!…えっと…あ、ありがとう?」
少し照れながら、顔を赤くしながら言うアリスを見てソラは笑ってしまう
「ふふふっ」
「な、なんで笑うの!」
「いや、うれしいよ、こちらこそありがとう」
「う、うん、わかればいいのよ!」
自信満々にいうアリスを見てソラはまた少し笑顔になるのだった。
するとソラが急に立ち、その場を離れようとする、アリスは急な行動に驚き反応が遅れたが直ぐにソラの袖をつかむ。
「どうしたの?」
ソラの不思議そうな言葉にアリスは怒ったようにソラに言う
「だ、だっていま、友達になったじゃない!」
アリスの言葉を聞き、ソラは不思議そうに首をかしげる
「でもアリス、最初に『そこどいて!』っていってたからどいたんだけど?」
「うっ…」
ソラのもっともな指摘に答えることができないアリスである。
アリスも最初はどいてほしいと思っていたがソラと友達になることになり始めての友達ということもあり、嬉しかったのだがなった瞬間に離れようとしたソラを見てつい自分のいった言葉を忘れ呼び止めてしまった。
「そ、そうよ!友達なんだから半分こするのよ!」バンバンッ
アリスが拗ねたような顔を隠しながら右手を自分の右側の床に叩き付けている。はんぶんやけくそが混じってるようにも見える。
ソラは困ったように顔をかきながら
「えっと…座っていいの?」
「い、いいのよ!早く座りなさい!」
ソラは冷静な思考を保っているので問題はないのだが、アリスは始めての友達ということで、頭は沸騰し、思考は停止し、オーバーヒート状態だった。
「うん、わかったよ、じゃあ遠慮なく」
そういいソラはアリスの隣に座る、そしてアリスはここに座り読む予定だった本を読み始める、ただ時折、ソラのほうを見ながら、ちなみにアリスはしっかりとした教育を受けているので本はすでに読めるのだ。
ソラはというとやはりいつも通り空を見ている。
20分程たち、アリスは読んでいた本を読みきってしまった、もともと読むといっても幼稚園で読むような薄い絵本なので読み終わるのも無理はない
ソラはというと相変わらずずっと空を見ている。
アリスは不思議に思いソラに尋ねる。
「……どうしてずっと空を見てるのよ?」
アリスのそんな言葉にソラは空から目を離さずに答える
「…僕はね、空が好きなんだよ、自由の象徴、僕の理想」
幼稚園児らしくない単語を並べアリスに説明するソラ
アリスは頭を抱え、すねたように唇を尖らせソラに講義する
「…むずかしい言葉いわれてもわかんないもん」
そんなアリスにソラは微笑ましく思い自然と笑みがこぼれる。
「ごめんね?難しい言葉をつかって」
ソラは微笑みながらアリスの頭をなでる
アリスはさらにむくれ、ソラに講義する
「むぅ~!私子供じゃないもん!ちゃんと字、よめるもん!」
「そうだね、子供じゃないね」
そういながらもアリスの頭をなで続けるソラ
「むぅ~!!!!」
ハリセンボンのようにむくれてしまったアリス、それを見て急いで腕を引っ込めるソラ
「ごめんね?そんなつもりじゃなかったんだ」
ソラの申し訳なさそうな言葉にアリスはハッとなる
「べ、べつに……『キーンコーン』…あ、帰る時間だ」
「うん、じゃあ、また明日ね?」
ソラのそんな言葉に
また明日も会える
また明日も友達に会える
そう思いアリスは
「うん!また明日!ソラ!」
最高の笑顔で答えるのだった。