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7番の少年は底辺から成り上がる!  作者: ライト・ユーテ
キルノア編
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四話 騎士本部

ダッグの家の玄関でダッグとソラが騎士本部へ行く支度を済まし、エリイを待っている。ソラは相変わらずの無表情だがダッグはなにやら疲れた顔をしている、ソラはそれを見て心配そうに言葉をかける。

「大丈夫?ダッグさん」

ソラの声にダッグは反応し、苦笑いでソラを見る

「お前はよく平気だな、かれこれエリイを待って20分だぞ?時間の予定は今日という事だから問題はないが流石に時間がかかりすぎだろう、何をそんなに準備する必要があるのだ?」

ダッグは心底疲れたようにソラに愚痴をこぼす、しかしその言葉に反応したのはソラではなかった

「ダッグさんにはわかりません!!女性にはそれなりに準備というものがあるんです!!」

自分の悪口とも言える言葉を聞きダッグに言い返すエリイだった、だがダッグの目にはエリイが先ほどと何が変わったのかよくわからなかった。

「はぁ、何をしたかは、分からんがほとんど変わってないではないか」

「む!そもそもなんでソラの服装がそのままなんですか!」

そう、ダッグは騎士の防具を着てエリイはシスターの服を着ているがソラは最初から変わらない白い布である。

「仕方がないだろう、そのままの格好で来るように言われているのだ、大体なぜエリイが来るのだ?呼ばれているのはソラと俺だけだぞ?」

するとエリイはいかにも心外ですと言わんばかりの表情をし

「私はソラの姉です!めちゃくちゃ関係者です!!」

あまりの暴論にダッグは「はぁ」と溜息をつき、そこで何かに気づいたようにエリイの方を向く。

「ん?保護者なのだから母親ではないのか?」

そう、ソラの保護者になるのなら母親というのが道理ではないのかとダッグは聞いているのだ、一方ソラは何もいわずに少し化粧の濃くなったエリイを見て、「まだかな」という顔をしている積もりだが顔が無表情のため何も伝わらない。

「私はまだ20歳です、なので姉です」

(私は弟がずっと欲しかったなんていえません…)

するとダッグは何かに気づいたようにニヤッと顔を変え、エリイに言う。

「お前、ソラを助けたいのは本当だろうが、弟がほしいんだろ?前に同僚から聞いたぞ、エリイが弟を欲しがってると」

そう、エリイの家は一人っ子でずっと兄妹というものに憧れていたのだ。

それをよく友達や人に話しているせいでまさかダッグの耳にまで入っているとは思わなかった。

「……さあソラ、いきますよ」

「え?あ、うん」

何も聞かなかったかのようにソラの手を引き、騎士本部へと向かうエリイとソラ、それを見てダッグもすぐに追いかける。

「…図星か」

ダッグは思わず呟くが、その後の言葉はエリイの睨みによって続けられることはなかった。












「…すごい」

ソラは思わず息を呑む、ソラの目の前に見えているのは騎士本部、つまりキルノア王国の城の前である。ソラは今まで生きてきた中でここまで大きな建物を見たことがなかったのでソラにしては珍しく、目を見開き唖然としている。ダッグやエリイはそんなソラをみてソラにも子供らしいところがあると分かり、微笑んでいる。

「すごいだろう?俺達は今からここに入るんだぞ?」

ダッグがソラに笑いながら声をかける。するとエリイもそれに続くように声をかける。

「ソラ、大丈夫ですか?緊張してませんか?」

「うん、大丈夫、ありがとうエリイさん」

ソラの言葉を聞き、エリイは嬉しそうな顔をするが、直ぐに悲しそうな顔をする、そんなエリイを見てソラは自分が何か言ってはいけない事を言ったのだろうか、と心配になりエリイに顔を向ける。

「……ごめんなさい」

急に謝ったソラを見て今度はソラが悲しそうな顔をする

「ち、違うんです!ソラは悪くありません!…ただ、その、お姉ちゃんと言われなかったのが……」

そんなことを言うエリイを見てダッグは呆れた表情をする

ソラはなぜエリイが悲しそうな顔をしたのか理解し、そして上目使いで遠慮がちにエリイを呼ぶ。

「えっと…エリイお姉ちゃん?」

「……はい!!」

ソラの言葉を聞きエリイは先程までの顔が嘘の様に顔を眩しいほどの笑顔に変える、保護者のはずのエリイが対象である少年に気を使われているのを見てダッグは思わず思ったことを口にする。

「やれやれ、これではどっちが保護者かわからんぞ」

その言葉にエリイは縮こまった。



門をくぐり、中に入るとそこは驚くほどに広かった。

中に入りまず目にするのは横の幅が20mはあり、床から天井までの高さが30mは在るのではないかと思う通路だった。

右を見れば何やら高そうな絵が飾られており、左を見れば高そうな壺が置かれて、上を見ればシャンデリアのような大きなガラスでできた明かりがある。ダッグは騎士の事情で時折城の中に入っているので驚きはしなかったがなかなか城の中に入ることのないエリイと初めて見るソラは驚きで声を出せなかった。

「すごく…綺麗」

エリイの呟きにソラは同意するように何度もうなずく、そんな二人を見てダッグは苦笑いしながら二人に声をかける。

「感動しているところ悪いが、今日は騎士団長にようがあるのだ、早く行きたいのだが?」

ダッグの言葉を聞き二人は正気に戻り、騎士の集まる騎士本部に行く為にダッグの後ろを付いて行く。



しばらく歩き、他の部屋とは少し違う作りのドアを見つけた

「あれが本部なの?」

ソラが気になりダッグに質問する、ソラがそう思うのも無理はない、ソラが指を刺した扉はほかの部屋とは違い鉄の部分が多く、さらに扉の真ん中に剣のマークが付いていたからだ。

「ああ、そうだ、では入るぞ」

ダッグは肯定の意味で首を縦に振り、二人に一度視線を送り中に入ることを告げる、二人はそれに頷きダッグの後ろに並ぶ。


――――ギイィイイ


扉を開けるとそこはソラの創造と少し違っていたのか目をパチパチとさせている、そんなソラを見てダッグは笑う

「はははっもっと汚いと思っていたか?想像が外れて残念だが騎士本部は騎士の本部であり、国の戦力の中心だ、汚くては王様に顔向けができない」

なるほどとソラは頷く、確かに国の戦力であり、象徴とも言える騎士団の部屋が汚くては国の恥だろう。だからこそ剣や防具などの物は全て綺麗に手入れがされており、きちんと整頓されている。

「意外にきれいでびっくりです」

度ストレートに気持ちを言うエリイにもソラを見習ってもらいたいと思うダッグである。


「よし、じゃあ行くぞ、しっかりついて来るのだぞ?」

ダッグは騎士団長に会う為に置くに進む、中は本部だけあって広く部屋も数え切れないほどにある、周りでは笑いながら雑談をしている者や休憩時間なのか酒を飲んでいる者、そして本部に入ってきた3人を見ている人もいた。

中には入ってきたダッグに声をかけてくるものもいる、が、ダッグは軽く事情を説明し、今は話せないことを伝える。

「悪いが、今日は仕事できたのだ、また今度な」

「ちぇ、つれねえな、まあ仕事ならしょうがないな……しっかしな~綺麗なシスターさんだ」

「ふふっ有難うございます、あなたに神の祝福があらんことを」

「おーシスターに言葉もらっちまったぜ俺!今日はラッキーだな!」

などといい上機嫌で元の場所に帰っていく。

エリイは笑顔を絶やさず周りに手を振り微笑んでいる、元々金髪でスタイルもいいエリイなのでこういう事には慣れているのだろう。

だが世の中は甘くなく、エリイの遠まわしの拒否では諦めないやからもいる

斜め前から先程まで酒を飲んでいた金髪の男が近づいてくる。

その男の目はまっすぐとエリイを見ている、いや、エリイの胸を見ている。

男はニヤニヤしながらエリイに近づき、話しかける。

「よお、シスターこんな所にいないで俺と遊ばねえか?」

どうやら金髪の騎士は酒のせいで少しよっているようである、だがいくら酔っていても仕事があると断ったすぐに遊びに誘うのはどうだろうと思うソラである。

「すみませんが私は今日用事がありここに来ましたので」

エリイは笑顔を絶やさずにこやかに拒否する、だが男は諦めていないようだ

「そんなこといわずにさぁ、終わってからでいいからさ?なぁ」

少ししつこい男にダッグが中に入って金髪の騎士に少し強めで声をかける

「先ほどもいったが俺たちは用があってここに来たのだ、それにシスターは忙しい、あきらめろ」

その言葉に金髪の騎士は腹が立ったのか顔を赤くしダッグに反抗する

「あぁあ!?てめえこの前試合で俺に勝ったからって調子にのってんじゃねえぞ!?俺はなぁ、あの時少し調子が悪かったんだよ!」

どうやら訓練のときに試合に負けたらしい

すると男はダッグに歯向かっても無駄だと判断したのか怒りの矛先をダッグではなく近くにいたソラに向ける。

「あ?誰だよここに薄汚い餓鬼を連れてきたのは、おい餓鬼、ここはお前みたいな汚いやつが来て良い場所じゃないんだよ!さっさと家に帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな!ガハハハ!!」

ソラに明らかな挑発をする騎士にエリイは怒りを覚え、笑顔だった顔は鬼のような恐ろしい顔に変わっているが興奮している騎士は気づかない。

だがソラは無表情で何もいわない、ずっとただ騎士を見ているだけだ

そんなソラが気に食わないのか金髪の騎士はソラを怒鳴る。

「あぁ!?なんだよその目はよぉ!?誰のおかげで守ってもらってると思ってんだ!!ああ!?」

ソラは視線を金髪の騎士からダッグに返る、するとダッグは申し訳なさそうにソラに謝る。

「すまないソラ…騎士の中にはまれにこんなやつがいるのだ」

そしてソラは再び金髪の騎士を見る、そして聞こえるようにゆっくりと言葉を発する。

「僕…あなたに守られたことないですよ?」

ソラの言葉が気に障ったのか金髪の騎士はさらにソラを怒鳴る

「俺はなあ!町の外に出たりして魔物を狩ってるんだよ!俺がいなかったらお前はママのおっぱいも飲めねえんだよ!」

なおも挑発の言葉をいう騎士だがソラは気にも留めずに疑問を問いかける。

「僕、ママなんていないですよ?僕、ずっと一人で生きてきました、おじさんなんて知らないです」

男は知らない、ソラが奴隷で生きてきたことを、男は知らない、ソラが自分の身を守るために魔物を倒し、指示されれば人も殺したことがあることを

何も知らない男は完全におちょくられてると感じたらしい。

その言葉に切れたのか金髪の男がソラに向かって叫ぶ

「この糞餓鬼がぁぁああ!!」

男が腰から剣を抜こうとする、その瞬間さっきまで怖い顔だったエリイも慌てソラを守ろうと動こうとするが間に合わない、ダッグも反応が送れ剣を受け止める手立てがない、これはまずいと思った瞬間



―――――ガキィイイイン!!


剣をはじく音が聞こえる、エリイは恐る恐るつむってしまった目を開けソラのいる方向を見る、そして目の前の光景に目を見開いた。

目の前には金髪の騎士の男の喉にナイフを突きつけているソラの姿が、そしてソラのナイフを剣で受けてとめている四十代くらいの男の姿だった。


ダッグはその光景に思わず口を開く

「……団長」


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